1 コルネル中佐の休暇の終わり
―――汚ねえな馬鹿野郎。
意識を取り戻した時、まず彼はそう思い、次に苦笑した。
頬に冷たい、ぬるりとした感触があった。おまけに水道管にへばりつく淀みのような生温い臭いがする。
暗くてさっぱり辺りは見えないが、色はたやすく想像できた。濁った緑と茶色、それに黄土色。もしかしたら、不似合いに綺麗な藤色なんかも混じってる。たぶんそんなところだろう。
―――だったらさ。
彼はくくく、と笑い声を立てる。
―――きっと俺の髪なんか、その中でひどく目立っているだろうさ。
自分の真っ赤な真っ赤な髪は。彼は思わず笑いが止まらなくなりそうな自分を感じていた。
だがその笑いは結局長くは続かなかった。後回しにすることにしたらしい。
ぬるつく床。両手をついたら、甲の辺りにまで何やら水っぽい感触がある。コルネル中佐は重い身体をゆっくりと引き起こした。
*
連絡員のキムが、休暇中のコルネル中佐の元にやってきたのは、一週間前だった。
「近々あんたに出動要請があると思うよ」
キムはバゲットとセロリと水の瓶をのぞかせたクラフト紙袋をテーブルの上に置きながら、至って普通の声で彼にそう告げた。
「それはこっちの仕事か?」
中佐は訊ねた。それは組織の方の仕事か、と。
「あんたの仕事の方さ」
連絡員は答えた。手には既にポットがあった。勝手知ったる他人の家とばかりに、彼は自分の茶を入れていた。
軍警の方か、と中佐は受け取った。
彼は休暇中だった。それは彼の表向きの顔である軍警のものであり、彼が属する反帝組織においては決してそうではなかった。通称「MM」という組織において、幹部の一人である彼は、フルタイムワーカーであった。
そしてそれは、彼の目の前で呑気に渋茶などすすっているこの連絡員も同様である。キムもまた幹部の一人であった。
この本名とも通称とも知れない名を持つ連絡員は、時々このようにして、何気なく彼の元を訪れ、仕事を告げ、集合を告げ、時には活動を共にする。いや活動だけではない。
「少し前に、伯爵の方のルートを通じて、惑星『クリムゾンレーキ』にウチの手の者を入り込ませたんだけどさ」
「クリムゾンレーキか?」
「知ってるの?」
「一応な」
一応どころではないが、取り立てて言う程のものでもない。中佐はティーポットを取ると、残っていた茶を全部自分のカップへ注いだ。
「止めとけば? もう苦いよ」
そうは言ったが、キムも止めまではしない。中佐は渋く苦く冷めた茶をぐっと一息に飲み干した。
「それで?」
「元々あそこって、何年前だったかな? 動乱が起こった所だろ?」
「らしいな」
「そうすると、割とあそこの人間自体、そういう体質があるらしいってことかな? 気質かな?」
中佐はそれには答えず、口直しとばかりにシガレットを取り出すと、面倒くさげにポケットを探った。
だが入っているはずのライターが出てこない。それもそのはずで、休暇中なのだ。いつもの軍服のズボンではない。それを見てほい、とキムは自分のライターを放った。中佐は黙ってそれを受け取ると、火を点けた。
キムは一瞬何か言いかけたが、口に出したのは、別のことだった。
「まあそれでさ、火が点くのも早いと思ったのよ」
「ふん」
「ところが火の回りが早すぎた」
「と言うと?」
中佐は目を細め、煙を大きく吐き出した。
「伯爵ルートで送り込んだ奴は、元々は帝都の防衛隊で『MM』の勢力を組ませていた奴なんだけどさ。春の人事異動で向こうへ移るって言うんで、今度のあっちに駐留する軍の治安維持部隊を何とかしろって潜り込ませた訳」
「まあ治安維持部隊ってのは基本的に軍の中でも、その場に関係無い奴が行くものだからな」
