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恋姫†無双-外史の傭兵達-  作者: ブレイズ
第一部:乱世と反董卓連合
7/145

05



この物語は途中で爆発する可能性がありますが、危険ではないのでブラウザを閉じないで下さい。








城壁の向こうから聞こえる洛陽の喧騒は何時も通り、活気に満ち溢れている。


…何時も、なんて言うが実際の所は滞在して5日目なのだがな。



5日前、紆余曲折を経て俺達は董卓軍に協力する事となった訳だ。


それを野営地に戻り相棒を含めた部下達全員に伝えたのだが…


『いくら美人の頼みでも、なんで好きこんで負け戦に協力しなければならないんだ』


と反対意見が多数。


…まぁアジア出身が多数を占めるからな。董卓の悪行は国を越えて知っていたという所だろう。


だが…その誤解、この世界における董卓達の容姿と初見で見抜いた性格を話すと雰囲気が一変したのだ。


そして部下達が出した結論が


『喜んで協力しましょう!!』


…見事にハモってたな。



そんな訳で我が“BLACK WOLF”は董卓軍への参加が満場一致で可決された。



俺達の待遇だが、まず俺は客将として指揮を執ること。無論、基本は121名の部下達のみの指揮なのだが、状況によって他部隊の指揮を執る事が義務付けられた。


まぁ当然だろうな。


相棒を含む部下達は俺の直属の兵士として指揮下に組み込まれた。


ちなみに相棒たる将司は副将としてだ。


あぁそういえば部隊名を改名したんだったな。


いつまでも横文字を使う訳にはいかず、“黒狼隊(こくろうたい)”と名乗る事となった。


ついでに俺が名付けた訳ではない。


元々の部隊名に簡単な修正を入れただけなのだが、これは隊内投票の結果の末に決定したのだ。


…まさか9割を占めるとは思わなかったが。


なんでも部下達が言うには


『こればっかりは譲れません!!』


…お前達、そんなに愛着があったのか?



まぁそんなこんながあって現在は…訂正、現在も洛陽市外の平原に野営している。


これだけの大人数を収容出来る程の施設はあるにはあるのだが、流石にいきなりは無理だ、と軍師に言われた為だ。


その代わり必要な物資、主に食糧等は提供するとのこと。


非常に助かる。


助かるのだが……。




「モキュモキュ」


『ハアァァァ♪』


「……美味しい」


『イエェェイ!!』




「将司。彼女、今日は何人分を食べた?」


「…まだ20人分だな」


「まだまだ足りないか…」


何故なのだろうな…。


毎日、恋殿がうちの野営地に入り浸っているのだ。


そして何をするでもなく飯を食って帰って行く…それも大量の飯を平らげて。


…最初から部下達は大歓迎だったが。


憧れ(?)の呂布に出会った将司の感想は『良い意味で期待を裏切られた』と言っていた。



ちなみに将司も恋殿と仕合をして彼女に勝利の末、真名を交換している。


恋殿は部下達にも手合わせを願ったのだが、その本人達が丁重にそれを断った。


なんでも『勝てる気がしない』とのこと。


野生の勘、とでも言うやつだろう。


その代わりに食事に同伴させたのが悪かったのだろう…毎日、来ているのだ。


彼女だけならまだ良い。問題は…


「ちんきゅ−−」


「来た」


「来たな」


「きぃぃぃぃく!!」


『陳宮ちゃんが来たぞ!!』


「今日も可愛いねぇ!」


「はっ離すのです!!なっ何を頬擦りしてるのですか!?」


突然、登場したねねちゃんが勇ましく跳び蹴りをかましたのは良いが、それを阻止されたうえで抱き締められてしまい部下の腕の中で抵抗している。


…お前、一歩間違えれば犯罪になるぞ。


「モキュモキュ…お代わり」


「飯追加ぁ!大急ぎでだぞ!!」


『はい喜んでぇぇ!!』


飯炊き連中のノリは放って置いて…。


「そろそろ時間か…」


左手の手首に巻いた腕時計の針をみると定時を示している。


「警邏か。頑張ってくれよ」


「今日の当番は俺か…」


溜息を零し、食っていた飯を急いで掻き込んで食器を置く。


ついで愛刀二本を腰の剣帯に差し込み、装填済みのデザートイーグルをホルスターに入れる。


「ライフルは持っていかねぇのか?」


「邪魔」


「…あっそ」


短く答えると相棒は食事に戻った。










「韓甲将軍!?警邏ですか?」


「あぁ何か異常は?」


「特には。警邏、頑張って下さい」


「どうも」


「あっ韓甲将軍だ−。遊んで−」


「ダメぇぇ。将軍はあたしの!!」


「わたしのだよぉぉ!!」


「喧嘩するな。今度、暇が出来たら遊んでやる」


「ホントに!約束だからね!!」



纏わり付いていた子供達に手を振って見送るとポケットから煙草を取り出して火を点ける。


…なんで将軍なんて呼ばれてるんだ?


