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Others side
「…………暇や」
「どうしたんだ、霞?」
「いや…なんかこう何時までも待ってるのが暇で暇で仕方ないんよ。…どうにかならへん?」
「まぁそういうな。庶民が橋を渡っているというのだ。そんな時に仕掛けてみろ。庶民が犠牲になる可能性が高く−−」
「そしたら大将の風聞に傷がつく−ってんやろ?わぁ−とるよ、そんくらい。でもなぁ…こう待ってるんわ、ウチの性分ちゃうんや」
荊州まで逃亡した劉備を撃滅する為、遠路遥々、ここまで来たのは曹操軍が編制した追撃部隊。
指揮を執るは、春蘭、秋蘭、季衣、霞の曹操軍を代表する将軍達だ。
現在、林の向こうにあるという長坂橋では劉備軍の将兵が彼女を慕って付いて来た難民達を逃がす為、必死の誘導を続行している。
曹操軍は手を出せない。
秋蘭と霞の会話で判るだろうが、曹操−−華琳は世間の自身に対する風評を気にする人間だ。
今、劉備軍を攻撃すれば痛烈な一撃を加える事が可能であり、劉備も討つ事が出来る。
だが、膨大な数の難民が橋を渡り切らない内に仕掛けてしまえば−−間違いなく大多数の犠牲が出るだろう。
それが大陸に広まれば、彼女の風評は地に落ちる事となる。
それだけは避けたいのだ。
実際の所−−難民達は橋だけでなく、川上にある浅瀬から対岸へと渡っており、渡河時間は大幅に短縮できている。
つまりは開戦が近い筈なのに−−彼女達には伝わっていない。
「季衣、斥候からの報告は?」
霞同様−−いや下手をすると、それ以上に我慢が出来ない曹魏の大将軍が配下の妹分である季衣へ尋ねる。
正史の夏侯惇は高い戦闘力と冷静沈着さを併せ持っており、一武将、大軍の指揮官としても非常に有能で、さらに一兵卒に混じって土木作業などにも嫌な顔一つせずに精を出す−−言うなれば曹操以上に非の打ち所がない……とは言い過ぎかも知れないが、優秀な人物であった事は間違いない。
一方の従兄弟であり主君でもある曹操だが……能力はともかく、彼は風采が上がらなかったらしく、自身の容姿などにコンプレックスを抱いていたのは有名な話。
ちなみにフランスのナポレオンも身長が低かった事を気にしており現在まで“ナポレオン・コンプレックス”という俗語を残している。(身長の低い人間は短気で怒り易い等の根拠がない俗語。近年の研究の統計によると、身長の高い人間の方が短気だという真逆の結果が出たとか)
無論、容姿や身長で人間が決まる訳ではないのは当然の事だ。
隻眼の猛将として知られる武将だが……この外史では左眼を失っていない。
これは虎牢関で将司が彼女を射ろうとしていた兵士を射殺した為であるのはお気付きだろう。
「春蘭様…それが…」
「どうした?」
「最初に出した斥候は帰って来たんですけど……後から出した斥候はまだ…」
「……帰って来んのか?」
「はい…」
「むぅ…」
状況を説明する季衣の言葉に春蘭は腕を組む。
「…斥候が戻って来ぃへんちゅ−のは……狩られた、って事かいな?」
「ふむ…そう考えるのが妥当かも知れぬが、劉備軍に兵力を割く余裕があるのだろうか?」
女性にしては幾分か低いハスキーな声で秋蘭が疑問を口にすると彼女達も首を傾げてしまう。
「…あの林、伏兵を潜ませるには打って付けやな…。季衣、斥候から報告はあったかいな?」
「ううん。林には誰も居なかったって」
「……そか…」
「…どうしたんだ、霞?」
