第7話 Eランク昇格試験 オーク討伐
近くの店で5人前の食事を摂ってからギルドに戻るとウルクが仁王立ちで待っていた。
「待っていたぞ嬢ちゃん!しっかり食べて来たか!?」
「5人前食べたので大丈夫です。」
「5人前……嬢ちゃんはそれで動けるのか?」
「いつものことですから問題ないです。」
「そうか……じゃあさっそく行くか。討伐対象は向かいながら話す。」
ギルドを出て西門に向かう。
「これから討伐するのはオークだ。見たことはあるか?」
「実家ではよく狩りに行ってました。」
「倒した経験もあるのか。なら試験をやる必要もないか?」
「そうしてもらえれば嬉しいですが試験は試験です。不正をする訳にはいきません。」
「真面目で偉い嬢ちゃんだな。」
「ですが此方のオークの生息地は知らないので楽しみです。上手くいけばオークの肉を持ち帰れるので宿で調理してもらえます。」
「オークは見た目に対して美味いからな。」
西門を出て北に向かう。
「此方ということはドワーフ領ですか?」
「正確にはドワーフ領に近い人間領の森にオークは生息している。」
「距離はどれくらいですか?」
「今の速さなら1時間くらいか?もっと速くするか?」
「お願いします。身体強化を使っても大丈夫です。」
「分かった。遅れるなよ。」
「はい!」
身体強化で加速する。10分ぐらいして森に入る。森にはオーク以外の魔物も多くいる。
ゴブリンやダーティウルフの他にバインドスネークやフォレストモンキーなんかとも遭遇したが通り掛けに斬り倒して空間魔法で異空間に仕舞った。
「まだなんか隠してるとは思ったが空間魔法を使えるのか!」
「見つかると面倒事に巻き込まれるから隠しておくよう両親に言われていたんですが昨日の模擬戦でウルクさんなら見せても良いと思いましたので……」
「それは有難いが俺がギルドにずっと隠しておける保証はないぞ。」
「ばらす時は急を要する時にしてくだされば結構です。それにこれらの素材を見す見す逃すのは勿体無いですから。」
「抜け目ないな。」
「お金は必要ですから。もしよければ後で素材を買い取ってくれる良い店を紹介してください。」
「紹介するのはいいが本当に抜け目ないな。」
更に20分が経ちウルクと一緒に立ち止まる。目的地に着いたようだ。
「大体の場所に着いた。後は嬢ちゃんが探しだして倒せ。俺は後を付いて嬢ちゃんを見守っている。」
「分かりました。では此方です。」
「いきなりか!」
クロエが森を駆けて1分もすると全長250cmくらいの顔が豚に似た人型の魔物オークを8体見つけた。
「どうして分かったんだ?」
「臭いが1割、勘が9割です。」
「殆ど勘じゃねえか!見付かったからいいが…」
ウルクが呆れている。
「対象の討伐は2体で十分だがどうする?」
「勿論全部倒します。【ストームエッジ】。」
構えた薙刀の刀身に高密度の風の魔力が集まる。
「先に聞いておくべきでしたがこの辺りの木は倒しても問題ありませんか?」
「多少なら平気だが何を仕出かす気だ?」
「なるべく傷付けないように狩りますので伏せていてください。」
そう言うとクロエは8体いるオークの位置を確認し自身を中心とした円の中にオーク8体が入るように移動する。
最後に木を使って円の中心に向かって放物線に飛び落下位置がオークの首辺りの高さに来ると薙刀を大きく水平に薙払い着地する。
薙刀の刀身に集まった風の魔力が薙払った時魔力が薄く鋭く長く伸び直線20m程の刃となり周囲を一閃する。
半径20m内の8体のオークの首と木々は綺麗に切れ倒れていく。後に残ったのは倒れた木々と首以外傷ひとつない8体のオークの死体だった。
「随分派手にやってくれたな嬢ちゃん。危うく俺は潰れるところだったぞ。」
「でも傷一つ付いてませんよね。」
「当たり前だ元Aランク冒険者を舐めるなよ。だがオークの死体は潰れちまったんじゃ……おいおいどうしたらこうなるんだよ。」
木々はオークを避けるように倒れていてオークの死体に余計な傷が付いていない。一旦オークを異空間に仕舞ってから倒れた木々も異空間に仕舞う。
「この木って売れますか?」
「まぁ、大工の所にでも持っていけば買い取ってくれるかもな。」
「中途半端な木はどうすれば良いですか?」
オークの首の高さで斬った為2mくらいの高さまで木は伸びている。
「これはこれで使い道はあるだろうから回収していいぞ。」
今度は1本ずつ根本を斬っていく。大体20本ぐらい回収出来た。幾つかは槍などの柄にも使えるだろう。
「よし!オーク討伐は終わった。以上でEランク昇格試験は終了だ。勿論合格だ。とは言っても帰るまでが一応試験だがな。」
「ギルドに戻るまで気を抜くなと言うことですね。」
帰りも身体強化を使って走って帰る。ギルドに戻った時は夕陽が沈み始める前、大体午後3~4時くらいだ。
「到着ってことで今度こそ試験終了だ。ギルドプレートを寄越してくれ。更新して来る。」
「時間掛かりますか?」
「そんなに掛からないだろう。終わったら時間あるか?良い値で買い取ってくれる知り合いの店を紹介してやる。」
「ありがとうございます。時間の方も問題ありません。紹介お願いします。」
「それじゃあ少し待ってな。」
テーブルに着いて適当に一人前の食事を注文して待つのだった。