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第五十八話

 そうして少しの間ゆっくり食べていると。

 紅蓮とありすさん、大志の三人がやってきた。

 

「朧月。お前ひとりだけ打ち合わせをさぼりやがって。いい身分だな、おい」


 紅蓮が俺の正面に座りながら言った。

 いや、仕方ねぇだろ。

 どこにも配属されてないし。

 

「先に食べてろって総長に言われたんだよ」

「人が打ち合わせしている時に、美味そうに手羽先食いやがって。さっき腹が鳴ったじゃねぇか、コラ」


 こいつ朝から口悪いな。

 よくそんなにエンジンがかかるものだ。

 

「それはごめん」

「ったく。おかげでありすに笑われたぜ。……おい、ありす。鬱陶しいからウチの横じゃなくて朧月の隣に座れよ」

「えっ……」

「ほら、早くしろ」


 ありすさんは紅蓮の横に座りながら口を開く。

 

「鎬が東雲くんの横に座りたいだけ……」

「はぁ!? な、なに言ってんだてめぇ。全然関係ねぇよ! ぶち殺すぞコラ。くそ、ありすのくせに口答えしやがって。……もういい。こっちに居ろ」

「……うん」


 ありすさんに一言で撃退されてやがる。

 攻めに弱すぎだろ。

 

 まあ、正直な話。

 ありすさんには横に座ってもらいたかったけど。

 そんなこと言えるわけがない。

 

「よっと」


 大志は俺の横に座り、早速串焼きを食べ始める。

 また三本同時かよ。

 朝からすごいな。

 彼は咀嚼をしながらこちらを向く。

 

「朧月、昨日はよく眠れたか?」

「ああ。久しぶりに安心してぐっすり眠れたよ」


 全身筋肉痛だけど。

 よく寝たおかげで眠気などはない。

 

「そうか。ならよかった」

「チッ。それにしても今日は会議かよ。じっとしているのは好きじゃねぇんだけどな」


 紅蓮が言った。

 大志は串焼きを食べつつ、

 

「まあそう言うなよ。確かに俺も座り続けるのは苦手だけどさ」

「そうだよな。というわけで大志、ウチと変わってくれよ」

「そういうわけにもいかないだろ。そもそもスタジアムに住み着いた怪物の偵察はお前の任務だし」

「実際の所、ウチらが直接確認したわけじゃねぇし。朧月が見たってだけなんだよな。……だからウチとありすは必要ないと思うぜ」

「確かにな。……けど総長なりに考えがあるんだろ」

「本当か? 適当に命令しているだけじゃねぇの?」

「おおかた会議が終わったあと、朧月の教育を鎬に任せるつもりなんだと思うぞ?」

「あぁ、その可能性はあるな。……はぁ、教えるの面倒くせぇ」


 なんかごめんな。

 俺のせいで。

 

「朧月の前でそんなこと言うなよ。仕事を教えるのも立派な役目なんだから」

「だったら大志がやればいいだろ?」

「総長がいいって言うなら俺がやってもいいけど」

「大志の今日の任務はなんだっけ? あぁ、狩り班に参加して一緒に魔獣を狩ってくるって言われてたな」

「そうだけど?」

「じゃあちょっと今から大志と変わってもいいかどうか総長に聞いてくる。ウチは細かい業務よりも外に出てぇんだよ」


 紅蓮は立ち上がって歩き出した。

 大志はため息を吐く。

 

「はぁ、行っちまったな」

「……そうだな」

「けどまあ朧月は何も気にしなくていいぞ? 鎬が特別わがままで面倒くさがりなだけだし」

「う、うん」

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