第八十四話
あれ……。
今ふと思ったんだけどさ。
成績ってどうやって決めているんだ?
昔の日本と同様、試験でもあるのだろうか。
ちょっと聞いてみよう。
「えっと、大志。その成績の順位ってテストで決めているのか?」
「ああ、そうだな。勉強会と同じで特に時期は決まっていないけど、たまに開催されるんだ。前回は確か…………三か月前くらいにあったぞ」
なるほど。
「へぇ。……それで紅蓮が最下位だったわけか」
「おう。しかも圧倒的な点差でな。他者を誰も寄せ付けないレベルだったぞ」
「お前らあとでおぼえとけよ」
そう言って紅蓮は串焼きに噛みつく。
ボキッ! という音が聞こえた。
怖っ……。
もういじるのはやめておこう。
身の危険を感じる。
で、今の一位って言ったら確実にあの人だよな。
俺と同じ生き残りで、昨日の会議にもいた高校生のリーダー的存在。
その名も、雛鳥紫苑さん。
全国模試で常に一位をキープしていたというとんでもない人。
正真正銘の化け物だ。
勉強をする暇のないこの時代の人では、到底かなわないだろう。
あれ?
今思うと、試験って何の教科をするんだ?
難しい数学とか英語があるとは思えないし。
「ちなみにテストってどんな問題が出るんだ? 全然想像がつかないんだけど」
「主に国語、算数、理科の三科目だな。たまに別の教科が追加されることもあるが、大体その三つだと思ってくれればいい」
大志が教えてくれた。
「なるほど。結構少ないんだな」
「生き残りたちが言ってたけど、百年前はもっとたくさんあったんだって?」
「ああ。九教科くらいあったと思う。正確には覚えていないけど、多分そのくらい」
「すごいな。……俺なんて三教科ですらまともにできないのに」
「まあこんな世界だし。昔と違ってあまり勉強は大事じゃないと思うけど」
どんなに頭が良くても死んだら終わりだ。
「そう言ってくれると助かる。マジで頭を使うのは苦手だ」
そんな気はする。
でも紅蓮が最下位ってことは……。
少なくともそれよりは上ってことだろ。
「そういえば朧月って、勉強が得意なのか? それともバカか?」
紅蓮が聞いてきた。
「全教科100点満点中70点くらいかな? 特に自分からは進んで勉強してないけど、先生の話を聞いていたら大抵それくらいは取れる」
「なんだてめぇ。本当に何でもできるのかよ、腹立つなぁ。ウチなんて大人の話を聞いていても何も理解できねぇぞ? どうなってんだ、コラ」
えっと。
「まあ、勉強するうえで一番大事なのは、頭を柔らかくしておくことだと思うぞ。固定観念というか、思い込みが知識の吸収を邪魔してくるからな」
「なるほど……。じゃあ俺も今度の勉強会でやってみようかな。……でも、どうやって頭なんて柔らかくするんだ?」
大志が首を傾げた。




