第百十九話
少しして。
さきほどの五人が正門に戻ってきた。
「華瑞樹班長、朧月。もう一度行ってくるから扉を開けてくれ」
紅蓮が言った。
「うん、頑張ってね。紅蓮ちゃん」
そう言って扉を開ける華瑞樹班長。
「頼むから普通に紅蓮って呼んでくれ。いちいちムカつく」
「だって今更変えるのもおかしくない?」
「別に変じゃねぇから、さっさと変えろ」
「わかったわ。……紅蓮ちゃん!」
「変わってねぇ!」
普段弄ぶ側の紅蓮がいじられているのは、やはり違和感がある。
いいぞ。
もっとやれ!
「ふふっ、冗談よ。明日から紅蓮って呼ぶからとりあえず今日は紅蓮ちゃんでいいでしょ?」
「いっつもそればっかりじゃねぇか!」
「おい紅蓮ちゃん! いつまで喋ってんだ。早くしねぇと朝霧班長に叱られるぞ?」
男性の一人がにやけ顔で言った。
「うるせぇ! てめぇも呼んでんじゃねぇよ」
そう返答しつつ、紅蓮は外へと向かう。
行っちゃったな。
嵐のように去っていった。
華瑞樹班長が扉を閉める。
はぁ……。
また暇な時間が始まるのか。
「はぁ~。また暇になっちゃったね」
どうやら彼女も同じ心境らしい。
「そうですね」
「…………数字ゲームでもしよっか」
「えっ?」
突然だな。
「最初に30とか40とか、大きな数字を決めておいて、その数字を言ったら負けなの。ルールは知ってる?」
「あ、はい。百年前と同じルールなのであれば、二人交互に数字を言って、一ターンに数字を1から3まで言えるやつですよね?」
「そうそう! それ。……こう見えても私ね、めちゃくちゃ強くて負け知らずなの」
昔クラスメイトがやっていたような気がする。
俺は未経験だけど。
どうせ暇だし。
やってみようかな。
「やりましょう!」
「おっ、いいねぇ。……じゃあもし私に勝てたらなんでもひとつ言うことを聞いてあげるよ」
えっ、マジで?
そんなこと言って大丈夫か?
「そんなに自信があるんですか?」
「もちろんよ。だって誰にも負けたことないんだから」
ほう。
そこまで言うなら、勝ってやろう。
そして、あんなお願いやこんなお願いを……。
ぐへへへっ。
おっと、心の声が漏れてしまった。
つい先ほどの声はフィクションであり、現実の俺とは何の関係もございません。
これでよし。




