#1由香里編1
ホームルームが終わり、私は席を立つ。もちろん生徒会室に向かう為だ。もちろん不安だけど……それでもこれで少しは有馬くんが安全に暮らせるようになると思えたから、私は期待に胸を躍らせていた。
「由香里ちゃん、どうかしたですー?何か嬉しいことでもありました?」
「え、な、何でそう思うの?」
三葉ちゃんにそう指摘され、私は慌てて平然を装う。
「へへへ、由香里ちゃん見てたら三葉も楽しくなってきちゃったですよー」
「ははは、よかったね……」
嬉しそうにくるくる回りながら、三葉ちゃんは何処かへ行ってしまった。
(私も行かなきゃ)
そして私は、生徒会室へと足を向ける。
☆
(い、今更緊張してきた)
考えてみたらこれから生徒会長のいう「何とかしてくれるかもしれない人」と会うのだ。間違いなく初対面だろうし、お願いがお願いだから怖い人かもしれない。
(の、ノックしなきゃ……)
そう勇気を振り絞っていると__
「ん?君は……」
扉が一人でに開いた。
(!?あ、あれ?)
「あ、あの……」
生徒会室から出て来たのは、見覚えのある人だった。それはあの日……灰色の景色の中にいた、確か国分さん。
「どうかしまして?って、あら、武さん」
「武?」
★
「あの、何かすみません」
それから私達が向かったのは何故か喫茶店だった。何でも生徒会長も色々忙しいみたいで、とりあえず今日の所はお互いの事を話す機会にして欲しいとのことで__
「ははは、まあ秋華さんの頼みだし」
…………
か、会話が、続かない。いや無理ですよね。私が男の人と二人で喫茶店とか。前の合コン?でもあんなだったし。
どうしよう、共通の話題っていったら……物騒なことしか。まあ物騒なお願いなんですけど。
「あのさ、聞いてもいいかな」
「はい」
「武さんは、そのー、地球人?」
きました早速物騒な話題。
「はい、そのはずです。国分さんも、そう……ですよね?」
「そう、だね。何か最近自信なくなってきたけど……」
何ですかそれ?もしかして私そういう世界に足を踏み入れちゃった感じですか?
「それで本題なんだけど、地球人の武さんにボディーガードが必要ってのは何故なのか、教えてもらえる?」
「ええと……」
国分さんからすれば、生徒会長からお願いされて来てるんだから当然理由は気になるところだと思う。
でも……。
そんなの、私にもわからないよ。
「その……」
私が俯いていると、国分さんは慌てて両手を振る。
「いや、いいんだ。そうだよな、理由なんてわからないよな……俺も最初はそんな感じだった」
「ごめんなさい、本当に何もわからないんです……私はただ、有馬くんの事が心配で、誰に頼ったらいいのかわからなくて、手かがりが夢の中に出てきた生徒会長しかなくて」
「夢?」
そこまで話したところで国分さんは身を乗り出す。
「え?」
「その夢について詳しく教えてもらえないかな?何があったか知らないけど、君は今回の事で始めから秋華さんを頼った、何がその根拠なのか気になっていたんだ。それが君のいう夢だっていうのなら、君には何か不思議な力があるのかもしれない」
「……」
国分さんの言い分はわかる。もし私が自分の力でその夢を見たのであれば、何か狙われるような力が私にはあるのかもしれないと考えなくもない。
でも……違う。
あの夢は……。
「……」
「秋華さんから聞いてる、君は何度か異星人絡みで怖い思いをしたんだってね。思い出したくないだろうけど……俺はそれ程頼りになる存在じゃない、どんな些細な事でもいい、情報がないと君を守る事だって出来ないんだ。だから、知っている事は全て、話してほしい……」
迷った。全てありのまま話すかどうか。だって……それは国分さんにとってとても辛い内容だと思うから。
「頼む……」
頭を下げる国分さん、ここまで拘るということは、余程の事情があるのだろう。
「わかりました……」
「ありがとう、武さん」
「でも、もしかしたら国分さんにとって……嫌な内容かもしれません。それでもいいですか?」
私は、あの日見た事を全て話した。