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恋姫†無双-外史の傭兵達-  作者: ブレイズ
第八部:日常という有り触れた日々
98/145

85


書き終わって気付く。


「やっぱり…急いで書き上げる物じゃないな……ハァ……」






〜Other side〜



益州−−蜀は成都の城の玉座の間では今日も御前会議が行われている。


議題は悩みの種である五胡への対応と−−


「−−五胡についてはこれぐらいで宜しいでしょう。次は、曹魏の動向についてです」


聞いた通り、北方を統べる曹魏についてだ。


「雛里ちゃん」


「うん、朱里ちゃん。…つい先程、帰還した細作からの報告があります。…曹魏で大規模な召集と募兵が実施された模様です」


蜀が誇る二大軍師の片割れ−−雛里の発言で玉座の間に緊張が走った。


「……十中八九、戦に備えての召集だろうね」


「御明察です、ご主人様。…ですが、何処が−−こちらと孫呉、あるいは北方の異民族の討伐か、それとも領土の防衛か……なにを目的にしているのかは掴めませんでした」


「……なにはともあれ、州境の監視を徹底しないと…」


「そうだね。朱里ちゃん、雛里ちゃん、頼めるかな?」


「「御意です」」


二大軍師が毅然と頷いた瞬間−−唐突に玉座の間の扉が重々しい音を響かせ、開扉する。


−−転がり込んで来たのは将軍を拝命している星だ。


「何事か!!?」


異様な雰囲気を感じ取った愛紗が問い掛ける。


「たった今、呉に放っている細作からの火急の報せが来たぞ。……10日ほど前、曹操軍が孫呉へ侵攻したそうだ」


『ッ!!?』


もたらされた報告に玉座の間にいる人物達は驚愕と−−僅かな安堵を感じた。


自国が攻められなかった事は幸いだとしても−−唯一の同盟国が敵の侵略を受けたとなっては落ち着かない。


それを感じ取った星は微笑を湛える。


「桃香様、主、御安心を。孫呉は陥ちませなんだ。…完膚なきまでに叩かれたのは曹魏の方にございます。ですが…−−」


言葉を区切った彼女は玉座の間の警備についている兵士達へ目配せし、退室を促す。


気付いた彼等は主人達へ礼を取ると、こぞって退室した。


「…未遂ではありますが…どうやら暗殺が行われたようです」


「…暗殺…」


「御意。下手人は許貢の残党」


「……となると…孫策さんの命が狙いだった…」


「おや、主は御存じだったので?」


「まぁ…許貢と孫策さんの関係くらいはね…」


感心したかのように星は頷く。


というよりも三国志をかじった者なら孫策が若年で暗殺された事ぐらいは知っているだろう。


「星さん。やはり孫呉は報復に出たのでしょうか?」


「…ふむ…軍師殿の読みは…正解であり外れだな」


「どういう事で−−ッ!!?」


「気付いたようだな。…黒狼隊だ」


「黒狼隊?…確かに、あの者達なら曹操軍の迎撃は可能だろうが…」


朱里と雛里は気付いたのか顔面を真っ青にする。


それに気付かぬ愛紗は星へ詳細な報告を暗に促した。


「愛紗……暗殺が未遂に終わったのは何故だと思う?」


「それは…下手人の誤りか何かではないのか?」


「……韓甲殿だ」


「なに?」


「韓甲殿が孫策殿を庇い、代わりに毒矢を受けてしまったと…」


冷静に星は報告を述べた。


瞬間−−玉座の間の空気が凍る。


−−誰かが生唾を飲み込んだ。


「……じゃあ、韓甲さんは……」


「先に結論を言えば、亡くなってはおりませぬ。しかし深傷には違いない」


「…星ちゃん。本当に和−−韓甲殿は亡くなってはおられないのね?」


「あぁ」


「誠だな、星?」


「偽りを申してどうする」


詰め寄りかねない雰囲気を醸し出す、紫苑と桔梗へ彼女は呆れたような溜息を零すが−−直ぐに姿勢を正す。


「話を戻しますが…当初、黒狼隊には韓甲殿の生死が不明でありました。しかし…襲撃された事は確か。その為……報復が行われた模様です」


「…報復…」


その言葉に古参の者達は、ある状況を思い出した。


反董卓連合−−虎牢関の戦いの惨状を。


「その細作は重ねて、このように報告しております。“虎牢関が子供の御遊戯なら、孫呉での戦は地獄だった”と」


「…“地獄”…」


一刀が漏らした言葉に彼女達は脳裏で考えられるだけの“地獄”を想像する。


