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恋姫†無双-外史の傭兵達-  作者: ブレイズ
第一部:乱世と反董卓連合
8/145

06



むぅ…やっつけ仕事だと、なけなしのクオリティが更に下がる…。






斥候がもたらした報告に洛陽城が緊張に包まれた。



「袁紹が動き出したのね?」


「はっ!!敵は反董卓連合を名乗り、檄文に応じた各地の諸侯にも動きが!!」


「兵力は?」


「いまだ不明ですが現在、袁紹を中心とし敵軍勢は10万を超えております!各諸侯も合わせれば更に増えるかと!!」


「…判ったわ、下がって」


「はっ!!」


10万を超える兵力か…。


流石は人海戦術の時代だ、物量が半端ない。


「主な諸侯は、袁紹と親類の袁術。袁術の客将になっている江東の孫策、幽州の公孫賛、そして曹操ね…」


「…20万にはなるやろか?」


洛陽城の一室。


そこで俺と将司は、董卓軍を構成する主要人物である月殿、詠殿、恋殿、ねねちゃん、霞、そして華雄と軍略について話し合っている。


…前々から思ってたが史実と食い違ってるな。


「…なぁ檄文って袁紹が出したんだったか?」


相棒だけに聞こえる声で問い掛けると彼は渋い表情をする。


「いや…袁紹じゃない。確か曹操…悪い忘れちまった」


「そうか…」


疑問は解けなかったが、取り敢えず会議に意識を戻した。


「霞、官軍はどのくらい動かせる?」


「せやなぁ…5万が限界や」


「ボク達も5万が限界…10万しか掻き集められないか」


霞の予想が当たるならば、兵力差は10万となる。


まぁ…正常な神経の持ち主なら戦おうとは思わないな。


人数的に兵力差は10万だが、兵の質を考えると…実質的な差は更に広がってしまう。


曹魏、孫呉は史実でも精強な兵士が揃っている。


黄巾の乱を鎮めたのだから、兵の練度も上がっていると見て間違いないだろう。


「敵はおそらく手始めに泗水関を攻めるでしょうね」


「…せやなぁ」


はっ?


「ちょっと待ってくれ」


「どないしたんや?」


「いや…何故、泗水関を攻めるって断言できるんだ?」


彼女達の発言に疑問を感じたのは相棒も同じらしく、代表で俺が問い掛ける。


「それは、あの袁紹だからよ」


「まぁ…あれや。ちょいと頭がな」


「泗水関を攻め落とし虎牢関も落とせば一気に洛陽まで登れるからだろう。…袁紹の考え付きそうな事だ」


「全くなのです!!」


…この世界の袁紹はアレなのか?


「…ん。将司、お前ならどう攻める?」


「良いのか、董卓殿の手前だぞ?」


「構いません。呂猛さん、お聞かせ下さい」


「…はっ。お…失礼。私でしたら、兵力分散を狙い手持ちの部隊を多方面に配置。虎…泗水関で戦えば董卓軍は攻め落とされまいと、出来るだけの兵を差し向ける。さすれば各方面の兵力が削がれ更に弱体化するでしょう。何しろ連合軍側が兵力で勝っているのですから圧倒的物量で押せば、どう転んでも勝利は揺るがない」


「…と、うちの副将は言ってるが?」


「…やっぱり、そうなるわよね…」


そう呟くと詠殿は表情を暗くする。


しかし…今度は三国志演義かよ。


史実では虎牢関の別称が泗水関だ。


…んっ?泗水関に三国志演義……何か忘れている…?


「何を弱気な!この程度、我々の敵ではない!!」


「華雄…せやけどな」


「えぇい、うるさい!私がこの金剛爆斧で敵将を斬って斬りまくれば退く!そして我々の勝利だ!!」


「…馬鹿か…」


「誰だ、今のは!?」


思わず呟いてしまった。


どう聞いても女の声には聞こえなかっただろうから、華雄の視線は俺達二人に固定される。


「どちらだ!?今、私を馬鹿と言ったのは!?」


「「コイツ」」


将司、この野郎!!


なんでハモりやがるんだ!!


