表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/5

病床のフィアンセへ

あれから2ヶ月が過ぎた。ロッケは今日も病院に来ている。

病床に横たわるマスラーには、未だに何を話しても返事は返ってこない。そしてぶら下がる点滴の瓶よりもずっと遠くを眺めている。


「なぁ、マスラー。騎士だからといって、自分の命を捨てるほど愚かなことってないよね。俺が大切にしてた騎士のプライドなんてさ、そんなもんだったんだよね。きっとさ。


マスラーは気付いてたよね?


リストラされたときだってさ、必至に一緒になって現実に連れ戻そうとしてくれたしさ。俺のこんなプライドかっこ悪いだけって知ってたよね?


けど敢えて何も言わなかった。騎士は俺そのものだから。今まで騎士として生きてきたから。



それでもこんな俺と婚約してくれたこと考えると、マスラーは騎士としての俺じゃなくて、俺そのものを愛してくれてたのかな?


ちょっと都合のいい解釈だったりしてね。



なんかさ、事件以降、自分が騎士の家系のプライドを絶やしたことなんて、何も悪いと思わなくなったんだ。親父に謝りにいくまでは、ほんとどうしたらいいのかさっぱりわかんなかったんだけどね。


リストラされた日にさ、多分マスラーに無理やり仕事探しに連れて行かれなければ、俺もひょっとしたら親父みたいなことってか、別に死んだりはしないと思うけど、いつまでも騎士たるものみたいなことばっか言ってたんじゃないかなって考えたりするんだ。


けど、生まれてから今まで自分が守り通した騎士としてのプライドって、こんな一瞬で無くなるんだって思ってさ。


今までの俺ってなんだったんだろうって・・・。


大切に守ってきたものって、どれだけ小さく意味の無いものだったんだろうってさ。」



ロッケはうつむき、そして泣いた。


窓からはそびえ立つ王宮が見える。




30分ほど経っただろうか。

「じゃ、俺会社行ってくるね。ほら課長にまた怒られちゃうからさ。お前はほんと何にも出来ないバカだなってさ。ほんとにウザイんだよ。いやこれマジで・・。

けど、仕事は頑張るよ。白菜どころか最近は魚も値上がりしてて、結構きついよな、生活がさ。」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