第九十六話
相手が再びジャブを打ってくる。
速いっ。
後ろに下がって躱そうとしたが。
間に合わず、頬を殴られた。
やられっぱなしはムカつく。
パンチを打つとカウンターがきそうだし。
攻め方を変えよう。
くらえっ。
顎を狙ってハイキック。
「おっと」
旋風班長は、少しだけ後ろに下がる。
すれすれで躱された。
この人戦闘がうめぇ。
才能とかの問題じゃなくて。
経験値が圧倒的に上だ。
小刻みにステップを踏みつつ、相手の様子を窺う。
下手に動いても碌なことにならない。
それは今のやり取りで理解できた。
じゃあどうするか。
方法はいくつかある。
予想外のことをするか。
俺自身がレベルアップするか。
どっちもすれば勝てるだろ!
その時。
相手の拳が強く握られた気がした。
ジャブがくる!?
しゃがむ。
頭上を拳が通り過ぎて行った。
よし、いいぞ。
先読みに成功した。
地面を蹴って立ち上がりつつ、パンチを放つ。
狙いはみぞおち。
体を捻って躱された。
「あぶないねぇ……」
俺はすぐ横に移動し、距離を取る。
あの状況から避けるのかよ。
凄まじい反射神経だな。
それとも読みによるものか?
でも、服には掠ったぞ。
惜しかった。
旋風班長はステップを刻みつつ、近づいてくる。
集中しろ。
体の動きをよく見るんだ。
アクションを起こすときは、きっと変化があるはず。
俺なら気づける。
その瞬間。
今まで以上に速いジャブが放たれた。
「っ!?」
反応が遅れた。
何とか両手でガードしたが。
手の甲にものすごいダメージが入った。
後ろに下がり、相手の動きを警戒する。
くそっ。
全然見えなかったぞ。
速すぎるだろ。
動作がほとんど見えなかった。




