脱出
微妙な終わり方ですが、理由があります。後書きに載せます。
「ハァハァ・・・疲れた」
今、逃げてます。何にって?オバケからです!!
なんで、こんなことになったのかというと・・・。
「チラシ?“君は、この恐怖から脱出出来るか!?出来た者には何でも願いを叶えます”・・・・ふ〜ん」
数日前に変なチラシが来た。本来なら捨てれば良いのだろうが、それが出来なかった。
理由は、17歳なのに恋人がいないから。だから、出来たら良いなと安易な考えで参加したんだ。それが全ての始まりだった・・・。
でも現実は、化け物屋鋪に閉じ込められ、背後からは、正体不明の生き物かどうか判断し辛いものが追って来る。
『百六十人が、この化け物屋敷に閉じ込めらてるよぉ!!自分だけ出ても良いし、仲間同士集まっても良いよん!!ただし、出れるならね・・・』
この放送は、着いてから数分後に流れたものだ。楽観的で嫌に人を苦しめる声だった。
初めて聞いた時は、人間らしくない、感情が無い声に鳥肌が立った。
憎しみで一杯の最悪な声だった。
『みんなはバラバラの場所にいるから・・・・・・でも、見つけることは・・・・ふふっ』
最初は、言葉の意味が分からなかった。でも、今は分る。化け物がいるからだ。
「ハァハァ・・・もう無理かも・・・・・・!?」
手を壁に付きながら歩いてると、角になった。角に気付かなかったため、スルッと滑って倒れこんだ。
だけど、不思議なことに痛みは無かった。
「え?」
「・・・大丈夫?」
変声期前の幼い声が私の身体を包む。
冷えてる空間に温かい感触。
「・・・他にもいたんだ」
「あ、うん」
やっと、助けてくれた人の顔を見ることが出来た。
見た目は、細身なのに抱き締めた身体は、意外にも筋肉質だった。
髪は色素の薄い茶色だった。
「ありがとう・・・」
「・・・ん」
妙な静けさが辺りを包む。
どうやら彼は、無口なんだ。
「私は、真綾・・・」
「・・・俺は空陽」
今さらながら、私の紹介をします。
私は、真綾で、容姿はおまかせします。
性格は、のんびりしてると言われます。
そして、この美少年は空陽と言うらしい。
「一緒に出よう?」
「・・・ん。一人はキツい」
良かった。誰かがいてくれると嬉しいから。
「そっちは?」
「・・・何にも無い行き止まり」
そっか・・・じゃあ、もう一つ道があるし・・・ちなみにY路地みたくなってる。
まだ行ってない場所に向かって歩く。
この沈黙が辛くて、話し掛けた。
「空陽くんの願いってなに?」
「・・・ん〜。無い」
私は、大きな声で聞き返してた。
「特に考えず参加・・・」
この美少年が分らなくなって来た。
「真綾さんは?」
「私は・・・い、言えない」
恥ずかしいよ!!恋人探しのために参加なんて!!
「・・・・しっ」
人差し指を口許に当て言った。その姿が似合っていてドキドキした。
「声が・・・する?」
「・・・・二人」
私を庇いながら言う空陽くんに、白馬の王子様を重ねた。
声のする方から、騒がしい声とクールな声がした。
「だれ!?」
私は、味方だと思い声を上げた。
声は静まった。だけど、数秒後に大きな明るい声がした。
「おーい!!味方〜?」
「バカ!敵だったらどうするんです?」
同じくらいの女の子の声と敬語の男の子の声がした。
辺りは暗いが、そんな中でも暗い影から現れたのは、高身長の少年とショートヘアーの少女だった。
「初めまして!!私は、志真!!」
「・・・僕は坂本」
何故か名字の二人に問い掛けても答えてくれなかった。
「私は、真綾」
「・・・俺は空陽」
坂本くんは、眼鏡を掛けて生徒会長っぽかった。でも、裏がありそう。
志真ちゃんは、明るい子で美少女だった。頭が弱そうだけど。
「どこかへ行くの!?」
「私達が来た道と志真ちゃん達が来た道以外ね」
志真ちゃんの質問に答えた。
坂本くんは、何かを考えてる。
「案外、出口は近いかもしれません」
「どうして?」
「考えてみなさい、僕達が来てから時間は経っていない。だけど、ここに入ってからの時間は長い」
坂本くんの言う通りだ。私達は、自分の意思で屋敷の個室に集まった。
でも、その個室には誰もいなかった。ボーッとしてたら、意識を失った。そして、気がついたらココにいた。
あの空白の時間の記憶が無い。
「たぶん、ここにいる皆も同じでしょう」
「また、私の心読んだ!!」
あれ?読心術って・・・。
でも、私のが読まれたんじゃ・・・。
志真ちゃんと同じこと考えてたのかな?