「そう。ところが」
「失敗か?」
「失敗というとこれもまた問題があるのよ。そこまでは、成功してるんだ。クリムゾンレーキの治安維持部隊に、我々のシンパを増やすべく。ところが、増えすぎて、今度はそれがエスカレートしすぎた。で、当の最初の奴自身が、今度はそこの雰囲気に舞い上がってしまって」
「何処にも毒されたがる馬鹿はいるもんだな」
「そういうこと。あそこの気質はどーも伝染性らしいよ」
キムは意味ありげに笑った。
「それで」
中佐は話の続きをうながした。連絡員は肩をすくめると、あんたには予想がつくでしょうが、と前置きをする。
「舞い上がって、妙に盛り上がってしまった訳よ。とうとうクーデターさ」
「馬鹿か」
中佐は短く言い放つ。
「本当に馬鹿よ。そこで黙って内部からの活動を押し進めればいいものを、クリムゾンレーキ全土を帝国から独立させよう、なんて大騒ぎになってしまった訳よ」
「…」
「これはまだ軍でも極秘の情報だよ。情報統制が取られてる。それで近々、軍警に出動要請が来るだろうってこと」
「ふーん… なるほど」
煙草の灰が落ちる。自分が聞き込んでしまっていたことに中佐は気付いた。そんな自分にやや不快感を覚えながら、彼は灰皿に吸い尽くした一本をにじりつけた。
「それで俺には?」
「もちろん皆殺し」
キムはお天気の話でもするようにあっけらかんと告げた。
「軍警は生かして逮捕、が基本だろ? だが無論『我々には』そこまで親切にする義理はないしぃ」
そんなことだろうな、とコルネル中佐は煙草の新しい一本を手に取った。
「そこまでしろとは、我々は命じてはいないもの。ずさんな計画。統制のとれてない集団。ただ今の所は、治安維持軍という位置を利用して何とかなっているが、分裂して捕まるのも時間の問題だし」
「確かにな」
「しかもそういう奴は口が軽いからね」
「そいつは困ったもんだな。早めに塞がなくちゃならねえよな」
くくく、と中佐は笑った。
「そういうこと」
キムもつられて笑った。それは実にさわやかな、陽気さすら感じさせる笑顔だった。
「ところであのひとは、何か言っていたか?」
連絡員は軽く答える。
「Mが? 別に何も」
「MM」盟主の名を中佐は口にする。他の幹部と違って、キムは普段、盟主の最も側にいるらしい。
キムの権限は、他の幹部よりは小さいらしい。ただ盟主から下った命令を彼ら幹部に直接伝えるのが彼の最も大きな仕事であるのは確かだった。それは例え彼ら幹部が何処に居ようとも。
「そうか」
「それじゃ、俺帰るわ」
用は済んだ、とばかりにキムは立ち上がりかけた。
だが立ち上がることはできなかった。中佐の手は、彼の手首をいつの間にか掴んでいた。
「何だよ」
「俺は帰っていいなんて言ってない」
「それは俺の勝手でしょ。俺にだって都合というものがあるものね」
ほお、と両の眉を大きく吊り上げ、中佐は不安定な恰好のキムをぐっと引っ張った。
軽く引っ張っただけなのに、彼はたやすくバランスを崩し、中佐の座っていた大きなカウチの上に転がった。
「何だよいきなり! 本気出して引っ張る奴がいるかよ!」
「ああ言ってなかったか」
「何を」
「ここのアパルトマンの連中には、お前は俺の愛人だと言ってあるからな」
げっ、とキムは反射的に口にした。それまでの読めない明るい笑いと違って、本気で当惑している表情になる。
中佐は再び煙草をひねりつぶした。
彼はこの連絡員がその表情を崩すのが好きだった。おそらく「惑星一つを破壊せよ」と言われても、陽気な笑いを崩さないと思われるこの男が、こういったことをすると、あからさまに調子を崩すのが。
