第百十五話
正門前。
「下関さん。交代の時間ですよ」
華瑞樹班長が門番のおじさんにそう伝えた。
すると下関さんはニヤついて答える。
「おぉ、華瑞樹ちゃん! 俺ならまだまだ元気だから、一緒に門番するかい?」
「遠慮しておきます。というか、新人に仕事を教えないといけないので、もう休んでください」
「新人? ……あぁ、お風呂で一緒に話をした君か!」
あっ……。
そういえば初日にお風呂で絡まれたな。
変態なイメージしかねぇ。
「はい、そうです」
「はぁ~、いいなぁ~。俺も華瑞樹ちゃんと一緒にラブラブで門番やりたいなぁ~」
「絶対に嫌です。変態おじさんはさっさと朝ごはんを食べて寝てください」
「えぇ~」
「あまりしつこいと奥さんに言いますよ?」
「げっ。そ、それじゃあそろそろ帰ろうかな。なんだか眠たくなってきちゃったような気がしなくもないし」
そう言いながら建物へと向かう下関さん。
華瑞樹班長はため息をつく。
「はぁ、ほんとあの人はもう五十が近いっていうのに、相変わらず女好きなんだから。もう少し大人しくなってほしいものね」
「そうですね」
「よし、切り替えよっと」
華瑞樹班長は自身の頬を軽く叩いた。
「これから門番の仕事を始めるんだけど……やることがほとんどないから結構暇なのよね」
「そうなんですか?」
「ええ。外から誰かがやってきたらその相手を確認して、正門の鍵を開けるだけだから」
「なるほど……」
それは確かに暇そうだな。
なんとなく鍵を見る。
金属で作られているようだ。
おそらく機械型魔獣の素材を使っているのだろう。
なんか複雑な形をしている。
めちゃくちゃ頑丈そうだ。
「う~ん。門番の一連の流れを教えようにも、誰かが帰ってこないとできないし。どうしよっかな~」
「みんなが帰ってくるのは夕方とかですよね? それまで別の仕事をやるのはだめなんですか?」
そのほうが効率がよさそうな気がする。
「全員が全員夕方に帰ってくるとは限らないから。今朧月くんが言ったやり方だと、もし午前中に誰かが帰ってきた場合、基地のなかに入れなくなるでしょ?」
「あっ! 確かにそうですね」
「うん。だから門番の人が一日中待機してないといけないの。別の組織の人がいつ訪ねてくるかも分からないしね」
それはそうだな。
納得した。
「ちなみにこの門番という役割は交代勤務になっていて、三交代制になっているの。さっきの下関さんが昨日の夜中からやっていた感じね」
「へぇ」
そういえば昨日の昼間は天心さんだったっけ。
いろんな人がやっているんだな。
「何か質問したいこととかない? 暇だし、わかる範囲でならいくらでも答えてあげるけど」
質問か。
そうだな。
…………やばい、思いつかない。
「今のところはなさそうですね」
「そっか。まあ時間はたっぷりあるから思いついたら聞いてね。……なんなら私についての質問でもいいけど」
マジですか。




