表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

よごれ

作者: 武井

どうしようもなくなった俺は、深夜に散歩に出かけた。


台風が通過しかけている夜は変に生温かい空気が満ちていて少し気持ち悪かったけれど、不思議と落ち着かない感じはしなかった。人通りは少なく、くろぐろと濡れたアスファルトが街灯を反射して、深夜なのにあかるい。頭にかけたヘッドホンからは、今の俺の気持ちとは真反対の、とびきり明るい歌声が聞こえていた。


部屋から五分とかからないところまで来た時、子猫が目に入った。古びたアパートの入り口に、ただ一匹で座ってこちらを見ている。黒とねずみ色の混じった毛を持って、右目が不自然に小さい猫だった。俺が少し近づくと、気にしてないよ、とでも言いたげな仕草を見せつつも、すぐにでもたちあがれるように軽く腰を浮かせていた。アパートの電灯が猫の顔を照らす。右目には、なみだが溜まっているように見えた。


右目の傷をじっくりと観察しているうちに、その猫がひどく汚いものに見えた。


汚い猫だ、と思う自分に気がついた時、また一つ俺がどうしようもなくなる材料を増やしてしまったと思い、ますます途方に暮れてしまった。くろぐろと光るアスファルトは、まだ乾きそうにない。

夜の散歩の出来事でした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 私もそういう事有ります。あまり良くないことを考えるたびに自分はいけない存在だと感じさせられます。
2014/10/14 07:21 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