「軍警中佐の愛人が遠路はるばるやってきて、用件だけ告げてさっさと帰るってのは結構不審がられると思うけどなあ」
くくく、と本当に楽しそうに笑いながら中佐は言葉を重ねる。う、とキムは言葉に詰まる。
確かにそれは一理ある。軍人はまとまった休暇が少ない職業ではあるのだ。しかも近年は「反帝国組織「MM」のせいで、汚職だのクーデターだのが多発しているため、何処よりも忙しい軍警の士官など。
「さて軍警のコルネル中佐としては、結構ここのアパルトマンは都合のいい所なんでなあ」
気怠げに言いながらも、手は早かった。引きずり込んだおかげで下になっていた体勢を、中佐はあっという間に逆転させていた。栗色の長い髪が、さらりとカウチの下に滑り落ちた。中佐は背もたれを蹴飛ばし、簡単にそれを倒してしまう。
キムは苦い顔をしながらも、拒否はしない。彼もまた嫌いではないのだ。行為も、相手も。
「栄えある帝国の軍人に男の愛人が居るなんていうのはいいのかよ」
「いいんだろ。帝国の軍人なんだし」
妙にその言いぐさには説得力があった。
*
「かくして休暇は終わりぬ、か」
惑星コンシェルジェリの軍警支部にその知らせが入ったのは、キムがやってきたその三日後だった。
軍警の若い士官達は、久々に見るコルネル中佐の機嫌をそっと伺う。
どうやら彼らの上官は、充分満喫した休暇を過ごしてきたらしい。機嫌は良さそうだった。彼らは皆一様にほっとする。
ところが彼らの安堵はそう長くは続かなかった。
彼らの上官が呼ばれた通信機の前から立ち上がった時、不吉な予感は、次第にその体積と密度を増していた。
彼ら軍警の実働隊にとって、コルネル中佐は畏敬と恐怖の対象だった。
このコンシェルジェリ支部において、彼は以前のサルペトリエールから転属してきてから、支部長、副支部長に次いでナンバー3の位置にあった。
実働隊を一人として指揮しない総責任者とは違い、いつでも前線に出て指揮をし、必ずと言っていい程任務を遂行し、帰還するのが彼だった。その姿勢が、実働隊の部下達に尊敬されない筈がない。
だが一方で彼は恐怖の対象でもあった。
確かに彼は必ず生きて帰るのだが、その際に手段を選ばない。
さすがに味方を売り渡すような行動に出ることはないのだが、「ついて行けない者は見捨てる」と公言し、それを明らかに実行に移している。
任務第一、の軍人としては当然なのだろうが、かつての様に大きな戦争も無い今日、まだ学校から出てきたばかりの若い士官や、「軍内部の不正を正す」とかの理想に燃えて軍警に配属されているような者には、彼の態度が冷酷に思えることも多い。それが反感にまで至らないのは、結果として彼の行動が正しいことが往々にしてあるからなのだが。
何にしろ彼は、その燃える火のような赤の髪、光の加減によって人間味を失わせる金色の目、といった強烈な外見もあって、遠まきに敬意を払われている。
まあ本人はそんなことはどうでも良いようだったが。
「さて諸君、任務だ」
彼の部下達は一様に、彼らの精神的休暇の終わりにこっそりとため息をついた。
「今回の事件の背景はそう難しいものではない」
と中佐はスクリーンの前に立って部下に説明する。
「事件の舞台である惑星クリムゾンレーキは、十二年前の惑星全土的騒乱のために、現在に至るまで帝国軍の治安維持部隊に駐留され、管理されている。その程度はお前らも士官学校の歴史で習って知っているだろうな?」
はい、とまだ若い部下達は慌てて答える。中佐は片手に愛用の鞭を短くして持ち、指示棒代わりに時々スクリーンを叩く。その音が部下達の背筋を寒くする。それが自分の背に当てられたことのある者は特に。
「治安維持部隊は、主に帝都の防衛隊から定期的に人員を交換されて派遣される。それは何故だ? アンバー中尉」