霞の異変−−というよりは落ち着きのなさに気付いた秋蘭が彼女を心配して尋ねると、霞は甘えて顔を寄せてくる愛馬を撫でつつ固い表情のまま口を開いた。
「…なんかな…嫌な予感がするんよ」
「…?…嫌な予感?」
「うん。なんちゅ−か…こういう状況、ウチは知ってる気がしてな…」
「放った筈の斥候が戻って来ない事か?」
「それもあるんやけど……う−ん……まるで和樹がしそうな策やなぁ…」
「……誰だ?」
ポツリと彼女が呟いた聞き覚えのない真名と思われるそれに反応して秋蘭が尋ねると、霞は少し恥ずかしそうに指先で頬を掻く。
「あ−、和樹ってのは真名や真名。韓甲って言えば判るか?」
「それは……あの韓甲か?」
「…どの韓甲かは判らへんけど、ウチが知っとる韓甲は一人だけやで」
董卓軍に所属し、圧倒的な大兵力を有する連合軍を相手に大立ち回りを演じた韓甲という武将の名は当時、連合軍に所属していた諸侯の間へ広く流布された。
一部の諸侯などは董卓討伐よりも韓甲を始めとした精鋭傭兵集団:黒狼隊を自軍へ引き込もうとしたくらいである。
無論、彼の下に戦時下にも関わらず敵方から“寝返れば相当の地位と金銀を与える”等の書簡を携えた使者が来たのだが……威圧的、恫喝紛いの説得をする使者は手討ちにされ、果ては会戦の際に使者を遣わした軍を集中して攻撃し、二度と同じ台詞が吐けないよう“始末”されたらしい。
「その韓甲とやら……確か現在は呉の孫策に味方しているようだ」
「知っとるよ」
「ふん!!所詮、傭兵部隊の頭ではないか。金さえ積まれれば、何処にでも味方する賤しい−−」
「惇ちゃん」
「……霞?」
「勝手にそう思うんならええわ。でもな……ウチの目の前で、そんなこと抜かすんわこれっきりにしぃや」
彼女達と霞の付き合いはそれほど長くはない。
長くはないが……短い期間の中で、ここまで真剣な表情で警告にも似たそれを放った彼女を見た事がなかった。
「……おっ応…判った」
「……ほんなら、えぇわ」
「……ふふっ」
満足したのか再び腕を組む霞を見て、秋蘭が微笑んだ。
それに気付いた霞が彼女を横目に見ると、秋蘭は悪戯っ子のような表情で口を開く。
「韓甲とやらは…相当、良い男のようだな?」
「…まぁ、良い男や。頭は良く回るし、度胸もある、それに冷静でいて腕っ節も申し分ない。大将と良い勝負や」
「ほう…。どうやら…“神速”と名高い張遼将軍は韓甲に大層、御執心のようだ」
秋蘭の言葉に彼女の頬が紅く染まり、霞は慌て始める。
「ちゃちゃう!!ちゃうよ!?ウチが和樹のこと好きやなんて−−」
「ほほぅ?…私は“御執心”かどうかを聞いたのだがなぁ…。どうやら霞にとって、その御仁は想い人らしい」
「……妙ちゃん、謀ったな?」
「ふふっ、なんの事だか。皆目、見当もつかんよ」
霞に対するからかいが一通り終わると、秋蘭は微笑を引っ込める。
「…近々、華琳様は呉に駒を進めるお考えのようだ。間違いなく韓甲とは戦う事になる。…良いのか?」
「ウチを誰やと思うとるん、張文遠やで?一遍、和樹と本気で命の遣り取りをしたい思うてたんや!!」
武人の血が騒ぐ、とばかりに霞は肩に預けていた飛龍偃月刀の石突を地面へ叩き付けた。
「流石は霞だ。頼もしいな」
「当ったり前やないか−−−」
言葉を交わしている最中、突然、霞の頬に一本の血の筋が通ったかと思うと、後方で整列していた兵士の喉に穴が穿たれる。
次いで、独特の乾いた音−−銃声が一発、聞こえ、兵士の身体が前のめりになって倒れた。