客将になったから…だろうな。


しかし…たった5日で人がこんなに騒ぐとは…正直、思いもしなかった。


「おっ和樹やないか。ちょうどええ!!」


いきなり俺の本名…じゃなかった真名を呼ばれ、声がした方向に視線を向けると羽織った外套をはためかせて霞が走って来る。


…砂塵を巻き上げて。


「どうした?」


「問題発生や!!」


「…問題?」


「せや大問題!!」


何かあったのか?


俺と同じく董卓軍の将となっている彼女がこれほど慌てるとは…予想より早く反董卓連合軍に動きがあったのだろうか?


「はよ来い!!」


「あっああ」


腕を掴まれ、霞に促されるまま彼女の後を追う事となった。







「………」


「なっ大問題やろ?」


何が大問題だ。


「…さて仕事に」


「ちょ待てやぁぁ!!」


回れ右をして元来た道を戻ろうとするが、霞が俺の服の後襟を掴む。


「なんだ?俺は警邏中。それも契約範囲の仕事で俺は傭兵。契約の一方的な破棄は、のっぴきならぬ事情が無い場合は認められない。理解できたか?」


「知らん!!」


何をそっぽ向いて断言しやがる。


「和樹の事情なんかコイツの前では些細な事や!!」


些細と言いやがったよ。


「俺からすれば、お前の事情の方が些細な事なんだが」


「なんやわれ、喧嘩売っとるんのかい!!?」


「…勝てた試しがあるのか?」


「ムグッ!」


ここ数日の仕合を引き合いに出すと彼女は押し黙った。


昨日まで立て続けに勝負を霞と華雄に申し込まれたのだが、どちらが最初に闘うかで彼女達が口論になってしまい、最終的に一人で彼女達を相手にする事となった。


結果としては俺の勝ち。


霞は“神速”の二つ名を持っているそうで、死角に回り込まれれば脅威となるが捕まえてしまえばこっちのモンだったが、華雄は…。


彼女の場合は言葉に直すならば“猪”と言うしかない。


筋は悪くない。


悪くないが…素直すぎる。


真っ正面から突っ込むしか攻撃パターンが無い為に簡単すぎた。


確かに戦術においては“攻勢の基本は突進にある”とか書いてあったと思うが…。


「あのぅ、買われないのでしたら…。その…営業妨害になってしまいますので」


怖ず怖ずと口論(?)をしている俺達に声を掛けてくる男性。


俺達がいるのは一軒の店の軒先。


店には封で閉じられた壷類が大量に置かれているので判るだろう。


所謂…酒屋だ。


「ちょいと待っててぇな」


そう店主だろう男性に告げると霞は俺に向き直った。


「和樹。後生や、後生やから…あれ、買うてぇな」


「オイ待て。なんで俺にたかるんだ?お前もそれなりに給金は貰ってるだろうが」


「それやねんけどなぁ…」


苦笑しながら彼女は頭を掻き始める。


「殆ど使ってもうたんよ」


「はっ?」


「せやから…酒に」


……なんと言えば良いのか。


史実の張遼は、確か無類の酒好きだったと記憶にある。


まさか…彼女もなのか。


性別が変わっているのに何故、そこは変わっていないのか不思議でならない。


「…霞、取り敢えずな」


「なんや?」


「しばらく禁酒しろ」


「嫌や!死んでまうやろが!!」


「死ぬ訳ないだろ」


「飢えるわ!!」


…どないせぇちゅうんや。


「和樹やて、いっつも咥えてる…なんやっけ、それ?」


「煙草」


「せや、たばこ!それ無うなったらどうするんや!?」


ビシッ、と霞は俺に指を突き付ける。


どうするねぇ…確かに俺はヘビースモーカーだが…。


「まぁ…我慢するだろうな」


そう答えると彼女はたじろいた。


「まっまぁ、それはともかく」


ごまかしやがった。


「頼むで。ずっと探してた酒が見付かったのに見逃せちゅうんは罪なんや!」


それが罪になるなら世界は大変な事になっているぞ。


…もう正直、口論にも疲れた。


将である二人が店先で真昼間から口論なんて風聞にも良くない。


「…いくらだ?」


「買うてくれるんか!?」


店主から値段を聞き、弾帯に吊した財布代わりの巾着から代金を取り出して渡し、酒が入った朱色の壷を受け取った。


「ほら」


「おっおおきに!!」


…なんで真昼間からこんなに疲れないとならん。


溜息を零しながら警邏に戻ろうとする。


「なぁ和樹」


「あん?」