まだ若い中尉は慌てて立つ。
「はっ、はい、当地との密接な結びつきを防止するためであります」
中佐はうなづく。アンバー中尉はほっと胸をなで下ろしながら着席する。
「そうだな。帝都から派遣される連中は、統治マニュアルに沿って統治することだけだ。それ以上のことなんぞ要求されねえし、下手にそれ以上のことをすりゃ、ボーナスの査定に関わる。昇級にも関わる」
くっ、と一瞬口の中で笑う者が居たので、彼はちら、とその方向へ視線を向けた。さっとその一人から血の気が引いた。
「つまりは、下手に長く居て、そこの人間と交流を深めるなんてことは望まれちゃいねえんだ。そのために、人員が三年以上そこに駐留することはない。その代わり、マニュアルはその都度その地に合ったものに事細かに書き換えられる。オーカー少尉、何故だか言ってみろ」
先ほど口の中で笑ってしまったオーカー少尉は、はい、とバッタのような勢いで立ち上がった。
「は… はい! えーと…」
「ちゃんと聞いてろ。座れ」
オーカー少尉は冷や汗をかきながら座った。
「まあ、マニュアルがよく変わるってことは、いい言い方をすれば、中央が常に駐留地に注意を払っているってことだし、悪い言い方をすれば、その当地に居る奴に、上手く統治させないようにしている、とも言える」
はあ、と部下達の間から声が上がった。
「だがよく変わる状態であるからこそ、統治のために現場に居る連中は、それを無視することもできない。それが普通だ。何せこの役に居るうちは、特別手当が出るからな。しかも任期は短い。下手に逆らって任期半ばにして帰されるってのは割に合わないと考えるだろうな」
ああ、と部下達はうなづく。
「ところが、そこでそういう馬鹿が出やがった」
部下達の表情が固くなる。
「今年の春季の人事移動で交換されたクリムゾンレーキの人員は、全体38人中10人だ。その10人のうちの誰かは、まだはっきりしないが、どうやらその中にその馬鹿が居たらしい」
スクリーンはその「馬鹿」達の写真が映し出された。途端にあ、と小さく声を立てる者が居た。中佐はそれにちら、と視線をやったが、すぐにスクリーンに視線を移した。
「おそらくこのうちに首謀者が居るのだが、その特定は、現在我々には課されていない。我々の任務は、現在奴ら及び現地軍の管理下に置かれてしまっている治安維持部管制塔の奪回にある」
部下達の表情が厳しくなった。
「参加メンバーを発表する」
*
「セルリアン・ブルウって奴が居たんだよ。帝都の防衛隊に」
とあの日、キムは一段落した後、中佐の耳元で言った。
中佐は一息、とばかりにシガレットの煙を揺らしている。
「お貴族様だ。それも帝国発祥の辺りからの侯爵家。ところが近年奴は、地下組織に手を出している」
「何故だ?」
「金になると踏んだんじゃないか? 間違っちゃいないけどさ」
「間違ってはいないな。だが素人が下手に手を出すと自爆するだろうに」
「そこまでは気付かない奴ってのが多いのよ。地下活動なんて基本的には赤字なのにさ。ボランティアと思ってる奴も多いしさあ。まあ何かしら他の理由もあるだろうし、元々熱い奴なんじゃないの? 家庭の事情とかさ。経緯なんて色々あるだろうさ」
「…」
俺には関係ないけどね、とキムは言いたげに天井を見上げた。
「何はともあれ、奴が伯爵のルートに近付いてきたからさ、Mの指令で、防衛隊の方をどうにかするべく試してた訳よ。ところが奴が転属になった。接触してきた頃は大佐だったのにさ、准将に出世のおまけ付きでさ」
「で、クリムゾンレーキに出向いた?」
中佐はやや目を細め、栗色の長い髪を手に取って巻き付ける。少しばかりキムは嫌そうな顔をする。