「………え?」
「……なにが…?」
訳が判らないとばかりに周囲の兵士達が倒れた同僚−−喉から血が溢れ出る中、そこを押さえ付けつつ藻掻いている兵士を呆然と見る。
「−−−ッ、伏せるんやぁぁぁ!!」
霞が姿勢を低くしつつ叫び、それにやや遅れて将軍達も屈むと春蘭と秋蘭の後方にいた兵士の身体に穴が穿たれた。
「……外した?」
「…クッソ…。着弾間近で風向きが変わりやがった…!!」
<小隊長より狙撃班。目標は仕留めたか?>
「…こちら狙撃班。“敵将”張遼への狙撃は失敗、繰り返す、狙撃に失敗した。…どうやら着弾間近で風向きが変わったようです」
<夏侯惇および夏侯淵と思われる敵将への狙撃はどうか?>
<…あの姉ちゃん達、良い反応です。紙一重で避けやがった。ったく、この世界の人間はどんな反射神経してやがんだ>
7.62mm弾を使用するレミントンM700を伏射の姿勢で構えている隊員がイヤホンから流れる遣り取りを聞きつつ、ボルトを操作し、排莢と次弾装填を行う。
二脚を立て、銃身が揺るがないよう固定したままスコープを覗き込めば、敵部隊の半数は伏せており、前面には盾を所持した兵士を置いているのが見えた。
この隊員は狙撃兵であり、傍らで双眼鏡を覗き込んでいる観測手の相方も狙撃経験のある者だ。
狙撃兵というのは敵兵が倒れる姿を射撃前に思い浮かぶという。
それは漠然としたモノではなく、放った銃弾が何処に命中し、どのように銃弾が身体を貫き、どのような格好で倒れるのか、といった正確とも言える予想が脳裏に浮かぶのだ。
それはこれまでの経験を含め、あらゆる自然的現象を計算し尽くす事で可能なのだ。
実際、彼や他の狙撃兵の脳裏に浮かんだのは−−銃弾が彼女達の頭部に命中し、倒れる姿。
目標との距離は600mほど。
狙撃兵ならば簡単に目標へ命中させられる距離だ。
それなのに−−銃弾は目標を外れた。
この場合は着弾間近になって敵部隊のいるポイントに吹く微風が想定していた風向きが変わったからだ。
<プラン変更。頭を上げた奴から順に射殺していけ。敵を足止めしろ>
「−−了解」
当初、計画されていた敵将殺害−−混乱と士気低下を目的としたそれは頓挫した。
次善策として、今度は無差別に敵兵を射殺し、待機しているその場から動かさない事が中尉によって命令される。
「……あの“猟犬”なら命中させられるんだろうなぁ」
「…あぁ、向こうで噂になってた狙撃兵だっけ?戦場で良くある噂話だろ−−距離614mの奴」
観測手の報告で、銃爪が引かれ、直ぐ様、ボルトが操作された。
「ヘッドショット、ヒット。……まぁ噂が本当ならな…。ドラグノフを使ってるって聞いたぜ?」
「あぁ。…アレで800m先の移動目標を仕留めるらしい」
「…マジかよ…射程距離外じゃねぇか」
「…机上計算じゃ、800は飛ぶらしいんだが…。やっぱり噂か」
「ったりめぇだろ。そんな事、ありえねぇって」
別の場所から一発の銃声−−敵兵が一人、倒れた。
<そのまま続けろ。難民が渡河するまで足止めだ>
様子を見ようと僅かに身体を起こした兵士の頭が撃ち抜かれた。
裂けた頬から流れる血を手で拭った霞が呼吸を整える。
「死にたくなかったら、絶対に頭あげるんやないで!!」
『…は…はっ!!』
「前で盾持ってる奴は、そのままで居るんや!!えぇな、動くんやない!!」
霞は状況が掴めていない兵士達へ素早く命令を下す。
「…黒狼隊か?」
「…なんでや…なんで和樹が劉備軍に味方して…!?」
