16.屋敷-#3
最終的に僕は鶏をさばくこともできなかった。
マーは僕に料理を教えることを諦めたようだ。
屋敷に来て5日目。今日から本格的に救出の計画を立ててゆく。
「久しぶり。秀樹!」
そこにいたのはショウだった。
ショウはあの事件から事情聴取ということで預かられていた。
「ねぇ、秀樹様。あなたもお名前を変えてみてはどうですか?前世の名前のままだと、あまり良くないことと思います。」
ジョージがそういった。
「そうか。考えておきます。」
まぁ、前世の名前も大切だけどな。
名前…か。『秀樹』という名前がなくなるのも悲しいけどな。
その時、部屋に誰かが入って来た。ジョージは頭を下げる。
僕も軽く頭を下げる。
「座ってくれ。これからの会議をする。」
僕は近くにあった青い椅子に座った。
「これからトーラマ討伐作戦の計画会議を行う。」
「トーラマ、って?」
「秀樹はまだ知らないか。君が、『あいつ』と呼んでいるやつだよ。」
僕は頷く。あいつは王なのか。
なんの王なのか。
「トーラマは地獄の最高責任者、ではない。その一つ下の位の責任者だ。」
「地獄の最高責任者、トーラスとはもう話をしている。トーラマは暴れて、手が追えない状態だそうだ。」
「秀樹。君が生み出したリサがあいつにさらわれたことはご存知か?」
「はい。夢の中でその、トーラマという奴から聞きました。」
「やはりそうか。人の夢の中に入り込むのも禁止事項なのだがな。相当厄介な奴だ。」
「リサのお父さん、お母さんが天国安全保障強化委員会(SSS)に申し出て、そのSSSが特別に設置したのが、今回行う会だ。」
「メンバーは、私、ジョージ、ショウ、秀樹、そして、なーたんだ。」
「なーたん、って、誰ですか?」
「誰?知らないのかい?君のお助けロボットのようなものだよ。」
なんだそれ。もらっていないぞ。
「失礼しました。屋敷の方から秀樹様へお渡しする予定でございましたが、そのロボットがまだ届かないもので…。」
「ふん。宅配も遅いもんだ。早くせんかい。」
このメンバーで大丈夫だろうか。不安で仕方がない。
「まぁ、自己紹介でもするとしようか。」
そうだな。その方が皆を知れる。
「私の名前はバンサーだ。SSSで働いている。所属は剣士だ。」
バンサーという名前なのか。
次は、ジョージが立った。
「私はジョージと言います。この屋敷の執事でございます。所属は魔術ですが、最近やってないので…」
もう天国じゃないじゃん。ゲームみたいじゃん。
次はショウ。
「ぼ、ぼくはショウと言います。え、えーと…。」
「所属は?」
バンサーが聞く。
「君は剣士じゃなかったのかい。」
「は、はい。そうです。」
ショウはモジモジという。
最後は僕だ。
「僕は秀樹と言います。所属は…。」
やっぱりわからない。
まだこっちに来てからすぐだし、そんなのわからないに決まってる。
「君はまだないんだったな。」
そうなのか。まだ僕はないんだ。
ショウは俺の願いで剣士として生まれて来たが、俺はなんのために生まれたか…。
僕は机の上にあった水を手に取り、ゴクゴクと飲んだ。