「そ。現在の地元軍のトップはセピア少将。でもこの場合の少将ってのは、帝都から派遣された准将と同じか、ちょっと下ってことになるよね。地元軍は立場が弱い。ついでに言えば、ここのセピア少将ってのは気も弱くって、結局は、ここのナンバー2のローズ・マダー大佐とナンバー3のコーラル中佐が実権を握ってる」
「ローズ・マダーとコーラル?」
「何あんた、知ってるのかよ?」
「まあな」
ふうん、とキムは面倒くさげにうなづいた。
「で、その2番と3番が、どういう訳か、セルリアンの奴と接触をはかった。俺はセルリアンの方に、任期の三年をしっかりかけてそこに我らが『MM』の支部的なものを形作れ、と言っておいた。なのに、三年どころか、二ヶ月でいきなり地元軍と手を組んで『独立運動』だ。『独立運動』だよ? 馬鹿じゃねえ? 我らが盟主が禁じているアレだよ?」
「勇み足どころか暴走だな」
呆れた、とばかりに中佐はシガレットを押しつぶした。
「そ。駒としては歩兵以下」
「少なくとも歩兵は、つまづいただけで城を落とさせはしないからな」
「俺の人選がまずかったと言えば、それまでだけどさ」
「えらく弱気だな」
「弱気? 違う違う。単なる感想よ。人生長いからそういうことは色々あるって」
「人間じゃない奴が何を言ってる」
「あんただって大して変わらないだろ」
*
「中佐、お願いがあります!」
なんだ、と上陸隊と打ち合わせをしていたコルネル中佐は顔を上げた。それは先ほど声を上げかけた部下の一人だった。
「何だ、アイボリー少尉」
「今回の作戦に、自分も参加させて下さい」
「駄目だ」
中佐は即答した。だがアイボリー少尉も引き下がらなかった。はっきり言ってこの上官に自分から声を掛けるのは、このまだ士官学校を卒業したばかりの彼にとっては非常に怖いことだった。だが。
「お願いします」
「お前、知り合いが居るだろう? そういう奴は今回は外す」
「は!?」
何故判るか、といいたげな表情だった。当然だろう、とコルネル中佐は思う。
「お前顔に出すぎだ」
は、とアイボリー少尉は真っ赤になる。そしてそれに追い打ちを掛けるように中佐は続けた。
「どういう知り合いかは知らんが、そういう奴が居ると、作戦に支障が出るんだよ。足手まとい。邪魔だ」
「は、はい… それはそうなんですが…」
「判ったら、行け。お前の任務は何だ?」
「はい、…あの、自分の役目は中途待機の通信です」
「判ってるならいい。準備を急げ」
はい、とアイボリー少尉は引き下がった。姿が見えなくなると、上陸隊の一人に任じられたアンバー中尉がつぶやいた。
「行きたいだろうな」
「知ってるのか?」
中佐は片方の眉を上げ、ちら、と部下を見た。
「詳しくは知りませんが、あの10人の中の、セルリアン准将って人が、昔、奴の父親と友人だったと聞いたことはあります」
「ほお」
「さすがに奴が士官学校に行ってからは会うこともなかったらしいですが、元々憧れて軍に入ったとか言ってましたから…」
「何だお前、詳しくは知らないって、詳しいな」
コルネル中佐はくくく、と笑った。は、とアンバー中尉は顔を赤らめた。そして中佐はそのまま笑いを引っ込めることなく、次の言葉を続けた。
「だがそういうのは、問題だ。我々は、この場所を奪回しなくてはならないんだからな。無論基本は無血開城だ。無血逮捕がベストだ」
上陸隊の顔が引き締まった。つまりは、基本は基本で、知り合いだろうが何だろうが、いざとなったら殺せ、と上官は言っているのだから。彼らは上官の笑顔を最も恐れる。
「クリムゾンレーキは結構大気圏外の防衛ラインがきつい。まずそこをくぐり抜けるのが先決だな」