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恋姫†無双-外史の傭兵達-  作者: ブレイズ
第四部:劉備軍支援
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…自分でも何故、ここで止める?と思います。


ネタが少しあり。





Other side



総兵力約20万まで膨れ上がった劉備軍はついに益州の州都である成都へ到達した。


一方、成都に立て籠る劉璋軍の兵力は僅か2万足らず。


城壁には防衛に備え、弓隊が配置されているが、劉備軍が保有する攻城兵器の進撃を止めるには員数が少ないだろう。


「−−城門を抜かれるのは想定しているみたい、かな?」


「え?」


劉備軍本陣で双眼鏡を覗き込む一曹がポツリと漏らした。


「抜かれるって……じゃあ敵軍は城門を“抜かれても良い”って考えてるって事ですか?」


「もしくは、城壁へ配置する部隊の数が足りないか、戦術の常識を知らないかだねぇ」


そう考察する彼の顔には普段の微笑は浮かんでいない。


「…畜生、厄介だな」


「え?」


短い間の付き合いだが、一曹らしくない台詞に一刀は拳二つほど背の高い彼を見上げる。


「厄介って…」


「野戦とかは比較的、簡単さ。ただ…俺達でもゾッとするのは市街地と密林だよ」


「密林って…ジャングルとかですか?」


「うん」


一曹は双眼鏡を離し、弾帯のポーチにそれを納めると胸ポケットから煙草を取り出し火を点けた。


「さて、北郷生徒へ問題。密林と市街地、どちらも共通するモノがあります。それは何でしょうか?」


紫煙を唇の端から吐き出した一曹が傍らの一刀へ唐突な質問を出した。


それに彼はやや考え込むが−−


「あ〜…済みません…思い付きません」


「ありゃ」


その解答に少し驚いた彼だが、次の瞬間には普段通りの笑顔を張り付け、視線を成都へ向ける。


「んじゃ答えだ。共通するモノは……いくらでも隠れる場所があり、尚且つ敵に対する対処法が野戦とかの倍あること、だよ」


「…なる…ほど…」


「城壁や城門を突破するのは当たり前。その後の市街戦が一等、危険なのさ。…一物が縮こまるよ」


「いや…そんな笑顔で言われても説得力ないですよ?」


「ふっふふ…そうかい?」


「えっえぇ…」


この上なく良い笑顔を張り付けた一曹が一刀へ視線を向ける。


「まぁ危険ではあるけど…同時に一番、燃える状況でもある−−−」


「…前田さん?」


突然、口を噤んだのを訝しんだ一刀が一曹へ声を掛けるモノの彼はイヤホンを指で押さえつつ掌を翳し“静かに”というジェスチャーをした。


「−−了解」


通信が終ったのだろう。


その返答をした瞬間、彼の口角が吊り上がり、獰猛な微笑を浮かべる。


「…前田…さん…?」


「ん?あぁ…。和樹さんからだったよ」


「韓甲さんから?…なんて?」


「俺の戦列復帰の命令。ちょっと戦って来るよ」


「軽ッ!?近所のコンビニへ買い物行くんじゃないんですよ!?」


「まぁまぁ。−−あぁ、それと“狩れ”だってさ」


「……かれ?」


「狩猟の事さ。まぁ−−」



−−牙ヲ剥クガ良イ−−


「−−って事だねぇ。俺達のボスはたまに過激だ」


「…それって、どういう−−」


「“敵対行動を取る者は軍民問わず殺傷せよ”さ」


「なッ!!?」


驚愕するのも無理はない。


彼等は成都攻城の事前に指揮下の将兵達には“民間人の保護”を厳命。


それを根底から覆すような−−想定通りに成都を陥落させても禍根が残る可能性の高い命令を和樹は黒狼隊へ下した。


「つまり…民間人も殺害するって事ですか?」


「聞こえなかった?うん、そうだよ。だって当然じゃないか」


「だとしても、民間人を殺害するなんて事は−−」


「許される所業ではない、って言いたいのかな?」


