第15・5話「黒イ夢」
闇が落ちてくる。
いや、俺が闇に落ちたのか?
「――というのが、彼女の言い分さ」
今度は男の声だった。
低く、落ち着いた声だ。
「でもね」
と、男は続ける。
「際限なく繰り返される破壊と再生に――無限に続く生と死に、意味はあるのだろうか? そこには、『真正な創造』などないよ。苦痛だけだ」
おまえは?
と、俺は問う。
「そうだね。名乗りもせず会話を始めるべきではなかったね。高崎時弥君」
言って、男は闇の中から姿を現す。
男は、体躯のよい20代後半の青年。
黒いスーツに身を纏い、縁の無いメガネをかけている。
――いや、スーツというよりかは喪服か……?
「私の名前は、天理。天理黒夢」
黒夢……。
お前は、何が目的だ。
どうして、俺に?
「君なら、私の考えに賛同してくれると思ったからさ。無限、輪廻、反復……そこに意味などない。そう思ったことはないかい?」
……。
「あるのは、苦しみだけさ。だからね、私は救いたいんだ、彼女を。いいや、ひいてはこの世界を。無限の苦しみから‶解放〟するんだ」
……解放。
「そう、解放。私はね、時弥君。この世界を涅槃へと導きたいんだよ」
何を言っているかさっぱりだ。
他をあたってくれ。
「ははは。いきなり言われても分からないよね。でも、いつか分かってもらえる日が来るといいな」
……。
「じゃあ、またいつか。この世界の無意味性に気が付く日が来るよ」
***
ためしに、元の世界に戻ってみなよ。
そうすれば、この世界に意味がないことに気が付くよ。
そうしたら、もう一度戻っておいで。
一緒に世界を覚醒させよう。
この世界は黒い夢を見ているんだ。
一緒にこの世界を、‶解放〟しよう。




