プロローグ クロエになった日
思い付きで書いたものですが気に入っていただけたら幸いです。気分転換で書いているので投稿はまちまちになってしまうと思いますがご容赦ください。
タイトルを変える可能性があります。
目を開けると見知らぬ女性が微笑んでいる。蒼く柔和な瞳が私を覗き込んでいる。
「うぁあうぅあぁあああ」
誰なのか聞こうと思ったが上手く喋れない。
(何で?)
今度は体を動かすと違和感があり、手を動かし視界に入った時にその違和感に気付いた。
(私の手が小さい。一体どうなっているの?)
もう一度女性を見る。蒼く柔和な瞳に透き通るような白い肌、絹糸のような金髪が微かなウェーブを伴って腰の辺りまで綺麗に伸びている。容姿は十代後半でも通じるくらいに若く小顔で耳が長く先が尖っている。
(ファンタジーでよく出るエルフみたいで綺麗な人。)
顔を下に動かし視界をずらすと胸が映るがお世辞でも大きいと言えないほどにない。
(これは下手したら十代前半でも通ってしまうのでは?)
「カナリアよ、俺の子はどうだ!?元気か!?可愛いか!?俺達の子だから可愛いのは当たり前だがな!!ハッハッハッハッハッ!!」
彼女について考えていると矢鱈とテンションの高い男が彼女の隣に立つ。紅く燃えるようにギラついた瞳に張りのある褐色の肌、少し芯のあり癖のない短い銀髪でこちらは二十代前半で間違いなく通じる容姿である。隣の彼女と身長を比べて見ると50CM位の差がある。男が大きいのか彼女が小さいのか、おそらくその両方なのだろうが。
それはさておきこの男は五月蝿いが男の発言と今の私の状況から判断するに私はこの二人の息子なのであろう。
(それにしても二人とも若作り過ぎませんかね。)
「あなた様、余り騒がれてはこの子が驚いてしまいます。」
「それもそうだな。済まなかった。だが我が子の名前を付けねばならん。俺達の愛しい子なのだからそれにみあった名を付けねばな。」
「そうですね。私達の子ですから。でも、前もって決めてありましたでしょう。」
「そうであったがもう一度考え直さないか?」
(ここで考え直すか?)
「やっぱりあなた様もそう考えていたのね。」
(あなたもか!!)
「うむ。我が子ながら俺達に全然似てないからな。」
(似ていないんかい!!)
思わず心の中で突っ込んでしまう。
「そうね。私のように肌は白いけど髪は黒いですし瞳は金色であなた様に唯一似てそうなのが耳の長さくらいですね。私みたいに尖っていますけど。」
(そんなにも似ないものなのか?)
「俺達に髪が似ていた時の名前は考えてたけどこれだけ綺麗な黒髪ならそれに合わせなければ。」
「それならばクロエはどうかしら?安直だけどいい名前だと思うの。」
(日本人のような名前で無難だが悪くない。)
「俺はすぐに思い浮かばないからな良いと思うぞ。」
(それでいいのか?父親なら息子の名付けに携わりたいものだろう。)
「それならばお前の名前は今からクロエだ。クロエ・アークロード。我が娘の名前にピッタリだ。」
(えっ!娘!!)
「きっと私達の自慢の娘になりますよ。」
(私の聞き間違いじゃない。どういうことだ。私は男だったはず……あれ?そもそも私は何だ?私の名前は……何故だ?思い出せない。)
名前は思い出せない。でも日本人の男だったような気がする。日本の知識がある。ただおかしい位に幅が広い。
医療や料理、建築、農業から鍛冶など一人の一生では身に付かないだろう知識がある。しかし、経験した記憶がほとんどない。記憶にある知識からファンタジー小説の知識を参考に現場を考えると……
(これが異世界転生というものですか。だがこういったものの場合は前世の記憶もきっちり残っているものであった気がしたのですが。)
転生してるということは死んだのだろうが、その記憶もないから死んだのがいくつの時なのか、何で転生したのかの理由も分からない。
(ここまで分からないとお手上げですね。記憶のことは後回しにするとして問題は……)
私の性別が男から女に変わってしまったことだ。
(どうすればいいんですかね。)
気持ち的にはorzのような感じだ。だが落ち込んでいると目の前にメニューと日本のカタカナの文字が浮かんでくる。
手でその文字に触れようとするが勝手にメニューが開いた。そこにあったのはステータスだけだった。
クロエ・アークロード
性別 女
年齢 0才
種族 ハーフエルフ
スキル
なし
特殊スキル
言語理解
第六感
精霊眼
天心眼
全属性適性
全属性耐性
物理耐性
魔力高速回復
精霊の寵愛
成長補正
魔法
なし
称号
運命神の愛し子・転生者・魔王の子・妖精王の子・特異体
ステータスを見てみると称号にある魔王の子と妖精王の子から遺伝子的には優秀な子なのだろう。勿論自身が魔王と妖精王の子供というのにも驚いた。
(魔力高速回復なんてものがあるのですから地球にはない魔力と魔法がこの世界にはあるのでしょう。大変興味深いですね。運命神の愛し子がどういった意味があるのかは分かりませんが。)
特殊スキルのレパートリーも初めから持ってていいものではないのが幾つもある。だが、言語理解はありがたい。今の体では出来ることは殆ど皆無だ。せめてこの世界の情報は聞いておきたい。
(ステータスを見て改めて自分が女になっていると分かると落ち込みますね。流石に性別は変えられないでしょうし、転生していきなり前途多難ですね。)
そして私の新たな生活が始まるのだった。