「霞ッ!!」
「ッ!?」
「霞、落ち着け。…あれは黒狼隊か?」
「…判らんけど可能性は高いな。董卓軍に居た頃、和樹−−韓甲に教えてもろうた事がある。あれは、狙撃ちゅーんや」
「正確無比、だな…。これでは動けん」
「どうするのだ!!これではどうしようもないぞ!!?」
「落ち着け、姉者。…とにかく様子を見よう」
「じっとなどしておれん!!いっその事、あの林に突撃して−−」
「駄目や!!向こうはそれを狙ってるんやで!!少しでも動こうモンなら、あっという間に蜂の巣や!!」
かつての同僚だけあって霞には、どのように対処すべきか判っている。
判っているが……それは漠然としたモノで、この状況を打破するだけのモノではない。
出来るのは−−ただじっとしている事だけ。
その後の3時間は正に我慢比べ。
もう敵はいないだろうと、命令された兵士が林を確認しに行こうとすると−−直ぐに射殺される状況が延々と続けられた。
だが−−その状況が突然、打ち破られた。
「−−もう我慢できん!!夏侯惇隊、私に続けぇぇぇ!!!」
「あっ姉者!!」
「春蘭様!!」
「あかん、惇ちゃん−−−−……え?」
辛抱出来なくなった春蘭が駆け出し、自分の部隊も突撃を開始したのにも関わらず−−銃声は聞こえなかった。
「……ッ!!ウチの馬、早う持ってきい!!」
「はっ!!」
部下が連れて来た愛馬に颯爽と跨がると、霞はその腹を蹴り、一気に駆け出した。
林に入る間際、突撃している春蘭と擦れ違うが、それには眼もくれず、獣道を見付け出すと一路、林を抜けた先にあるという橋を目指す。
彼女が思った通り、林の中に黒狼隊の姿はない。
その代わりに数多の殺害された曹操軍兵士−−斥候に出した者の死体が彼女の視界の端に入った。
愛馬を走らせていると緑が切れ、視界が開けた。
地面には多数の足跡だけがあり−−難民の姿は既に無い。
その代わりとばかりに居たのは−−−
「−−和樹!!」
劉備軍将兵も難民も既に渡河を終えていたが、まだ和樹が指揮する小隊だけは残っていた。
片手に持つ飛龍偃月刀に力が籠もる。
半年振りに見る元同僚の顔は無精髭とフェイスペイントを覗けば変わらない。
万感の想いを込めて叫んだ名前に和樹が反応する。
愛馬の黒馗に跨がろうとした瞬間だったのだろう。
「和樹、ウチと勝負やぁぁぁ!!!」
董卓軍に所属していた頃、二人の間では何回もの手合わせが行われた。
だが、それは“勝負”とはいえない。
“勝負”とは文字通り、どちらかが勝ち、どちらかが負けること。
つまり−−−生き残った者が勝者。
和樹が愛馬から離れ、腰から愛刀を抜く。
手綱を握る霞がそれに気付き、我知らず表情が綻んだ。
「…そうや…そうでないといかん…!!」
一騎討ちの申し出が受諾された。
何故、呉にいる筈の彼等が劉備軍と行動を共にしているのかの疑問はある。
だが、彼女には、もうそんな事はどうだって良い。
今は純粋に−−命の遣り取りを楽しみたい。
霞は愛馬から飛び降りると、脚が地面に着くと同時に走り出した。
それと呼応するように、和樹がゆっくりと、散歩でもするように歩き出す。
互いの距離が詰められ−−霞の飛龍偃月刀が振るわれる。
「和樹ぃぃぃぃぃ−−−!!!」
彼の肩を狙った鋭い袈裟斬りが振り落とされ、ダラリと下がっていた和樹の刀が逆袈裟に振るわれ−−互いの得物が交差した。
響き渡る金属同士の衝突音と共に、霞は喜色満面の表情となる。
