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恋姫†無双-外史の傭兵達-  作者: ブレイズ
第八部:日常という有り触れた日々
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「−−ふっ!!ふっ!!ふっ!!」


「…力み過ぎだ。肩の力を抜け」


「はいっ!!」


「…それと、もう少し脇を締めろ。大振りの原因になる」


「はいっ!!」


城の中庭に置かれた一人用の椅子へ腰掛け、戯れついてくる狼達や萌々を片手で相手しながら眼前で素振り稽古を行う徐盛にアドバイスを送る。


脱いだ素襖は腰から垂れ下がっており、裸となった上半身には筋肉が発達して来たのか薄く割れた腹筋が浮かんでいた。


「…徐盛君、熱心ですねぇ…」


「うむ…。このまま行けば将来は有望だな」


「…仕官するよう、それとなく勧めてみるか…」


俺が座る椅子の傍らには稽古を続ける徐盛を見物する幼平殿、華雄、そして興覇殿が居るのだが……約一名がやけに気の早い発言をしたな。


「…あれで将来有望なら、この大陸にどれだけそんな人間がいるのやら…」


「…確かにそうかも知れんが…徐盛の歳を考えれば、この評価は妥当だと思うぞ?」


「…だとしても奴には言うな。驕られると面倒だ。その瞬間、人間は向上心を無くす可能性がある。それに俺も指導を止めると決めているからな」


「…まぁ…確かにな。…それはお前の経験からか?」


「俺の師匠の言葉だ。第一、俺は自分が強いと思った事はない。…死ぬ時にはどれだけ頑張ろうと死ぬ、死なない時はどれだけ願おうと死なないモン−−…まぁ逆もあるんだがな。……あぁ、今のは俺の経験からだ」


「だろうな。…実戦なんてそんなモノだ。勝利と生を引き寄せたいのなら……鍛練と向上あるのみ。絶体絶命の危機は培った技量で補うしかない」


「…至言だな、尊敬する」


視界の端に映る華雄は腕組みをしつつ唇を綻ばせ、微笑を浮かべている。


「和樹殿は鍛練をなされないので?」


「……昨日、軽く素振りをしてみましたが……まだ身体がついてきません」


「大変ですね…」


一週間が経過しても自分の体力が戻らないというのは苦痛だ。


ただ歩くだけでも疲労を感じ、愛刀を杖代わりにしなければならない。


幼平殿の言う通り……本当に大変だ。


だが……いつまでも、こんな体たらくではマズい。


リハビリをして復帰しなければ……。


なにより……一日に吸える煙草が数本だけというのが辛い。


早く身体を治して、心置きな無く吸いたいモノだ。


「徐盛」


「はい、旦那さ−−わわっ!!?」


稽古を続けている徐盛へ声を掛け、彼が俺を見た瞬間、立て掛けて置いた愛刀の一本を放り投げて渡す。


それを慌てて木刀を捨て様、受け取るのを見届け、残った愛刀を杖代わりに立ち上がる。


「…いつまでも木刀で素振りをやっていたら真剣を持った時に困るだろうからな。…少しだけ教えてやる。抜け」


「はっはい!!」


徐盛は腰の帯へ愛刀を差し込むと、鯉口を切って正眼に構えた。


その切っ先はぶれる事なく俺を狙っている。


「基本的な構えは木刀と同じだ。ただ、この手の刀は直刀と違い、打ち合うのには向いていない。それは理解しろ」


「はいっ!!」


「それと前にも言ったが…刀線刃筋を通さなければ斬れる物も斬れないぞ。弾かれるだけだ」


「はいっ!!」


「…少し…腕が落ちて来たな。刀の重さに負けるな、しかし肩の力は抜くように」


鞘の石突を地面に刺し、柄頭へ両の掌を乗せて太刀を垂直に立てながら徐盛へアドバイスを出す。


「さっき大振りをするなと言ったのは、弾みで自分の脚を斬らないようにだ。洒落にもならんからな」


「はっはい!!」


「じゃあ……始めるか。最初に言っておくが剣を交えるつもりはない。安心しろ」


そう告げると徐盛は溜息を吐く。


…というか…真剣を持って一発目から、そんな事をすると思っていたのか?