ズレた煙草を咥え直しながら振り向く。


「付き合ってくれへんか?」


「…真昼間からやるつもりか?」


「せやけど」


「…年頃の娘が真昼間から酒盛りするのは感心しないぞ」


「年寄り臭いなぁ…えぇから来ぃや!!」


フェミニストを気取っている訳ではないのだが…着いて行くしかないか。








「クゥゥゥ!やっぱコイツは格別や!!」


連行されて来たのは洛陽城の中庭、5日前に恋殿と仕合をした場所だ。


現在時刻は…1422時か。


まさか本当に真昼間から酒盛りを始めるとは。


…ツッコミたい箇所は所々あるが無視しよう。


例えば、この時代の酒といえば蓮酒なのに俺達が飲んでいるのは老酒だって事や、なんで酒器に爵が無いのかって事は。


「…なぁ和樹」


「あん?」


盃に入った老酒を喉の奥に流し込む。


「…ウチと飲むの…楽しくないんか?」


「はっ?」


霞は空いた自分の盃に新たな酒を注ぎながら俺に問い掛けた。


「…ずっと眉間に皺よっとるし…おもろそうやない」


そう言われて眉間に指を当てると確かに皺がよっている。


「…そんな顔してたか?」


「…ん」


盃を傾ける彼女を見遣りながら溜息を吐いた。


「…今やて溜息吐いとるし」


「いや…今のは俺にだ」


「…美味しくないんか?」


「酒は美味いんだが…俺な、酔えないんだよ」


「はぁ!?」


空になった盃を地面に置くと、代わりに煙草を取り出して火を点ける。


もう見慣れたのかジッポで火を点ける行為に霞は何も言ってこない。


「酒は嫌いじゃないんだが…酔えないからな。あまり好きこのんで飲まないんだ」


「なんで酔えないんや?」


「判らん」


「判らんって…」


苦笑しながら紫煙を吐き出した。


「判らんモンは判らん。俺は、そんなに頭が良い訳じゃないからな。自分の事でも知らない事はある」


「…そっか」


「あぁ」


煙草を咥え直す。


…戦場で人を殺し過ぎたお陰なのか、時たま酒なのに血の味がする事がある。


初陣で人を殺した後、恐怖が襲い掛かり、それから逃げる為に酒を浴びるほど飲んだにもかかわらず酔えなかった。


それ以来か…酒に酔えなくなったのは。


「…酔ってみたいん?」


「…まぁ…な」


「ほな…ウチが酔わしたるわ♪」


そう言うと霞はいつの間に注いだのか酒が並々と入った盃を傾けて、口に含むと俺に顔を…


「って何してやがる」


「はおひいは(はよしいや)」


「…なに言ってるか判らん。さっさと飲み込め」


「…ン。なんや、人がせっかく口移ししてやろうと思ったのに」


「馬鹿…。そういうのは、もっと大事な時にとっとけ」


「馬鹿とはなんや馬鹿とは!!」


「…実際、そうだろうが」


「馬鹿いうんわな華雄みたいな奴を言うんや!!」


「…あっちは猪だろう」


「…そうやった」


華雄の猪ぶりは、どうやら公認らしい。


「名案やと思ったのになぁ…」


「何が?」


「せやからぁ。和樹が酒に酔えない代わりに…」


「代わりに?」


「ウチに酔わせようかと思って♪」


なんて事を思い付いたんだか…。


「嫁入り前なんだ、もっと自重しろ」


「かったいなぁ…。和樹、いったい歳なんぼ?」


「25だ」


「ふぅん…まぁ予想通りか」


「年上の言う事は聞け」


「ん?なんでウチが年下なんや?」


「はっ?」


…かなり若いように見えるんだが…。


「オイ…霞、お前いくつなんだ?」


「知りたいか?」


「まぁ…」


「腰抜けるでぇ?」


霞は妖しい微笑を浮かべるが、興味がある。


「ウチの歳は…」


「…………」


「…って嘘に決まっとるやぁぁん♪」


…騙された。


「どや、腰抜けたか?」


「…安心しろ。閨でも腰抜けた事はない」


「なっ///」


初々しい反応に笑いが零れた。


やはり俺より年下だな。


「さて…警邏に戻るか」


「なんや…もう行くんか?」


「警邏中の人間が城に居るって事が詠殿にバレたら大変なんでな」


「ほか。気ぃ付けてな」


「あぁ」


そう返して、市街に戻る為に足を進めた。



さぁて…次は何処を回るかな。





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