一族への謝罪
翌日、ロッケとマスラーは朝から郊外に住むロッケの父親の元を訪ねた。
そして一通りの挨拶を終え、広い暖炉のあるリビングで、ロッケから父親に、事件の始終を話した。
父親は立ち上がり、激高した。
「騎士とし生まれたるもの、辞めることは許されぬことだ。」
「違うんです、お父さん、辞めさせられてしまったんです。ロッケは頑張ってました。」
マスラーはロッケをかばうように言うと、父親は
「それは分かっておる。私が憤っているのは国王にだ。今まで我々が行ってきた栄光を無にするような、ひどい仕打ち以外の何者でもない。冒涜に値する。」
マスラーは興奮する父親を落ち着けようと「ちょっとお父さん、冒涜だなんて。」
「よそ者は黙っておれ。これは私たちの血の問題だ。」
「バシッ・・・」
嫌な音が部屋に響いた。父親はマスラーを平手打ちした。
マスラーは目を赤く晴らし、倒れこむ。
「おい、親父。お前やっていいこととだめなこと位わかんねーのかよ。ふざけんな、何が騎士だよ。なにが血だよ。俺の大切な人すら守れねーのかよ。かっこ悪いんだよ!」
ロッケは屈んでマスラーを抱え込みながら叫び、そして父親を睨みつけた。
父親の罵声は止まらない。
「おいロッケ、俺はお前をそんな風に育てた覚えはない。ましてやリストラされるとは、情けないにもほどがある。ふざけんな。バカヤロー!!」
あたりの壁や家具に当たりつくす。
そして、「お前など死んでしまえ!俺は死ぬ・・・。おらぁー!!!」
そういって父親は壁に飾ってあった剣を取り、自らの腹に突き立てた。
「いやー。」マスラーは叫ぶ。
父親は何度も自分を突き刺す。
あたりは血の海へと変わっていく・・・。
ロッケにも、もうどうすることも出来ない。目の前で起きる惨劇に、必至にマスラーの目を覆うことしか出来ない。
剣は相当回突き刺さった。
そして父親は怒りの形相でロッケをにらみ、地面に倒れた。
・・・父親は即死だった。
二人は現場で簡単に警察の事情聴取を終えた。
というか何も話せていなければ、何を聞かれたかも覚えていない。
ロッケに抱きかかえられるマスラーの目はどこかを見ている。
そして両腕で自分の体を抱え込み、小刻みに震えていた。
あまりに突然のことだった。
そしてマスラーは病院に収容された。