第百五話
「いや、朧丸くん。……なんで一発で成功すんの?」
近づいてきながら、旋風班長が言った。
「全てにおいて効率よく体を動かしたら、同じように成功しましたね……。あと俺は朧月です」
「君、マジですごくないか? 普通初見で効率よく動かないだろ。……本当にすさまじい才能だと思う。今の一連の流れについて特に言うことはないよ」
べた褒めされているな。
悪い気はしない。
「ありがとうございます」
刀を鞘にしまう。
「さて、目標も達成したし。帰ろうか」
「はい」
基地の敷地内に戻った俺は、旋風班長の指導のもと訓練に励んだ。
腕立て伏せや腹筋などの基礎的なものや、木刀を使った模擬戦など。
外に時計がないため、正確な時間はわからないけど。
今は太陽の位置からして14:00くらいだろう。
現在素振りをしているところだ。
シンプルだけど、案外楽しい。
ちょっとずつ成長できているし。
最適な力のこめかたとか。
必要のない無駄な力とか。
何度も同じことを繰り返していると、そう言ったものが見えてくる。
そんな細かいことを修正していく作業は、非常に意味があるというか。
有意義だ。
「……ん?」
なんか正門の方が騒がしくなってきたな。
「どうやら機械蜘蛛の討伐隊が戻ってきたみたいだね」
えっ。
あ、でもそんな時間か。
「全員無事だと良いんですけど……」
「きっと大丈夫だよ。泡沫組はそんなにやわじゃない」
素振りを止め、門の方を見つめる。
朝霧班長のすごさを聞いたし、大丈夫だとは思うけど。
正直不安な気持ちの方が強い。
機械蜘蛛を一度見たからわかる。
あいつは生半可な戦闘力では勝てない。
正直人類が立ち向かえる想像ができない。
紅蓮やありすさん、大志のことが心配だ。
特にありすさん。
彼女は俺や紅蓮なんかよりもよっぽど動きが素早いが。
一度でもあんな恐ろしい奴から攻撃を受けた場合……。
うわぁ。
そんなの想像したくない。
「はぁ……」
あまり変なことを考えるのは止めよう。
本当にそうなっていたら嫌だ。
外から続々と組織の人たちが入ってくる。
みんな大量の武器を持っていて、すごい武装だ。
今のところ負傷者はいなさそう。
全員わけのわからない機械のような物体を持っている。
おそらく機械蜘蛛の体の一部だろう。
旋風班長はゆっくりと歩き出した。
その先には、俺よりも少し背が低く、凄まじい筋肉の持ち主。
朝霧班長がいる。