「・・・それより後ろ」
今まで黙ってた空陽くんが言った。
私達は、えっ!?と後ろを見ると、化け物がブリッジしながらこちらに来る。
しかも、速いから恐い。
「いやーーーっ!!」
志真ちゃんの叫び声と同時に走り出した私達。
「・・・あっ」
「空陽くん!!」
足が縺れた(もつれた)ようで、転んだ空陽くん。
化け物は、止まる様子は無く座り込んでる空陽くんに近付く。
「ざけんじゃねーよ!!空陽に近付くな!!」
化け物に近付き、化け物の顔にハイキックを喰らわした。
化け物は、顔を押さえながら座り込む。
その化け物に踵落としをした。
「気絶した・・?」
女の子の声がボソッと聞こえた。
「真綾・・・さん?」
私は、空陽くんを抱き上げて走り出した。
背後から、追って来る二つの足音を確認しながら・・・。
「ハァハァ・・・」
「真綾ちゃんって凄いね」
「火事場の馬鹿力か・・・」
そうです。私は、別に強く無いのに空陽くんが危ないって分ったら、身体が自然に動いてた。
「あの、降ろして?」
未だに抱き上げた(お姫様抱っこ)ままだから、動揺してる空陽くん。
ゴメンと降ろしてあけた。
「でも、あのキモいの二度と復活しないで欲しいですね」
「怖いよ・・・」
「ん?誰がですか?この口が言ったのですか?」
志真ちゃんの口をギュッと握ってる。いひゃい、と泣いてる。
私は、構ったら何かありそうだから止めない。
「・・・真綾」
「なに?・・・・・え」
よ、呼び捨て!?・・・・・・・そういえば私、空陽くんを呼び捨てしてたような。
「・・・呼び捨てで良い」
「うん」
なんか、良い雰囲気で・・・。幸せだなぁって思う。こんな場所でだけど。
「なーにピンクのオーラを出してんの?」
私と空陽は、真っ赤になった。
「あ、あのさ・・・」
私が言った言葉に、ん?と皆は私を見る。
「ここから出ても友達でいてくれる?」
「なーんだそんなこと?」
は?そんなこと!?私は必死で考えてたのに・・・。
「真綾!!」
「もう友達ですよ」
「・・・うん」
・・・・あ。そうなんだ。
うわっ。泣きそう・・・。
「泣かないで真綾・・・」
「志真・・・」
なんだ泣いてたんだ私。
頬が温かいと思ってたけど気付かなかった。
「どれだけ鈍感なんですか」
「心読むな!!」
なんか、もう恥ずかしいよ。
「真綾の心読むなんて許さない!!」
「どう許さないんです?あ゛あ?」
志真の頭を強く握ってる坂本くん。
ギシギシ鳴ってるよ・・・。流石に助けなきゃ。
「って、あれ?空陽は?」
「先に行った?」
私達は、急いで走った。あぁ・・・・置いてかないで!!
すっかり涙は乾いてました。
「空陽?」
「・・・なんか、変」
追い付いたが、空陽は扉の前で止まってる。
「風がありますね。出入り口でしょうか」
坂本くんは言った。微かに風がある。
「ぶつかれ・・・」
「うにゃっ!!」
志真を投げ飛ばした坂本くん。
変な声を出したよ。良いの?
「良いんです。貴女もやりますか?」
っいいえ!!遠慮させて頂きます!!
何度この美少年は心を読めば気が済むんだろう?
