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第十二話

 目を閉じると、再び狼の遠吠えが聞こえてきた。

 無視。

 むしと言えば、この木にも虫が住んでいるのかな?

 俺が座っているこの枝の裏にもたくさんいたりして。

 

「うわっ、気持ち悪っ」


 想像したらめちゃくちゃ鳥肌たった。

 マジでもうやめようよ。

 寝れないって。

 (むし)がいたとしても無視(むし)

 ()しパンがあったらありがたく頂く。

 

「何か良いことでも考えるか」


 俺が一番好きな物。

 お金……いや、この森では何の役にも立たない。

 他になにか。


 歌。

 歌っていたら狼が寄ってきそうだ。

 他。

 

「……鈴」


 ふいに頭のなかに幼馴染の顔が浮かんできた。

 好きだった女の子。

 かわいくて優しかった。

 まだ告白していなかったけど、近々思いを伝える予定だった。

 

「会いたいなぁ」


 鈴の微笑んでいる顔を思い浮かべた瞬間、泣きそうになった。

 鼻から息を吸ってなんとか堪える。


「なんで俺はこんな所にいるんだよ」


 誰か教えてくれよ。

 ここはどこなんだよ。

 鈴に……会わせてくれよ。

 

 心細くて、寂しい。

 この世界にくる前、鈴と俺はどんな会話をしていたのだろう。

 なぜその記憶がないのか。


 なんとなくだが。

 その時話していた内容が、この世界にいる理由に関係しているような気がする。

 カプセルで目覚める前の一番最後の記憶を思い出そうとすると、鈴が泣いている光景が蘇ってくる。

 話の内容は一切思い出せない。

 どうなってんだよ。

 

 異世界転移とかなら、それらしいイベントがあってもいいんじゃないのか?

 魔法陣とか。

 トラックに轢かれるとか。

 そんなの一切なかったよな?

 だって鈴と一緒に下校してただけだもん。

 

「いや、完全になかったとは言い切れない……か」


 カプセルが故障していたせいなのか、記憶が曖昧だ。

 つまり、仮にトラックに轢かれていたとしても覚えていない。


「むしろ、トラックに轢かれたから記憶が飛んだんじゃないか?」


 可能性としてはあるな。

 

 魔法陣にしてもそうだ。

 転移させられたことによって、頭痛や吐き気が起こって記憶も飛んだ。


 そうすると……なぜカプセルで寝ていたのかという疑問に戻るわけか。

 魔法陣はどうも違うような気がする。

 それを言ったらトラックもだろ。

 

「あれ? じゃあここ異世界じゃなくない?」


 となれば、えーっと。

 一番可能性が高いのは、何らかの理由により選ばれし50人が冷凍保存され、何十年も眠り続けた。

 で、俺だけカプセルの故障により同じタイミングで目覚めなかった。

 頭痛、吐き気、一部の記憶が飛んでいることなど、全ての症状がカプセルの故障によるもの。

 そう考えたら辻褄が合うな。

 

「……いや、魔獣とか見たこともない植物の件が説明できない」


 一種類とかであれば、この数十年に増えたんだろうなぁと納得するけど。

 明らかに新種の植物が多すぎる。

 というかほぼ全部見たことねぇ。

 

 りんごの形と食感なのに味はピオーネの果実とか。

 剣のような形の葉っぱとか。

 ぐるぐる巻きに伸びているきのことか。

 

 異世界と言われた方が納得できる。

 

 じゃあやっぱり異世界なんじゃ……。

 

「あぁ、だめだ」

 

 いくら考えてもどうせ答えは出ない。

 だけど、どうしても考えてしまう。


 無理をしてでも寝よう。

 人里にさえ出ることができればわかるはず。

 ここが地球なのか異世界なのか。

 異世界なのであれば獣人とかがいるだろ。

 耳もふもふしてみてぇ。

 

 猫耳美少……獣人がいなかったとしても、看板の文字とかが違うだろうし。

 異世界の文字ってあれだろ?

 甲骨文字みたいなやつ。

 まあとにかく、それで判断できる。

 

 そして。

 この森から脱出するには体力が必要だ。

 寝ることは重要な回復手段。

 

 というわけでおやすみ!

 

「アオォォォン」

 

 うるせぇ、くそ狼。

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