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恋姫†無双-外史の傭兵達-  作者: ブレイズ
第四部:劉備軍支援
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幼女は“健全な意味”で愛でるべき存在。(恋姫OVAより)


何気なしに前書きで書いてみましたが……健全と付けると何故か、却って不健全に聞こえる。




〜〜成都陥落後〜〜



<−−俺だ>


<相棒か。どしたよ?>


<劉璋を討ち取り、成都も陥落。任務完了だ。迎えのタクシーを寄越してくれ>


<…予定だと半年なのになぁ。まだ3ヶ月ちょっとだぜ。お前、ちょっと早すぎね?>


<“予定”ではな。それより、早く迎えを−−>


<悪ぃ。ちょっと無理だわ>


<−−寄越……あん?>










和樹side




「わ〜〜〜い♪」


『ワ〜〜〜イ♪』


逃げる25名の野郎共(四捨五入すれば三十路)を紫色の髪をツインテールにした幼女が追い掛け−−−


「こっちくんなぁぁぁ!!」


−−約1名が悲鳴を上げ、全力疾走で逃げ回っている。


それを追い掛けるのは…五頭のオオカミ達+ねねちゃんのペットであるセントバーナード(?)の張々。


……別に狩りをやっている訳ではなく、単に遊んで欲しいだけだろう。


「…あれだけ戦場で暴れ回っておいて軟弱なのです」


「まぁ…誰にでも苦手なモノはあるからね−−次、ねねちゃんの番だ」


「そういうモノですか−−次、和樹がどうぞです」


「そういうモノ。君にだって苦手なモノはあるだろ−−はい、白番」


「むぅ〜〜…あそこまでではありませんが−−ふっふふ、また頂いたのです!!」


「野郎のアレは異常なだけ−−はい、悪いね」


「なぁぁぁ!!?まっままま待ったなのです!!!」


「…待った無しは君が言い始めた事だろう。腐っても軍師なら自分の敗北を素直に認めたらどうだね?」


「しっ知らないのですよ!!とにかく待ったなのです!!」


−−架空の戦場での勝敗は……喩えるなら、敵軍司令部へ陸海空からの集中砲火で決した……まぁ、そんな感じだろう。


地面に置いた19路盤を挟み対局していた俺とねねちゃんだが……ついに彼女を投了まで追い込んでやった。


…しかしいつも思うが…何故、日本ルールが適用されているのだ?


