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運も実力のうち  作者: 鳴神
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第2話 クロエ・アークロード 6才(後半)

 薙刀を作り始めて数ヶ月。今はもう薙刀で稽古を付けてもらっている。杖の扱い方と似ている所もあり、慣れるのにあまり時間がかからなかった。

 今は父カルマとカナリアと共に武器を持って近くの森に狩りに来ている。目的は野宿の術を学ぶ為だ。これも危険溢れるこの世を生き残るのに必要な知識と技術だそうだ。

 私もこれには賛成だ。何時危機が訪れるか分からないのだ。知識があっても実際に出来なければ意味がないのだ。

(それにこの世界の植物の知識は無いから知っておきたいです。)

 地球とクロニクルでは似た植物があっても同じ物とは限らないのだ。薬を作るにしろ、毒を作るにしろクロニクルの知識を知らねば作れる物も作れない。

 植物に限った話しでもない。動物、魔物もそうだ。動物はまだいいが、魔物なんて地球にいるわけがないのだから、クロニクルでしかその知識を得られないのだ。魔物の構造、素材の利用法、価値、食材に使用出来るのか、知りたい事は幾らでもある。

(折角の泊まり掛けの狩りなのだ。学べるものは学んでおこう。)


 目の前には全長3m程の大きさの猪、ワイルドボアと呼ばれる魔物である。鼻息荒く今にも襲い掛かって来そうである。

 私は教えてもらった身体強化を使い、薙刀を上段で構える。

「そうだクロエ!!俺の娘ならその程度の魔物など恐れることはないぞ。」

「あなた様、クロエは今までも狩りを幾度もこなしています。これしきの事で心配要りませんよ。」

 そんな私を両親が温かく見守る。ワイルドボアが突撃してくる。紙一重で躱し、薙刀に魔力を流して強化し、無防備な首を一刀両断する。

「よくやったぞクロエ!!流石俺の娘だ。」

 私は胴体に触れ、水魔法で体内の血を抜き、

ワイルドボアの血は使い道がないのでそのまま捨てる。腰の後ろに携えた短刀を取り出し、父上に教わりながら皮を剥いでいく。

「皮を剥いだら魔石を取り出すぞ。」

カルマが言うには心臓部にあるとのことだ。肉を切り分け心臓を取り出す。切り開いて中を見ると手の平サイズの角ばった石が出てきた。

「それが魔石だ。用途は多種多様にあるが売ればそれなりに金になるぞ。それからな……」

嫁探しの旅に出ていた時の経験から色々な話を聞かされた。

(やはり私の知らないことがこの世界にはたくさんあるんですね。そのうち旅に出るのもよさそうですね。)


切り分けた肉と皮を空間魔法で異空間にしまい、周りから木の枝を集める。他にもキノコ類や果物、木の実に野草などの食べ物はカナリアに教わりながら集めた。

 集めた木の枝に火魔法で火を付け、何の味付けもしてない拳大のワイルドボアの肉を焼いて食べてみる。癖のある味と匂いで不味い訳ではないが味付けは工夫した方が良さそうだ。

「食べてみて分かっただろうがワイルドボアの肉は味も匂いも癖がある。旨く食いたいなら香辛料や酒を使って臭みを取り除いてやる方がいい。この辺なら……」

 他の方法も教わり、空間魔法から半分位の量の肉と調理器具を取り出し、味付けして焼いて食べる。只焼いた物と違って臭みがなく美味い味もする。大半を私とカルマで食べ、カナリアは少しだけ食べた。カナリアの食が細いのではなく、私達が大食いなだけである。


「父上、私は将来魔王にならないといけませんか?」

ワイルドボアの実食を済ませてからカルマに聞いてみる。

「魔王は世襲制というものではないが交代する時はクロエが代わってくれればなぁとは思うぞ。それでクロエ、その言い方からすると何かやりたいことがあるのか?」

「はい!私は世界を周って魔法を研究する旅をしてみたいです。」

知らない物事を知らないままでいたくないのだ。

「そうか。さっきも言ったように世襲制ではないし、俺は少なくとも後100年くらいは交代する予定がないからな。此方の事は当分気にしなくていいぞ。魔法の研究をしたいんだな!」

「はい。」

「魔法についてより詳しく知りたいということだな。ならば、魔法学校に通ってみるか?」

「魔法学校ですか?」

初めて聞く言葉であるが、魔法について学ぶところだろう。

「いつからですか!?」

「流石に魔法の事になると食い付くな。お前が9歳になったらだな。だが魔族領内の学校にするか、人間領内の学校にするかどっちがいいか?」

 魔王だけでなく、その部下達からも魔法は教えてもらっていて今の環境でも十分に満足しているし、学校に入ったからといって身になるものがあるとも限らない。

「人間領内がいいです!!魔族にない魔法技術があるのでしょう。9歳になるまでは魔族の魔法技術を学べばいいです。それから卒業して……卒業はいつですか父上?」

「5年だ。5年で卒業できる。勿論入学試験はあるぞ。だが大丈夫だ。その学校は全種族の子供達が集まり、人間領内でも王国から独立した領地と機関を保有している言ってしまえば小さな国だ。そこのトップとは知り合いだからいざというときは頼るといい。」


それからも色々な魔物の狩りに解体、野草、木の実、果物の採集等教わり技術、能力の向上を実感する。

「では今日はここまでにして寝るか!テントを張って寝袋を用意しろ。」

 私は寝袋の中で考える。魔法学校での5年間魔法以外でどんな事が出来るのか。年甲斐もなく楽しみであった。

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