「はい」


躊躇する事なく一刀が頷いた。


それを見遣った一曹は紫煙を吐き出し、短くなった煙草を携帯灰皿へ放り込み、胸ポケットに納めると小銃を肩へ担ぐ。


「…俺がこの世で嫌いなモノって教えたっけ?」


「…え?」


「その反応だと…言ってないみたいだね。良い機会だから教えてあげるよ」


そう一刀へ告げると彼は一瞬だけ笑顔を浮かべ−−次の瞬間には表情を歪ませる。


「日和見な政治家と民間人、そしてジャーナリストさ。政治家は言わずもがな。あんな奴等の所為で戦場へ送られる兵士の気持ちを考えてみろ。大義に正義?寝言は寝てから言えってんだ。日和見で向こう見ずな民間人も同じだ。気分次第で主戦論になったり厭戦論になったり……しかも自分達の都合の良いように物事を捉えやがる。そしてジャーナリスト。…あんな奴等は絶滅した方が良い。ちったぁ世界がマシになる」


「………」


一刀は呆気に取られてしまい何も反応する事が出来ない。


これほど感情を剥き出しにして唾棄するような言葉を吐く彼を見た事がないから当然ではあるが。


「…悪戯に自軍の死傷者を増やしたくないなら、決心するべきだ。“保護の対象はあくまで敵対意思のない者に限る”ってね」


「…兵士達が誤解する…と?」


「この時代なら特にだ。命令には絶対服従…俺もそれで死んだ奴を見た事があるからさ。ガキ…だったかな?…まぁガキだ。とにかく保護しようと近付いた途端、ガキが抱えてたセムテックス−−プラスチック爆弾の事ね?そいつを爆破させやがった。正規兵の野郎はミンチになったよ」


「本当に…そんな嘘みたいな話が…!?」


「事実は小説より奇なりってね」


笑う一曹に反して、一刀の表情は蒼白となっている。


泗水関での伍長による自爆を思い出したのだろう。


「民間人であろうと敵軍に居る内は敵だ。民兵ってのは始末が悪いぜ?軍人と民間人の境界線が曖昧だからね」


「…………」


「攻城戦での人的損害−−死傷者はどれくらいと見積もってる?」


不意に一曹が尋ねた。


「えっと……朱里達の想定だと−−」


「俺の予想では1,000から2,000ぐらい、かな?」


「…はい」


「なら、その枠を越えないようにしないとねぇ。例え、2,000名の損害だとしても、家族が居ればそれ以上の人間が哀しみにくれるよ」


「…はい」


「君は俺より利口な人間だと思っているからさ。俺が何を言いたいのか察しはついてると思うけど……もう少し、しっかりした方が良い」


「…はい」


顔を俯かせ、何度も単調な言葉を吐きつつ頷く一刀を彼は見遣る。


「優柔不断は弱さ、だよ。…俺達の作戦だけど…まぁ何時も通りに事を進める。ウチらが城門を破壊したら城内へ雪崩れ込め。敵兵力はそっちへ殺到するだろうから、俺達は敵城へ降下した後、城を占拠する。…劉璋は殺しても良いんだよね?」


「…お願いします」


「はい了解っと。…そこの奴。俺の馬持って来い」


近場に控えていた兵士に一曹が命じると、兵士が手綱を引っ張り、彼の愛馬を連れて来た。


「−−前田さん」


「うん?」


今まさに愛馬に跨がろうとしていた一曹へ一刀が声を掛ける。


「御武運を」


「…野郎に言われるのは少し癪だけど…まぁ貰っておくよ」


そう告げると彼は鐙へ脚を乗せ、一気に愛馬へ跨がり、手綱を握った。


「…一応、和樹さんに意見具申“だけ”はしておくよ。民間人の殺傷は出来るだけ控えて欲しいって」


「…お願いします。…それと…」


「うん?まだ何か?」


「…ありがとうございました」


いきなりの礼に呆気に取られてしまい一曹の顔に苦笑が浮かぶ。


「なんの事やら…」





一曹「俺達のボスはたまに過激だぜ」


ヨルムンガンドのレームの台詞。


レーム大好きだ−−!!



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