第八十七話
「では次の問題だ。この世界に当たり前のようにいる魔獣とは何でしょう」
魔獣とは何でしょう?
何その哲学的な問題。
「……人類の敵、ですか?」
「ボロボロTシャツくん、クイズが上手だね。まさしくその通り。奴らは俺たちの敵だ。ではちょっと問題を変えようか。魔獣はどこから生まれていると思う?」
もう名前の間違いにはツッコまない。
無視しよう。
うん、それがいい。
で次の問題だけど。
今回も簡単だな。
「その魔獣の親からだと思います」
「おっと、間違えちゃったね」
「えっ?」
違うの?
「実は魔獣たちは生殖行為を行わないとされているんだ。狼とかカンガルーとかを見たらわかりづらいかもしれないけど、機械の蜘蛛を例に挙げたらわかりやすいだろ?」
「あ……はい」
確かに。
あいつはそもそも生物だとは思えない。
「君が見たと言う機械蜘蛛や、主にあの滝の上付近に生息している機械のライオンたちには生殖器自体がない。一見ただの動物に見えるかもしれない狼や兎とかも同じく生殖器が存在しないんだよ。……その分あいつらは普通の動物に比べて個々の戦闘力が格段に高く、厄介だ」
なるほど。
「じゃあどうやって魔獣たちは子孫繁栄を?」
「それは単純明快。ヌクレウスから生み出され続けているんだ」
初めての単語だ。
「ヌクレウス?」
「言わば、惑星エリスの核みたいなものだ。俺たちとは別の大組織が一度だけその存在を確認したことがあるみたいなんだけど、そこから無限のように魔獣が生み出されていたらしい」
「マジですか?」
「ああ。で、その核の近くにはめちゃくちゃ強力な魔獣が大量にいて、大組織の部隊も尻尾を巻いて逃げるのに精いっぱいだったってさ。……それ以降誰も手を出さなくなったんだよ」
「そんなにやばい魔獣がいたんですか?」
「俺も話に聞いただけだから詳しくは知らないけど、機械のライオンがミジンコに見えるレベルだってさ」
「えぇー……」
そんな奴に勝てるわけがねぇ。
「それが大量にいるってんだから、まあ並大抵の戦力じゃ太刀打ちできない。だから現在、日本のどの組織も戦力の増加に力を注いでいるってわけ」
「そうだったんですね」
勉強になるな。
「それと、なぜか強力な魔獣たちは惑星エリスに生息していることがほとんどみたいなんだ。詳しい理由は判明していないけど、核を守るためなんじゃないかと言われているな。例えば今回近くのスタジアムに現れた機械蜘蛛なんかがいい例だ。普通巨大な機械型の魔獣は日本へ渡ってこない。狼やカンガルーみたいに比較的弱いやつほど、ヌクレウスから遠くへと移動したがるみたいだ」
「なるほど」
「魔獣については以上になるかな。……何か質問はある?」
質問か。
「えっと、今までの話をまとめると、ヌクレウスとやらを破壊しない限り、魔獣が地球上に蔓延り続けるってことですか?」
「その通り。……今はまだ余裕があるけど、いずれ先に滅びるのは人類の方だろうね」
「そんな……」
「でもそうならないために、いろんな組織がヌクレウスを壊すための兵器を開発中だ。あと何十年後かには決着していると思うよ」
何十年後か。
長いようで短いな。




