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わりとどうでもいい地球侵略。ver.2  作者: もじ
わりとどうでもいい新章
9/12

#8.恭二編4

結局皐月を見つけられないまま、新学期はスタートし俺は高2となった。

菊花さんの協力もあり、皐月は以前の体調不良が再発し入院中ということになっている。

もちろん三世や元は驚き、柄にもなく真剣な顔で俺を励ました。

余談ではあるが、菊花さんには自分を何故呼ばなかったのかと説教を食らったものの、皐月に関しては心配いらないと言ってくれた。

みんなに励まされ……俺はどうにか毎日を過ごしている。


「お兄ちゃん!もう朝だよっ!」


「あ、ああ……宝か」


変わった事といえば、俺はずっと厄介になっていた皐月のアパートを出て家に戻った。その時、宝も同行し我が家で面倒を見ることが決まる。もちろん俺の一存で出来るわけもなく、ここでも菊花さんには世話になった。

時期的なものもあり、宝は国分宝塚として俺の母校小井小学校の6年に編入した。毎日元気に学校に通っている。


「ああ!宝ちゃんは可愛いなあ!」


「本当だわ!お母さん、ずっと女の子が欲しかったのに、お父さんが励んでくれなくてね……」


おろおろと泣き真似をする母さんを宝が心配し、父さんは必死に宥める……こんな日常を、俺は空虚に過ごしてきた。


「たく、朝から生々しい話すんなって……宝もいるんだし」


味噌汁を飲み干し、鞄を抱える。すると宝が慌て始める。


「ああん!お兄ちゃん待ってよお!宝も一緒に出る!」


「わかってるって。待っててやるから、ゆっくり食いな」




「…………」


「よう!何黄昏てんだよ!」


校庭を眺めぼーっとしてると、後ろから三世(ばか)に頭を叩かれた。


「……んだ、何か用か?」


「恭二、お前も辛いが……俺も辛い。それでも俺たちは……生きて行かなくちゃいけないんだ」


「元……」


もう一つ、俺たちは失った。




桜花だ。


表向きには両親の離婚により、急に引っ越さなければならなくなったと伝えられているが……彼女はあの日この世からいなくなった。振られたとはいえ、元は……辛いに決まっている。

つい先週くらいまで俺たちの前にいた二人が、今はいない。


(皐月、桜花……俺、お前たちのこと、守れなかったな)


……やめよ、桜花はともかく皐月はまだ可能性ゼロじゃないんだし。


「恭二、いきなりなんだが……お前に客が来てるぞ」


「客?」


「あーんーた!どーうーせー主人公補正で女子が来てフラグゲット!とか思ってるんだろうけど!客人!おーとーこーでーすーかーらー!ざんね……」

「元、俺の知ってる人?」


それに対し、元は微妙な顔をしている。


「恭二が覚えてるかどうかだな。ほら、3学期に引っ越して来たばかりで生徒会選挙圧勝したっていう……」


「……ああ、一時期女子が騒いでた人か」


記憶にはある。しかし何故そんな人が俺なんかに用があるんだ?


「おい!イケメン生徒会長待たせんなって女子が睨んでるぞ!早く行け!」


三世に蹴飛ばされ、俺は教室の前で待つ生徒会長の下へ向かった。


「始めまして。君が国分恭二君だね?余は3年の武有馬、一応生徒会長だ」


余?……なるほど、イケメンな上にかなり個性的なお人らしい。確かにこれなら生徒会選挙なんて一発だな。


「どもっす。で、会長さんが俺なんかに何の御用で?」


それに対し、武会長はふふんと鼻を鳴らす。


「決まっている。余は……君を勧誘しに来た」


「は?」


勧誘?いやいや、うちは生徒会選挙で役員みんな決めるでしょ?今更勧誘なんて……。


「全く、立候補した人間だけで人事を埋めるなど……やりにくいとは思わないか?」


「いや、そうかもしれませんけど」


俺には全く関係ないですし……。


「安心するがよい。ポストはやれんが余お付きの臨時役員という席は用意しよう。この肩書きがあれば東大も恐れる事はない!」


「いやいや、俺進学希望じゃないすから……そもそも生徒会なんかやりませんし」




「やる!」




……なんなんだこの人。

あれよあれよという間に、初仕事させられてるし。まあ生徒会長としての先輩に極意を聞くという意味不明な目的の為の道案内くらいだからいいものの……。


(しかし、よりにもよってだよな……)


向かう先が上山女子とか。そこの生徒会長はやばいぜ?宇宙人だぜ?

……いくらカリスマ性抜群とはいえ、人間としての格の違いを思い知る事になる。もちろん、悪い意味で。


(まあ、あの人も外面いいし……適当に受け流すだろうが)


どちらにせよ、俺の為すべき事はとっとと生徒会の件を断って皐月捜索に全力を注ぐ事だ。元々今日は秋華さんとその話をしに来ただけだし……。


「会長、着いたすよ」


「ああ御苦労!早速話を取り付けるのだ」


……へいへい。ったく何だってこんな偉そうなんだよ。俺は仕方なく扉をノックし、呼び掛ける。


「秋華さん、国分恭二です。うちの生徒会長が用があるらしくて連れて来ました」




「どうぞ」


秋華さんは始めて会った時の様な生徒会長モードでいらした。俺が来たからといって特に動揺した様子はない。


「久々です。あの……うちの生徒会長が秋華さんに学校政治の極意を聞きたいとほざ……言ってまして。お願いしてもいいですか?」


「ええ、(わたくし)に出来る事でしたらお役に立ちましょう。お通しして下さい」


「……会長、入っていいですよ」


「ああ」


武会長が入室し、扉を閉じる。


「あら……」


そして、秋華さんは会長を見るなり何やら思う所があったのか……そう漏らした。まさか俺とは違ってイケメンだから感心したって事は……ないか、この人の場合。


「……とりあえず紹介しますね、この人が小井高校生徒会長の武……」


俺の話を遮り、秋華さんは口を開いた。そして……まさかの地モードへと変幻した。




「これはこれは……殿下が私如きに、何の御用でしょう?」


(は……?)


殿下?何それ知り合い?


「ふっふっふ。久しぶりであるな秋華。本来ならわざわざ余が出向く必要などないのだが、事情が事情だ。仕方あるまい」


(うわあ……間違いねえ、この人あっち側だわ)


よりにもよって面倒くさい二人と同席しちまったなあ。


「仰る通りですわ、殿下」


(……)


流石秋華さん、言ってる内容と態度が反比例し過ぎだろ……ふんぞり返って座るは、脚は組むは。


「ふん、変わらんな。では早速話を始めようか」


「あの……積もる話もあるでしょうし、俺はこの辺で」


回れ右した俺を、秋華さんはそのままの姿勢で呼び止めた。


「お待ちなさいな恭二、あなたにとっても有益な話ですのよ……




皐月を、取り戻したいのでしょう?」

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