第百六話
「朝霧班長。どうでしたか?」
そんな旋風班長の声が聞こえてきた。
俺も知りたかったことだ。
ゴクッと息をのむ。
結果は……。
「ははっ。あんな奴余裕だったぜ。無事に討伐できたし、三人ほど傷を負っただけだ」
はぁ、よかった……。
あんな機械蜘蛛を相手にして、死亡者が出なかったのは本当にすごいと思う。
朝霧班長の言い方からして、傷を負った人も重症ではないだろう。
「……やっぱりあなたはすごいですね」
「そんなことねぇよ。こいつら全員がすげぇんだ」
班長という立場でそれを言えるのはすごいな。
尊敬できる。
「おーい朧月。お前特訓してんのか?」
そんな声が聞こえたかと思えば。
紅蓮がこちらに向かってきた。
後ろにはありすさんと大志もいる。
「みんな。大丈夫だったのか?」
見た感じ三人とも怪我は負っていない。
「おう。あんな奴ウチ一人で余裕だったぜ」
「鎬、嘘つくなよ。お前は装甲の硬い部分ばかり撃っていただろ」
大志が言った。
「なんだてめぇ。でたらめ言ってんじゃねぇ! でかい図体をしているくせに、大志なんてそもそも最初ビビッて銃を撃たなかっただろ」
「い、いや。どこが弱点なのかわからなかったし」
「別にわからなくても、むやみに撃てばいいんだよ。仲間にさえ当たらなければ」
「そんなの銃弾の無駄だろ」
「銃弾なんて生産の者にたくさん作らせとけ。そして、どこに当たろうとダメージは蓄積されていくもんだ」
紅蓮はHPみたいな感じの想像をしているのか。
なんとなく理解はできる。
とそこで朝霧班長が近づいてきた。
「おい、東雲と桜花とこの組織内で一番うるせぇ紅蓮。便利班のお前ら三人は一度俺と共に総長のもとまで報告に行くぞ」
「なっ! 誰が組織内で一番うるさいだと? ウチは世界一お淑やかな淑女だという話で有名──」
「──狩り班全員に告げる。お前らは機械蜘蛛の戦利品を建物内に運んだ後、そのまま正門を出て西付近で狩りを始めてくれ。俺はこいつらと総長に報告へ行ってくる。怪我をした三人は食堂に行って治療してもらえ」
「「「わかりました」」」
「「「了解です」」」
そんな返答と共に、全員が動き出す。
「朝霧班長。お前ウチの言葉を遮りやがって」
「ほんといつもうるせぇ奴だな。今の話の通り、お前たち三人は俺についてこい」
「わかりました」
「……」
大志が答え、ありすさんが頷いた。
「誰がうるさいだと! こう見えてもウチはやろうと思えば世界一静かにできる──」
「──おう朧月、訓練してるじゃねぇか。旋風に教えてもらっていたのか?」
紅蓮の言葉を遮って聞いてきた。
「あ、はい。そうです」
「そうかそうか。強くなれるように頑張れよ」
「おい! 何回ウチの言葉を遮る気だよ! なめてん──」
「──朝霧班長。新人のそぼろ丸くんはすごい才能がありますよ。俺に模擬戦で勝ちましたし、今日狼を一撃で仕留めました」
旋風班長が言った。
「マジか、そりゃすげぇな。おい朧月! 今から俺と戦ってみるか?」




