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わりとどうでもいい地球侵略。ver.2  作者: もじ
わりとどうでもいい新章
2/12

#1.由香里編1

「ただいま……」

「由香里、随分遅かったではないか、余は心配したぞ」

家に帰るとすぐ、有馬くんが玄関まで迎えにきてくれた。内心凄くホッとしたんだけど……一騎くんの話を聞かされた今、何処か素直に喜べない自分がいる。それでも何とか笑顔を浮かべて見せた。

「ごめんなさい。お腹空いたよね、すぐ何か用意するから、少し待ってもらっていいかな?」

「それは構わんが……」

何か言おうとする有馬くんから逃げるように、私は台所へと向かった。


「はあ……聞けなかったな」

夕食を終え、私はそのままお風呂に入った。両親は基本帰りが遅いので今日みたいに夜二人きりで過ごすことが殆ど、でも……最初は緊張したけど、大分自然にお話出来るようになってきた。


まあそれも昨日までのこと。

「ふりだしに戻る……か」

実際それどころじゃない。もちろん一騎くんが人違いをしている可能性もなくはないのだけれど……。

「どっちにしても、私には無理っ!」

現実逃避するように頭まで毛布を被る。もう寝てしまおう……明日になれば、全て夢として片付いてる。

一騎くんのことも忘れられる。

有馬くんに変なこと聞かなくて済む。

自らに暗示をかけるように、私は眠りに付いた。


それから一週間経ち、春休みとなった。


有馬くんとはそれまで以上に一緒の時間が増えたけど、やっぱりどこかぎこちない。私自身迷っているところもある、本人の口から一騎くんの言うように「異星人」だと言われたとして……果たして今まで通り受け入れることが出来るだろうか?

「……り」

私は……。

「由香里!」

「ふえ!?」

気が付くと随分間近に有馬くんの顔があって椅子から転げ落ちそうになってしまう。支えてもらい何とか持ち直した。


「ごめんなさい、ちょっと考え事してた。……何かな?」

「いや……先週由香里の帰りが遅かった日があったな?それからの様子が気になってるのだ、余は」

「…………」

有馬くんの問い掛けに答えることが出来ない。だってそれは……。

「由香里、正直に答えてくれないか。あの日……何があった?」

「……うん」

受け入れよう、何があっても。

そう決意し……私は話した。

一騎くんのこと。

彼の連れてきた二人のこと。

あの……灰色の景色のこと。


「なるほど、怖い思いをしたのだな。かわいそうに」

よしよしと頭を撫でてくれる。普段なら慌てて逃げ出すところだけど、何故か今はそうされてたかった。

「あの、一騎くんの言ってたことだけど……」

それは、核心に迫る問い。

つまり、私は今は有馬くんに「異星人」なんですか?……そう聞いた。


「…………」


短く、長い数秒の後。


「では、答えよう」

「うん」


…………。

何で私はコンビニに向かっているのでしょう?

「はぐらかされた……」

有馬くんの答え。

『その男厨◯病の気があると、余は思うのだ。大方由香里の気を引こうとしたのであろう。灰色の風景?ははは、黄砂黄砂』

酷い……私はあんなの見せられたのに。それにお菓子買ってこいなんて。

『余はプリンが食べたい。いやいや、これから野暮用があってな……夕方までには戻るゆえ、よろしく頼む』

……結局、有馬くんは何者なのかな?わからない。


でも、ホッとしたかも。実際どうあれ、有馬くんは私に気を使ってああ言ってくれた。何か肩の力が抜けた……か、も……。


「久しぶり」

「…………」

そこで出会ったのは、一騎くん。どうしよう……。

「どうしたの?俺が怖い?」

「そういうわけじゃない、ですけど……」

言葉とは裏腹に後退りしてしまう。一方和かに歩み寄る一騎くん。

「君に用があるんだ、少し付き合ってくれないかな?」

その表情は穏やかだけれど……どうしてもあの日見た「一騎くん」と被って見えてしまう。

ー逃げなきゃ。

必死にそう信号を送る。でも……足が動かない。あれ?そうじゃない。振り向いて走り出すんだ。何で?何で出来ないのよ!?

「そうそう、それでいいんだ」

ー駄目……意識が。


助けて、有馬くん……。


私はそのまま前のめりに倒れ込んだ。


「大丈夫。君にはまだ沢山仕事がある……大切に扱うよ」


…………。


私は夢を見ていた。

その夢の中では一人の男の子が戦っている。相手は女の子……って、この人……知ってる。確か……。

二人とも不思議な力を使う。

弓を放ったり、炎を纏った拳を振るったり……。

そして。

二人とも倒れ込んでしまった。


場面が変わり……。


今度は二人の女の子が対峙している。大きな剣を翳した髪の短い子と、燃え盛る大鎌をツインテールの子。勝負は一方的。


だった。


最後は見ていられなかった。もし目を背けることが出来たなら……そう願わずにはいられない。


私は見てしまった、一部始終。


「いやあぁぁぁあああ!」

「おや、お目覚めかい?お姫様」

意識を取り戻した時、私はまたあの灰色の風景にいた。そしてそこは大きな建物が崩壊した後のような瓦礫の山、そんな状況に置いて……私は無傷だ。

「大丈夫、君には傷一つ付いてない」

「うっ……うっ……」

涙が溢れ出た。怖い。この場所が。帰りたい。家に帰りたいよお!

「どうしたの?怖い夢でも見た?」

「か、帰して下さい!う、家に……帰りたい、です……」

一騎くんに訴えかける。そんな私の頭を撫でてくれたけど、有馬くんの時と違い凄く嫌な気持ちになった。

「もう少し、我慢してもらえる?」


ーその時、私達の数メートル向かい側の瓦礫が跳ね上がり……一人の男の子が現れた。

(そんな……!?)

そう、あの……夢で見た男の子が。その子は……背負っていた。

ーあの、女の子を。夢の中で……


笑顔で、相手を痛ぶり、辱め、焼き殺した。


「だ、大丈夫か?宝……」

「うん……お兄ちゃんこそ、平気?」


(わからない。わからないよお!)

完全に頭が混乱し切っている私を他所に、一人嬉しそうに話す一騎くん。


「彼等を始末したら、ちゃんと帰してあげるよ」


2回目にして追い越しちゃいましたね……前作ラストを。

次回は恭二が帰ってきます〜。

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