流石に俺でもそんな事はしない……まぁ良いか。


脚を肩幅に開き、徐盛を見据える。


「…勝負は剣を交える前に決まる。それは相手と対峙した瞬間だ。…まずは耐えてみろ」


「はいっ−−……耐える?」


「殺気にだ。…加減が出来るよう努力はしてみよう」


努力という言葉は無料(タダ)だから良いモノだ。


……果たして、それが出来るかは別にしてだが。


瞑目し、状況を想定する。


−−眼前の人間は戦場で対峙している“敵”である。


「………準備は?」


「大丈夫です!!!」


返答を聞き、更に意識を集中する。


−−眼前の人間は、ただの“敵”。


想定が終わり−−双眸を押し開くと眼前の“敵”へ殺意を剥き出しにする。


「−−−ッ!!?」


“敵”の身体が僅かに跳ね、次いで膝が笑い始めた。


小刻みに震える身体に応じて刀の鍔鳴りが響き、顔面には滝の如き汗が流れ落ちる。


「…あっ……あ……あぁっ……!?」


敵の歯がガチガチと音を鳴らして噛み合い−−やがて黒い瞳の双眸から涙が零れ、刀が金属音を奏で地面へ落ちる。


「オッ…オイ、韓甲!!それぐらいにしておけ!!」


……む?……おっと。


殺意を鎮め、改めて“敵”−−もとい徐盛を見遣ると歩み寄る。


奴が落とした得物を拾い上げつつ様子を伺うが……徒手で刀を構える格好をしたまま未だ震えていた。


「……終わったぞ」


「っ!!?」


肩を軽く叩いただけだが、徐盛は弾かれたように身体を跳ね、次いで怖ず怖ずと見上げてくる。


「終わりだ」


「……はい…」


心底、疲れた様子の徐盛へ拾い上げた愛刀の柄を差し出し、受け取らせた。


それをゆっくりと鞘へ納めた徐盛は、持ち主の俺へ返して来る。


「…ありがとうございました」


「あぁ。…どうだった?」


受け取った愛刀を腰の帯へ差し込み、持っている片割れを杖にしつつ尋ねる。


「…あの…正直な所……ただ“恐い”としか…」


「そうか。…だが…俺や相棒よりはマシな方だぞ」


「え?」


「…初めて師匠に威圧された時……昏倒してしまったんだ…」


「えっ!?旦那様達がですか!!?」


「驚く事か?…まだガキの時分の話だ、当然だろう」


これがトラウマになってしまっては困る為、軽いフォローを入れると同時に自身の体験を話す。


……自分で話しておいてなんだが……俺も良くアレがトラウマにならなかったモンだ。


「……稽古を邪魔して悪かったな。続けろ」


「はいっ!!ありがとうございました!!!」


頭を下げる徐盛へ背を向け、愛刀を杖代わりに歩き出す。


…もう大声を注意するのは諦めたが……やはり、この頭痛は地味にキツいな。


「…韓甲…少しは程度を考えたらどうだ?」


「…む?」


椅子へ腰掛けようとする刹那、華雄が声を掛けて来た。


腰の愛刀を鞘ごと抜き、杖にしていた得物と共に椅子へ立て掛ける。


「殺気だ。流石にアレは酷だろう」


「…別に大した事は無いんじゃないか?」


「いえ、将はともかく…並の兵士であったら、まず間違いなく気絶しています」


「和樹様、思春殿の仰る通りですよ」


……何故、俺が悪者になっているのだ?


