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運も実力のうち  作者: 鳴神
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第8話 エルマール商会

 ギルドプレートを受け取りウルクに連れられて知人の商会に向かう。

 ギルドを出てドワーフ領に近い北門に向かって歩いていくとギルドと北門の中間くらいの位置に大きな商会でウルクは足を止めた。

「ここが俺の知り合いが経営しているエルマール商会だ。グラムでは結構大きな商会だから素材を買い取ってくれるし、商品も良いものを揃えてる。紹介するから付いてきてくれ。」

 

「いらっしゃい。おぉ、ウルクさんかい。今日はどういった用件で?」

 店の中に入って店内を見渡すと広く、商品も武器に防具、食品、薬、衣服、道具本や宝石など多くの種類の商品を扱っている。

 その中で受付にいるウルクと同年代に見える男がウルクに声をかけた。

「おう、今日はバラムに紹介したい冒険者がいてな、連れてきたんだ。」

「ウルクさんが紹介したいって随分と期待出来る冒険者を見付けたんですな。それでその冒険者はどちらに?」

 バラムと呼ばれた商人がウルクの周りを見て首を傾げてウルクの後ろに控えたクロエと目を合わせる。

「ウルクさん、もしかしてこの嬢ちゃんですかい?」

 俄には信じられないと言った表情でウルクに問いかける。

「そうだ。この嬢ちゃんが俺の紹介したい冒険者だ。名前はクロエ、9歳のハーフエルフで4日前に冒険者登録したばっかりのEランク冒険者だ。」

「ハーフエルフとは珍しいがそれ以前に4日前に登録したばかりって新人の新人じゃないですかい。いやでもさっきEランク冒険者って言ってましたな。実力は確かと言うことですかい?」