「・・・開いたよ」
ボソッと言った空陽の声に、扉を見る私達。
暗闇から光が洩れてるせいか、急に瞳孔が活発になったから痛かった。
そして、慣れた頃に外に出た。
「・・・屋敷の入口?」
私達が始めに来た屋敷の入口にいた。
周りを見ると、離れた所に建物があった。
「うにゃ〜」
「大丈夫?志真」
「真綾は優しいにょ〜」
頭を強く打ってしまったようで、言葉遣いが変わってる。
私は、優しく頭を撫でてあげた。
「なぁ、空陽・・・」
「・・・ん?」
空陽と坂本くんが話をしてるみたいだけど、私達には聞こえなかった。
「僕が、このゲームに参加した理由は・・・」
「・・・志真さんと付き合う?」
「なっ!!なんで分ったんですか?」
顔の様子しか分らないけど、坂本くんは焦ってる様子だった。
「・・・好きな子ほど苛めたいってタイプだよね?」
「あぁ、願いよりも覚悟だったんです。アイツとは幼馴染みで、でも告白なんて出来ないですから・・・」
「・・・じゃあ、一緒にしよ?」
赤い顔で話してる坂本くんに、何かを言ってる空陽。
まさか、この時に話してることがアレだったなんて思わなかった。
「・・・俺、好きな人いるから」
「わ、分った」
話が終わった様子で、こちらに来る二人。
「とりあえず、あの部屋に行ってみましょう」
「そうだね」
みんなで、離れにある小屋に向かった。
「凄いですよ!!オレが作った世界を出るなんて!!」
入った途端に拍手をしながら、高級イスを回して、こちらを見る。
あの放送の声だった。やっぱり鳥肌が立つ。
「なんのつもりでこんなことを!?」
「・・・無駄に生きてる君達に試練を与えたんだよ。褒めてくれても構わないよ」
珍しく、キレてる志真に答えたのは、ふざけた内容だった。
「無駄に?」
「普通さぁ・・・何でも願いを叶えるって言ったからって来ないよね。飢えてる証拠だよ。ツマんない人生に・・・」
正直、答える自信は無かった。
いつも通りの日常に飽きてた自分がいたから・・・。
「言い返せないってことはそうだよね」
ニンマリと笑う男にイライラする私。
「・・・確かに参加した俺達はバカで憐れなのかもしれない」
「でも!!それをアンタに言われる筋合いは無い!!」
空陽の言葉に続けと叫んだ志真。
「狂言者ですね。本当に飢えてるのはアンタなんですよ」
「無駄にお金掛けて、騙して集めて・・・誰かが傷付けばどうする気だったのよ!!」
坂本くんと私の言葉に何も言わない男。
だけど、突然笑い出した。
「なんでガキ達に言われなきゃいけないんだよ・・・了承して来たのはテメーらだろうが」
懐から、取り出したのは銃だった。
偽物には見えず、重そうだった。
「まぁ、テメーらが死ねば終わりだけど・・・」
銃弾の音が二発聞こえた。
でも、やはり痛みは無かった。
「え・・・」
「うそ・・・」
目の前が、赤と白しか見えなかった。
志真も同じ現状だったのか、いつもの元気は無い。
「空陽!!」
私の声と志真が坂本くんの名前を呼ぶ声が重なった。
ドサッと倒れた身体。信じたくない。
右腕を撃たれたのか、ペンキのような血がシャツに染み込んでる。
息は熱く呼吸をするのも辛そうだ。
「ゴメン・・・真綾・・・俺・・・・真綾が・・・・好きだ」
何を言ってるの?こんな時に・・・。
目の前が見えなくなった。目の半分に水が浮かぶ。
涙なんだろうな。さっきと違うほうの。
弱々しく私の頬を触る空陽の手が冷たい。
この時、私の脈拍はドクンと波打った。
私は、この後の出来事は覚えて無かった。
気がついた時には、男は倒れて手錠を掛けられていた。
空陽と坂本くんは、救急車に運ばれていた・・・。
私と志真は、タクシーで病院に向かった。
その時に、失ってた部分の話を聞いた。
志真には、速過ぎて目では追えなかったみたい。ドサッと音がした時には、男はやられてたらしい。
救急車とかを呼んだのは、助かった他の人らしい。
しかも、あの屋敷にいたのは数名だったらしい。
「あの・・・嘘つきめ」
「うん・・・誰も怪我が無くて良かったね」
笑顔で言った志真だったが、目は笑ってなかった。
だって、大事な人が傷付いたんだから・・・。
「あの男ね・・・精神異常者だったんだって・・・自分は神だ・・・この世界を救うのは自分だって・・・」
「そんな言葉で片付けられてもね」
私の言葉に頷いた志真。
失った物は二度とは戻らないんだから。
いつの間にか病院に着いた。
私達は降りて、病室を聞いて行った。
場所は、それぞれ違うみたいだけど、隣りらしい。
私は、ソッと部屋に入った。
色んな機械に縛られてる空陽。
私は、下唇を噛み締め呆然と立ってるしか出来なかった。
「ごめんね・・・守ってもらって・・・・返事・・・こんな時だけど返すよ・・・・・・はぁ・・・・・・空陽・・・私も好きだよ・・・大好き・・・・愛してる」
深呼吸してから告白をした。
聞こえてるかな?私の声・・・。
いつか、デートしようね。
微かに動いた手に、想いを乗せて・・・。
別サイドを創ろうと考えてます。志真や坂本サイドも・・・名前を出すと思います。その後のストーリーも書きます。