まぁ仕事柄、悪者には慣れているが…美女、美少女な三人に呆れたような半眼(もしくはジト目か?)で見られるのは心苦しい。


白い寝間着の袖へ手を突っ込み、煙草の紙ケースを取り出すと一本を銜える。


「…まぁ、良い経験になったという事で−−…オイ」


「没収だ。なに然り気無く吸おうとしている」


銜えていた煙草と掌の紙ケースが華雄の手で奪われた。


それに抗議をするモノの−−彼女は意に介さず、煙草を懐へ仕舞ってしまう。


「……俺に死ねと言うのか…」


「人聞きの悪い。私は、お前を気遣っているんだ」


「将司殿にも言われているでしょうに…」


「たばこは一日三本まで、ですよ。和樹様」


……今日はまだ一本しか吸っていないんだが…。


これでは抗議しても暖簾に腕押しか…。


仕方無しに残ったジッポを袂へ戻し……溜め息を零す。


「あの思春殿、そろそろ…」


「む、もうそんな時間か?」


「警邏の時間ですか?」


「はい。申し訳ございませんが、私達はこれで失礼します」


「華雄殿、和樹殿をお願い致す」


「応、心得た」


俺へ礼をした二人は仕事に向かうべく中庭を後にした。


中庭には俺と華雄、そして木刀で素振りを行う徐盛だけになってしまうが、静かな空間は現在の俺からすれば心地好い。


「……まだ痛むか?」


「あん?」


「頭痛がするのだろう?先刻から顔を顰めている」


「…地味にな」


頭痛薬を服用しても意味は無かったのだ。


自然な回復を待つしかないのは理解できるモノの……流石にイライラする。


「…まぁ、コイツらと戯れている時は大分、楽なんだがな…」


足下に転がる狼達や萌々を順繰りに撫でて行くと尻尾を振り、快感を示して来る。


「一寝入りするか?一応は怪我人だ」


「………そうだな…少し疲れた」


「うむ。肩を貸そう」


華雄は俺の傍らで膝を折り、肩が掴み易い格好となるが−−俺は地面を指し示す。


「む…なんだ?」


「…済まんが…歩くのも億劫だ」


「…まぁ…顔を見れば、なんとなく判るが−−」


「…膝」


「−−…………は?」


「だから膝だ。貸してくれ」


「なぁっ!!?」


「−−−−−」


…耳元でデカい声を出すな。


…お陰で頭痛に拍車が掛かった…。


「おおおっ…お前、気は確かか!!?」


「だからデカい声を−−……一応、思考は正常の筈だ。保証は出来んが」


押さえていた手を額から離す。


「歩くのも億劫−−ってか面倒臭い。そして春の日和で少し眠くなって来た。なら、ここで寝た方が手っ取り早い」


「だから何故そうな−−あぁ済まん!!」


本日、何度目かの耳鳴りと頭痛が襲来する。


…たまに部下連中が二日酔いで頭痛が酷いと漏らすが……これと似たモノなのだろうか…。


だとするなら…酒に酔えなくて良かったとつくづく思う。


「……本当に申し訳ないんだが…頼む…」


「う、うむ…しっ仕方ないな…!」


何処となく頬に赤みが差している彼女はその場で正座を崩した座法を取り、自身の脚を軽く叩いた。


「さっ…さぁ、来るが良い…!」


…たかが膝を貸すだけで、そこまで気合いを入れる必要があるのだろうか。


「…じゃあ…遠慮なく…」


「うっうむ…−−−ッ!!?」


「……ふぅ……」


椅子から立ち上がり尻を地面へ落とすと、そのまま華雄の脚を枕に寝転ぶ。


……ふむ……引き締まっているから筋肉だけと思っていたのが…案外、柔らかいな…。


「…どっ……どうだ…!!?」


「あん?…………済まんが、何を聞きたいのか判らん。それと少し声を落とせ、響く」


「…いや…なんでもない…」


「…そうか…なら良い……」


深呼吸すると片手を腹へ置く。


「かっ韓甲?」


「……寝る……半刻経ったら…起こせ…」


「ちょっ、本当に寝るつもりか!!?」


「……………」


「韓甲−−…どれだけ寝付きが良いんだ…」


「……………」


「…………ハァアアア…」


「……………」


「……韓甲……?」


「……………」


「……寝てる…よな?」


「……………」


「……かっ…韓甲…」


「……………」


「…かっ…かず−−って、私はなにを…!!?」


「……………」


「……人の気も知らないで良くもまぁ……」


「……………」


「……ふふっ…」






THE:華雄☆無双WW



エロカッコいい服装なのに何故、原作ではあんな扱いなのか……!!?




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