「オーク8体を1振りで倒すくらいにはな。」

「魔法ですかい。」

 バラムはオークを倒した方法を考えて一言添える。

「正確には武器に付与魔法を掛けて1振りだな。嬢ちゃんは魔法学校の試験を受けにグラムに来たんだとよ。」

「魔法学校の試験を受けるのかい?うちの娘と一緒だな。年は3つ上だがな。勉強も頑張っていたし魔法の扱いも上手いもんで親の贔屓目なしでも才能があると思うんですよ。」

「それじゃあこの商会も将来安泰か?」

「それは息子に任せるつもりなんで娘には自分のやりたいことやらせるつもりですよ。」

「そうか。ところで嬢ちゃんは用があって来たんだ。用件を聞いてやってくれ。」

「そうだったのか。それで嬢ちゃん、どんな用だ?」

 ウルクとバラムの世間話が終わりクロエの話に移った。

「素材を売りたいんです。討伐依頼の時についでに狩った魔物の他にグラムに着くまでに狩った魔物の素材をお願いします。」

「はいよ。それにしちゃあ荷物がないようだが?」

「……」

「マジックバックがあるんだよ。」

 クロエが正直に言うか迷っているとウルクが口添えしてくれた。

「そうか。それじゃあ店の裏の倉庫まで付いてきてくれ。」

 バラムに付いていきウルクとクロエは倉庫に向かう。


「それじゃあ解体するものもあるだろうから、ここの台に乗せていってくれ。素材は売ると言う話だったが肉はどうするんだ?」

「食材は持ち帰ります。ウルクさん。」

 ウルクを見ると頷き空間魔法についてばらしても大丈夫との指示があったので倉庫に入ってバラムの指示通りに素材を乗せていく。

 解体してある物から1つ、2つ、3つと置き20個目を置いた時「ちょっと待ってくれ!」とバラムから声が掛かった。

「お嬢ちゃんは空間魔法が使えるんだな。」

「はい、でも内密にお願いします。」

「分かった。だが、すまないが俺1人では捌ききれないから人を呼んでくる!」

 そう言ってバラムは倉庫を後にする。

「今日中に捌ききれない場合は後日取りに行けばいいんですか?」

「まぁ、中々あることではないがな。」

 少しするとバラムが青年と少女を連れて戻ってきた。


「これはすごい量ですね、父さん。すぐに作業を……おや、また会いましたねお嬢さん。と言うことは今日のお客さんはお嬢さんなのかな?」

 青年は倉庫に入って素材の多さにすぐに作業をしようとしたがクロエと目が合うと誰なのか思い出したように言葉をかける。

 クロエも青年の姿を思い出していた。クロエがグラムに来るに辺り馬車に乗せていってくれた商人のフレンだった。

「はい、4日振りですねフレンさん。その節はお世話になりました。今日も協力していただけるようでありがとうございます。」

「いえいえ、こちらも商売ですのでお気になさらず。では早速作業を始めさせていただきます。シルヴィアは解体されてる物の鑑定の方を私と父さんで解体をします。」

「全て血抜きはしてありますが量が量なので解体の手伝いをさせていただきます。」

「自分で買って出るって事は解体もできるだな嬢ちゃん。」

「父上に教わりましたので大丈夫です。」

 バラムやフレンと一緒にすぐに作業を始める。爪や牙、皮に肉と解体していき最後に骨が残る。

 少女の方を盗み見ると解体された素材の状態を素早く確認して端からまとめていってる。


「嬢ちゃんのナイフは随分と良い切れ味をしているな。何処で売ってたんだ?」

「これは自分で作った物なので売ってないです。」

「嬢ちゃんは多才だな。」

「まだ足りません。マジックアイテムは殆ど作れませんから。」

 マジックアイテムとは魔力が付与された道具で様々な効果を発揮する。マジックバックや魔導石もその一つだ。魔力を込めると水が出てくるコップや光が灯るランプ、身に付けるだけで力が強くなる腕輪等のアイテムや武器にすれば燃える剣や重さを感じない武器、刀身が伸びる剣がある。防具であれば防寒、防暑が備わった服や魔法に対する耐性がある鎧等幾つもある。


「そうか。嬢ちゃんの目標は随分高いんだな。」

「私の夢は魔法を研究して自分の為の最高の武器、防具を作りあげ最強の魔法使いになることですから。」

「じゃあ嬢ちゃんは今年の魔法学校の入学試験で躓く訳にはいかなんだな。実技の方は大丈夫そうだが勉強の方は大丈夫か?」

「問題ありません。勉強も魔法も武術も3歳からしていた事ですから。」

「シルヴィアも魔法に自信があるなら高ランク冒険者じゃなくて王宮魔道士になるくらいの目標を持っても良いと思うんだがな。」

「私は王国に仕えるつもりはないですし高ランク冒険者なら国のしがらみなく自由に動けますし下手な王宮魔道士よりお金が稼げるから店の経営も支えられます。」

「店の事は気にしなくて良いものを。」

 素早く解体しながらそんな会話をしていた。数が減ってきたので異空間から残りの物を出してクロエも作業に戻る。


「それよりもその子本当に入学試験を受けるんですか?私よりも小さいようですけど?」

「9歳だからな。でもEランクの冒険者だしウルクさんのお墨付きでもある。」

「私より3つも年下でウルクさんのお墨付きですか!?どれ程の実力なのか気になります。」

「俺との模擬戦でも2振りしかしてないが少なく見積もってもCランク以上はあると思うぞ。」

「ウルクさんがそこまで言う子ですか。」

「難なら解体が終わった後にでも試してみればいいんじゃないか?嬢ちゃんもこの後は大した予定はないと思うからな。」

「この時間帯ですし、オーク討伐で一緒に斬った木を炭にするくらいしか予定はないですがウルクさんに言われるのは釈然としないです。どの様にして試すのかは知りませんが時間は大丈夫ですのでシルヴィアさんが良ければ付き合いますよ。」

「では後程、倉庫脇の広場で。」

「分かりました。」

 そうして解体作業は2時間くらいで終わった。シルヴィアは倉庫を出て準備に取り掛かったようだ。


「今回は血抜きを済ませてあったし、嬢ちゃんも手伝ってもらったから解体費用は負けとくとして今回は金貨6枚と銀貨3枚、銅貨7枚だな。ここらでは見ない魔物が10体程混ざっていたが何処で狩ってきたんだ?」

「実家の山を降りてる最中に出会した魔物を狩っただけです。」

「此方では中々手に入らないから色を付けといた。持っていってくれ。うちの娘の事もよろしくな。」

 硬貨が入った麻袋を受け取りシルヴィアが待つ広場に向かう。


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