#10.恭二編5
その言葉を聞いた瞬間、俺は秋華さんに詰め寄った。
「皐月って!?秋華さん皐月が何処にいるか知ってるんすか!?」
「ふふふ、少し落ち着きなさいな。残念ながら居場所までは私にも。ですが、相手の素性くらいはある程度特定出来ますわ」
「素性……」
つまり秋華さんはエリザベス以外に敵がいることを知っていたのかよ。それなら何故あんな作戦を……。
ここで武会長が口を開く。
「正直想定外であったな。連中は野良狩りの様な方法で勢力を伸ばしているものとばかり思っていたが……やはり目的は同じであった様だ」
「目的って言うと……地球の資源的な?」
以前桜花から聞いた気がする。エリザベスとヴィクトリアは地球の資源を分けてもらいに来たって。
すると会長は真剣な表情を俺に向けた。
「そこで君の出番だ、国分恭二君。余に変わって、ある子のボディガードになってもらいたい」
「は?いやいや会長、それがさっきまでの話と繋がるんすか?」
会長は答えず俺の肩を叩き、生徒会室を後にする。もちろん俺は後を追おうとしたが、何故か秋華さんに止められた。
「気持ちはわかりますが、ここは黙って協力してもらえないかしら?私も力添えしますし、もちろん皐月の件に関しても」
「秋華さん……」
エリザベスやヴィクトリア、そして皐月を襲った連中の目的は同じで、それに関連して俺に知らない奴のボディガードをさせる、ねえ。
……わからん。
(どう思う?えふ)
(うむ……敵としていたヴィクトリアからの申し出だ、安易に乗るべき話ではないのだろうが……少なくとも我らにはない情報がヴィクトリアにあるのは確かなようだな。協力するしないはともかく、利用出来ることもあるやもしれん)
えふの言葉に頷いた俺は秋華さんにとりあえず協力する意思を伝えた。
「ありがとう、あなたならそう言ってくれると信じておりました」
にこりと微笑む秋華さんを見て、俺は一つ溜息をつく。この人のことだ、どうせ面倒な任務なんだろう。
「それで、俺はこれからどうすればいいんです?」
「とりあえずお掛けなさいな、お茶でも入れますわ」
秋華さんは手際よくティーカップに紅茶を注ぐ。こういう姿を見ていると三世が大騒ぎする気持ちもわかる。
(って、何考えてる俺)
俺には皐月がいるだろ、というか皐月の為にこうしてやって来たんじゃないか。
「どうかしまして?」
気がつくと秋華さんは俺の顔をじっと見つめていた。
「えーっと、少し考え事を……皐月のことが心配で」
「そうでしょうね。それでは一つ、いいことをお教えしましょう」
「いいこと?」
少し得意そうな表情でそう言うと、秋華さんは紅茶を一口啜り__
「あなたのお仕事は、皐月と戦った相手から件の人物を守ることなのですわ」