全力の一撃をこうも容易く受け止められるのは彼女が知る限り三人しかいない。
やっと再会出来た事に彼女は声を出さず笑うが、和樹の顔は歪まず−−腰に残った、もう一本の愛刀が抜かれたと同時に飛龍偃月刀の刃が柄の根元ごと宙を舞った。
「…えっ−−−−ッ!?」
その光景を見ていた霞の腹に和樹の蹴りが入り、彼女は真後ろへ吹き飛ばされる。
二回ほど地面へ叩き付けられ、やっと止まると身体の傍らに斬り飛ばされた飛龍偃月刀の刃が突き刺さった。
「……久し振りだな」
「……半年振りかいな?」
「あぁ」
僅かに身を起こした霞は痛む腹を擦りつつ、改めて和樹を見る。
彼は両手に持った愛刀の一本を鞘へ納め、先程と同じくゆったりとした歩みで霞へ近付いて行く。
「……将司と華雄は?」
「元気だ」
「…そっか…なら、えぇわ」
互いに短い受け答えだけしかしない。
「…本当に…久し振りやな…」
「…あぁ。そして……さようなら、だ」
「……そうみたいやね。まっ、本望や。一息にお願いするで」
互いの距離が零となり−−霞が正座すると、傍らまで来た和樹が愛刀を八双に構える。
「一応、聞いておこう。言い遺したい事は?」
「せやなぁ…。…ウチは韓狼牙に出会えた事を心から誇りに思う!!……それでええわ」
心底、霞が満足そうに吼えると和樹の構える刀の鍔が鳴る。
「…判った。一応、覚えておこう」
「…うん…嬉しいわぁ…。……ほな、さいなら」
「あぁ」
永久の別れの言葉を短く交わすと、和樹の愛刀が彼女の細い首を目掛け振り降ろされ−−−
「そこまでよ!!!」
−−首の皮膚に当たった所で刃が止まった。
突然の怒号に和樹は発声源を探し出し−−それを見付けた。
「……貴方が韓甲かしら?随分、おかしな皮膚の色をしているのね?」
「…丞相:曹孟徳殿、であられるか?」
「えぇ。…出来るなら魏王と呼んでもらいたいけど。それで…その皮膚の色はなにかしら?」
「それは失礼した。…ただ色を塗っているだけ。皮膚の色は普通だ」
「そう…私も失礼したわね。剣を納めてくれるかしら?」
青毛の馬に乗った少女−−曹操こと華琳の隣には春蘭を始めとした将軍達がいた。
それに気付き、和樹は素直に愛刀を鞘に納める。
「ありがとう。…何故、劉備軍の味方をしているのか、なんて事は聞かないわ。大方、予想がつく」
「でしょうな」
コートのポケットから取り出した煙草を銜え、火を点けた姿を見て、霞を除いた彼女達は内心、驚愕するが声と表情に出さないよう努める。
「…話は変わるけど。韓甲、貴方、私に仕える気はない?」
「残念ながら、傭兵は一度に複数の勢力と契約するのは御法度。遠慮申し上げる」
「そう…本当に残念ね…。“今回は見逃そう。次に戦う時まで力を蓄えておけ”…そう劉備へ伝えなさい」
「…確かに承った。行くぞ」
『はっ!!』
和樹は部下達に命令すると、再び華琳を見遣り−−互いの視線が空中で交わった。
指笛を吹いて愛馬を呼ぶと、彼は視線を外し、鐙に足を掛けて鞍へ跨がった。
「…張文遠」
「…なんや?」
馬上から彼は、いまだ正座している霞へ声を掛けると、彼女は緩々と視線を彼に合わせる。
「また、戦場で会おう。…行くぞ!!」
『応ッ!!』
黒馗の腹を蹴り、川上に沿って駆け出した和樹を追い掛け、部下達が追従する。
その瞬間−−長坂橋に仕掛けられたC4が爆発し、橋が崩れ落ちた。
その轟音が響き渡る中、霞の口が小さく開く−−
「また会おうな……戦場で」
元同僚なのに……コイツらは……。