「ほれ、さっさと投了せんか」


「ぐぬぬ……!!」


正座しつつ歯軋りをするねねちゃんを胡座をかいた膝の上で頬杖をつきながら余裕の微笑を零して見遣る。


巻き返しの妙案を考えていたのだろう彼女だが……ややあって項垂れてしまう。


「…参りました」


「はい、ありがとうございました」


投了が成立したのを見届け、傍らの碁笥へ碁盤の上や蓋に置いた黒石を片付ける。


「…今更だがね。相手は俺以外でも良かったんじゃないか?…喩えば…そう、詠殿とか」


「…詠との対局はしばらく遠慮したいのです…」


「また、なんで?」


「…象棋でボロ負けしたのです…」


「そりゃ御愁傷様」


とは言うモノの…流石は腐っても、元董卓軍の筆頭軍師なだけはある。


「和樹は呉でも打ってたりするのですか?」


「あん?…碁とかを?」


「はい」


…呉で碁を打つ……どれだけ下手なシャレだ。


「…まぁ碁や象棋はたまにね。暇な時に将司や華雄、使用人とやる程度だ」


「華雄ともですか……というか強いのですか?」


「初めは俺が勝つと“認めん!!”とか言って碁盤をひっくり返してたな。…はっきり言えば弱かった」


「…弱かった?」


「あぁ。基本のシチョウを教えたら大分強くなったよ」


「ふ〜ん…」


会話を続けつつも俺とねねちゃんは黙々と碁石を片付け、それが入った碁笥を盤の上へ置いた。


「後は…武官連中へ講義する時に、俺が統裁官になって兵棋演習をするくらいか」


「…へいぎ…?」


「兵棋演習。君達もやるだろう。盤を、ある一定の状況を想定した戦場と仮定して部隊運用を考える奴」


「…それって碁や象棋の事ですか?」


「…似たようなモンだが…俺がやるのは天の方式に則ったモノでな。碁や象棋のように抽象的なモノではなく、もっと緻密かつ複雑な奴だ」


「…難しそうですなぁ」


「…実戦との違いは死傷者が出ない事ぐらいだね」


兵棋演習は近代、現代の軍隊における士官−−特に参謀育成の過程で重要な位置付けとなっている。


その必修率は士官学校等の軍官学校へ入学した者なら、ほぼ間違いなく学習する程だ。



「そういえば和樹」


「あん?」


「そろそろ城へ行く時間なのではないですか?」


「…………あぁ」


「…その長い間はなんですか…」


「…気にせんでくれ」


声を掛けて来た彼女へかなり億劫に返すと、我知らず溜息が零れた。


少年から登城の要請を受けた、と一曹から通信が入ったが……あまり進んで行きたいとは思えない。


だが、登城しないというのも……まぁなんだ…憚られるというモノ。


現在は念の為、持ってきた正装に着替え、上着とコートだけを着ていない格好だ。


「…付き添いますよ?」


「…お頼み申し上げる」


「判ったのです。璃々、もう帰るのですよ−!!」


「あっ、うん!!おじちゃん達、バイバ〜イ♪」


『バイバイ璃々ちゃ〜ん♪』


笑顔で手をブンブンと千切れんばかりに振る幼女に反して、小さく手を振る野郎共の顔は……恍惚の表情だ。


「…ねねちゃん。こいつも今更なんだが…あの子、一体誰だい?」


「ん、璃々ですか?紫苑の子なのですよ。知らなかったのですか?」


「いや、全く」


それ以前に彼女に子供がいるなんて知らなか−−いや、鋼陽殿が漢升殿へ何か言っていたな。


そうか…あの子の事だったのか…納得。


「…だが…陣中に居たか?覚えがないぞ」


「紫苑の居城から護衛されて昨夜に着いたのです」


「あっそ」


なら知らん筈だ。


まぁ、そんな事はどうでも良い。


上着を着用し、愛刀二本の佩環を剣帯のフックへ通してぶら下げ、それらを佩刀した後、コートを羽織った。


…しかし軍服を着るのも随分と久し振りだ。


「…初めて見る格好ですが…中々、様になっているのですよ」


「そりゃどう−−」


「………(じーー)」


「−−も……何かね?」


仕上げに軍帽を被ろうとした瞬間、俺を凝視する視線に気付いてしまった。


視線を下へ向ければ……先程まで部下共と走り回っていた幼女が俺を見上げている。


「おじちゃん、かっこいいね」


「…………」


「りっ璃々……ブフッ!!」


『ギャハハハッ!!』


破顔一笑した後、幼女が“とんでもない事”を仰られた。


そしてねねちゃん、口を押さえ顔を背向けながら吹き出すんじゃない。


ついでに野郎共。テメェ等は覚えてろ。


軍帽が頭にしっかり納まっている事を確かめると、片膝をついて幼女の視線と自分のそれを合わせる。


「…色々と抗議したいが…まぁ…良い。取り敢えず−−」


握り拳を包む拱手抱拳礼をしてから口を開く。


「手前は韓甲、字を狼牙。以後、お見知り置きを」


「あっ。…うんっと…璃々は黄漢升の娘です…えっと…よろしくお願いします…?」


「宜しくお願い致す。…良く出来ました」


「えへへ♪おじちゃんもよくできました〜♪」


「………」


簡単な自己紹介は終わったが……おじちゃんという呼称は止めてもらいたい。


…むぅ…何故かは知らんが、この世界に来た当初、世話となった村の子供らを思い出してしまった。


…しかし…漢升殿の娘御か…。


…黄忠に子供…史実では……あぁ、確か黄叙とかいう息子がいたな。


どうでも良い事を頭から追い出し、部下に黒馗を連れて来るよう命じる。


「あっ、真っ黒なお馬さん!!」


黒い毛並みが輝きを放つ愛馬を見て、幼女−−璃々嬢は黒馗へ近付いて行こうとするが−−


「こら」


「ふえっ!?」


−−小さな身体を抱き上げて制止させる。


「危ないぞ。不用意に馬へ近付くな」


「ごっ…ごめんなさ……ふぇ…」


馬は本来、臆病な動物。


見知らぬ人間が近付いてくれば警戒し、下手をすると暴れ出してしまう。


その為、注意したのだが……少し語気が強すぎたのか璃々嬢の声が尻窄みになってしまう。


『泣かせた〜!!言ってやろ言ってやろ、せ〜んせいに言ってやろ!!!』


おい、そこの野郎共。


貴様等は何故、こういう時に限り、素晴らしい連帯感を見せ−−


「助けてぇぇぇぇ!!!」


……中尉、お前はまだ逃げていたのか。


「和樹…璃々を泣かせてどうするのですか」


「…いや、泣かせたくて泣かせた訳じゃ…」


「問答無用なのです!!また、ちんきゅーきっくの餌食になりたいのですか!!?」


「一度も喰らった覚えはないぞ」


「ぐすっ…うぅ〜〜っ……」


「あぁっ!?りっ璃々、泣かないのです!!このおじちゃんは怖いですけど、怖くはないのですよ!!!」


…怖いけど怖くはない……どういう理屈なんだ?


そんな事を考えている間にも抱き上げている璃々嬢の小さな身体が小さく震え始める。


…涙腺のダム決壊が秒読みに入ったという事だ。


泣かれるのは些か困る。


さて…どうすれば良いか…。


…璃々嬢は黒馗に興味を示していたな。


ならばと、軽く口笛を吹けば黒馗が部下の手を離れて俺へ近付いて来る。


愛馬が傍らまで来たのを確認し、璃々の身体を更に持ち上げ、鞍へ跨がらせる。


「ふぇ!!?」


「よっ…と」


鐙へ脚を乗せ、普段よりも少し狭苦しい鞍に跨がると手綱を片手で握り、空いている手で璃々嬢が落馬しないように抱き寄せる。


「どうだね?」


「うわぁ……」


視界と視点が高くなった事に驚嘆する璃々嬢の姿を見て苦笑してしまう。


軽く愛馬の腹を蹴れば、カッポカッポと蹄の音を響かせ、並足で歩き出す。


「おじちゃん!!お馬さんのお名前なんてゆ−の!?」


「黒馗だ」


「こっきちゃん?」


「そう黒馗」


「かわいいね♪」


可愛いかどうかはともかく……さっきまで泣き出しそうだった顔は何処へ行ったのやら。


笑いながら尋ねてくる姿に疑問しか浮かんで来ない。


「こらぁぁぁ!!ねねを置いて行くななのです−−!!!」


……おぉっ、ねねちゃんを忘れていたが…張々に乗ってくるから別に平気だろう。





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