「ちょっと軍議の邪魔をしないでよ!!」


「うっ…済まん…」


…なにやら詠殿の背後にある筈の無い幻影が見えるぞ。


…疲れてるんだろうか。


「…和樹に将司。何か良い案は無い?」


「いきなりですね。…よりにもよって、傭兵風情の我々を指名とは」


「良いから。…兵の配置なんだけど、二人からするとどうかしら?」


尋ねられ、頭の中で演算すると机に広げられた地図を指差した。


「泗水関に5万、虎牢関に3万。そして洛陽に2万の計10万が妥当かと」


「将の配置は?」


「私達と霞と華雄が泗水関。虎牢関には恋殿とねね…悪い、陳宮。陣容としては以上かと」


「ボクと大差ない、か…」


「方針としてはどうします?」


「…篭城、しかないでしょうね」


「何を馬鹿な!討って出なければ勝利は掴めないぞ!!」


「アンタねぇ、もっと頭を使いなさいよ!この猪!!」


「いっ猪だと!?」


…なんだか雲行きが怪しくなってきたな。


口論がいつの間にか伝染して六人を巻き込…恋殿は寝てるし、月殿は慌てているから四人か。


軍上層部の結束が崩れれば、その軍は一気に瓦解への道を歩むのだがな…。


だが…そうなると報酬が貰えなくなってしまう。


隣にいる将司へ視線を向けると俺の意図に気付いたのか頷いた。


頷き返すと腰のホルスターから愛銃を抜く。


実弾だが……ちょうど良い的があるようだ。


天井の一角に照準を合わせ、銃爪を引いた。


「なっ!?」


「へぅ!?」


「なんや!?」


「うおっ!?」


「ひゃあ!?」


「……ん?」


発砲音に驚いたのか多様な叫び声が。


…恋殿には良い目覚ましになったようだ。


「かっ雷!?」


「和樹、なんや今のは!?」


矢継ぎ早の質問には答えず、デザートイーグルをホルスターに戻す。


「仲間割れも宜しいが、そんな事をしている暇があるのですか?」


柄ではないが窘めると全員…恋殿以外は顔を俯かせる。


「……ん?」


「恋殿?」


「……血」


恋殿の言葉に武官二人が破損した天井から滴る朱色の液体に気付く。


見事に粉砕したなぁ…流石は大口径。


前世から片手で撃っている俺も大概だが。


「何故、天井から血が!?」


「まさか…!!」


「そんな…ここは洛陽城よ!?」


おそらく…いや確実に敵の細作(隠密)だろうな。


軍議が始まってから、天井から妙な気配がしていたのだ。


まぁ…それはともかく。


発砲音を聞き付けた衛兵達が駆け込んで来たので、天井から死体を引きずり下ろして始末を頼むと皆に向き直る。


「戦は既に始まっている。我々の雇い主である方々が混乱されてはこちらにも影響がでかねない」


「……ごめん」


「…済まんかった」


「…うむ」


溜息をひとつ零す。


「…恋殿、おかしな気配は他には無いか?」


「……無い」


…俺と同じだな。


相棒にも確認を取ると同意するように頷いた。


煙草を咥え、火を点けると紫煙をねねちゃんが居る場所とは別方向に吐き出す。


「…ひとつ、私から提案がある」


「なに?」


「…どんなに勇猛果敢な将が集まっていても、数の暴力には敵わない。この戦…どう考えても連合軍の勝利になってしまう」


「判ってる…判ってるわよ、そんな事は!!」


詠殿は叫びながら机を拳で叩くと鳴咽を漏らし始めた。


「兵力は足りない…援軍も望めない…どうすれば良いのよ!!ありもしない罪で月が…月が、こんな良い娘が殺されるなんてボクには堪えられない!!」


「詠ちゃん…」


「どうすれば良いのよ…!なんでボクの頭はこんな時に良い策が思い付かないの…!?」


静かであり激しい彼女の慟哭に室内が沈黙する。


「…この戦“表面的な勝利”はいらない」


「えっ!?」


「貴様!?」


俺の言葉に皆は驚くが構わず続ける。


「まぁ聞いてくれ。さっきも言った通り“表面的な勝利”はいらない。だが“実質的な勝利”は欲しい」


「なっなんのこっちゃ?」


唐突に横から脇腹を突かれた。


視線を向けると相棒が煙草をくれとボディーランゲージをしてくる。


一本を譲ると相棒はポケットから取り出したジッポで火を点けた。


「…これから話す事は俺達からの提案だ。乗るか反るかは、君達が決めろ」






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