「…曹操軍の損害は?」


生唾を飲み込みつつ愛紗が星へ尋ねた。


「総兵力は約20万だが、曹操率いる本隊は10万ほど。その内、4万から5万が戦死。負傷者は倍に達するようだ」


「…半数以上が死傷…」


「…報復には充分すぎる程の血が流れたという事だ。報告は以上です」


「ありがとう、星」


礼を述べた一刀へ彼女は軽く頭を下げる。


「…報復…か…」


「ご主人様…?」


「…前に、前田さんから言われた事を思い出したんだ。“血の代償は血だけ、命の代償は命だけ”…だから…報復を…」


玉座に腰掛けつつ一刀は膝の上で両手を組み−−ややあって軍師達へ視線を向ける。


「朱里、雛里。直ぐに使者を呉へ送るんだ。お見舞いの親書をしたためてくれ」


「「御意です!!」」










敗残兵を纏め上げた曹操軍は一路、本拠地である許昌を目指し行軍中だ。


行軍−−というよりは敗走が正しいだろう。


意気揚々と呉領へ向かった時は良かった。


その帰りは−−悲惨なモノだ。


−−これほどの敗戦はいつぶりか−−


将兵の足取りは重い。


戦後の凱歌は無く、ただ生きて帰る事だけが精一杯だ。



豫州には既に入っている。


許昌へ到着するのは−−現在の行軍速度から考えて10日後になるだろう。



「−−…随分、減ったわね…」


小高い丘の頂上から美しい金髪を巻き毛にした軍の総大将が馬上より呟く。


「−…はっ。確認出来るだけで約4万が戦死、重軽傷者は倍になります」


「−−…現在、負傷者の治療が進められておりますが……看護の甲斐なく死亡する者が続出。…それと…こんな物が兵の体内から…」


総大将−−華琳の傍らで騎乗する夏侯姉妹が現在状況を彼女へ説明している最中、その姉は懐から取り出した布の包みを解き、華琳に中身を見せる。


「−−…反董卓連合で見た物と同じね…」


「はい。パッと見は鏃のようですが……鎧を簡単に貫通してしまうようです」


「真桜はこれをなんて?」


鏃−−若干、歪な形状となった5.45x39mm弾の弾頭を抓み、それを注視する華琳は側近達へ尋ねる。


「“矢と同様に飛ぶのは間違いないだろうが、どういった方法で飛ばされるのかが判らない”だそうです」


「…霞は?一時期とはいえ、黒狼隊と行動を共にしていたのだから、なんらかの情報はあるのではなくて?」


「霞も“あの武器がどんな原理で動くのか見当もつかない”とだけ…」


「…そう…」


望んだ情報を得られず、華琳は抓んでいた弾頭を春蘭へ返す。


「…黒狼隊…厄介な存在ね…」


呟いた彼女は眼下を行軍する自軍を見る。


−−まるで葬列だ。


ただ静々と目的地を目指し行軍する軍勢からは幾多の足音や武具の金属音以外の雑音が殆んど聞こえない。


「……許昌へ戻ったら直ぐに呉へ使者を遣わさないとね…。それに兵達を休ませないと…」


「はい」


「しかし凡庸な官吏では手討ち……霞に頼むしかないかしら……」


「…降将ではありますが…確かに現在は曹魏が誇る騎将。…我々も向こうも面目は立つでしょう」


「…その旨、霞に伝えておいて」


「御意」


冷静に問答していた彼女達が一息入れ、行軍を見守る。


「…秋蘭、飛燕の様子は?」


「…はっ。気丈に振る舞っておりますが……やはり指揮下の損害を気にしています」


「…そう…」


配下の様子が気になったのか華琳は青い髪をセミロングにしている側近へ問い掛けた。


「……通常の戦ではない。張燕自身、それは理解しているでしょう」


「えぇ。でも、みすみす大損害を出した自分を悔いている…そんな所ね」


「はっ」


実際、彼女達が退却した華琳と合流した際、飛燕は開口一番に−−


−−お預かりした兵達を大勢……申し訳ありませんでした−−


−−平伏して謝罪したのだ。


「……少しで良いから気に掛けておやりなさい」


「…はっ、そのつもりです」


「まぁ…彼の事だろうから直ぐに立ち直ると思うけど…ね」


「…そうでないと困ります…」


「秋蘭?」


「……いえ、なんでもありません」








「……ハァ……クオリティが……」


と、2時間で書き終わって溜息を吐くブレイズです。



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