新年あけましておめでとうございます
ネタが少しばかり…。
新年一発目が本編ではなく申し訳ありません!!
あけましておめでとうございます。
ここに新年のお慶びを申し上げますと共に、皆々様の益々の御健勝を御祈りし、短いながらも新年の挨拶とさせて頂きます。
さて…新年早々にお送りするのは硝煙と血の匂いに……ではなく“普通”の、とある傭兵部隊の新年会の模様です。
あ〜そこからして“普通じゃない”って言わない。
では、どうぞ〜〜。
孫呉の首都:建業は新年の祝賀に沸いている。
その城下町−城に程近い地区は孫呉の官吏達の住居が軒を連ね、どの屋敷からも祝いの騒がしい声が響いていた。
その中でも一際“煩い”のは孫呉の将軍と傭兵部隊:黒狼隊の部隊長を兼ねている和樹の屋敷だ。
それもそのはず。
現在、彼の屋敷には新年の挨拶にきた相棒の将司と部下達、そして同僚の華雄が宴会をやっているのだ。
「ヒャッハハハハ−−♪」
「−−誰か姉御を止めろぉぉぉ!!」
「ってか誰だ、ラム酒なんか呑ませたのぉぉぉ!!?」
「知るかぁぁ−−って姉御!!どっから戦斧なんか取り出したんだ!!?」
「ヒャッハハハ♪きゃんこ−−わらひとひょうふらぁぁ♪」
−−約一名、羽目を外し過ぎているようだが、突発的な新年会は“それなり”に“和やか”に進行している。
乱痴気騒ぎの一歩手前の様相となってきた座敷には各々で持ち寄った料理と酒が並んでいるが、無事なのは極僅か。
9割程は既に宴会へ参加している連中の胃袋の中だ。
「いやぁ相棒。正月って良いモンだな♪」
「……そうか?」
上機嫌にラム(アルコール度数40)が注がれた盃を傾けているのは将司。
彼の問い掛けを受けつつ、チビっとラムを口に含むのは和樹だ。
二人とも上座に腰掛け、“何故か”紋付き羽織袴を身に纏っている。
家主の和樹などは普段、ボサボサの髪型をワックスか何かの整髪剤で整え、無精髭もすっきり剃っている。
この状態で少しばかり髭を生やしていたら“某・伝説の極道な人物”となってしまう。
「お待たせしました〜!!」
「料理の追加だぜ」
『烹炊長、哉坊、あざーす!!』
大皿に盛った料理を運んで来たのは黒狼隊補給・施設小隊長の少尉こと烹炊長、そして和樹の屋敷の使用人である徐哉だ。
二人は体格が違い過ぎるため小人と巨人が並んでいるとしか思えないが、そんな事は気にもとめず、飢えた狼共が追加の料理へ群がった。
「よお哉坊。隊長からお年玉は貰ったか?」
「おとし…なんですか?」
「お年玉だよ、お年玉。子供の特権で薄給の大人から無理矢理、金を奪えるんだぜ」
「え?…えぇ??」
「おいおい。古代中国にそんなシステムがある訳ねぇだろ。見ろよ、困惑してるぜ」
「え〜?でも、アジアなら何処でもあるだろ?」
「日本にもあんのか?」
「あぁ。俺なんか自衛隊に居た頃も上官から貰ってたぜ」
「ふ〜ん。黄少尉、黄少尉。中国でお年玉はなんてんですか?」
部下達数名が新年名物のお年玉について議論していると、近くに居た人民解放軍出身の砲兵小隊長の少尉に水を向けた。
「あぁ?えっと…圧歳銭だな、うん」
「…歳と祟って発音が一緒だったと思うんですが?」
「あぁ。だから、子供に金をやって一年の無病息災を願うのが中国の風習だな」
アジア諸国には日本でいうお年玉の風習が数多くある。
それらは民間風習で、新年に目上の者が目下の者へ贈り物をする事で一年の厄を祓うというのが元となっている。
その理屈でいけば、大人もお年玉を貰えるという事になる訳で−−−
「隊長!!」
「少佐!!」
「大尉!!」
「副長!!」
「副官!!」
10名近い部下達が一斉に正座をして、上座にいる和樹と将司へ向き直り真剣な表情をする。
それに首を傾げるのは和樹達だ。
「どうした?」
酒を飲み干し、盃を膳に戻した和樹が問い掛けると彼等は互いに顔を合わせて頷いて両手を差し出し−−
『お年玉ください!!!』
−−催促をした。
「「………」」
呆気に取られるのは和樹と将司。
ややあって二人は苦笑いとも取れない微笑を浮かべ、おもむろに立ち上がると懐へ手を差し込んだ。
「そういうと思ってたぜ、この金の亡者共が…」
「悪いな。あまり持ち合わせが無くて、これしかないんだ。許してくれ」
顔に浮かべるのは見惚れる程、穏やかな微笑。
ここに“素面”の女性がいたら間違いなく惚れてしまうだろうそれだ。
そして二人が懐から取り出したのは輝く−−
「「さぁ、遠慮なく受け取るが良い」」
シルバーフレームのデザートイーグルにベレッタM93Rだ。
「ちょっ−−えぇっ!!?」
「話聞いてました!!?」
催促した部下達が素晴らしい動きで後込みする姿は拍手を送りたくなるほどだ。
「相棒が言ったろ?“持ち合わせがない”って」
「済まんな。眉間に鉛玉をやるから許してくれ」
『すいやせんっしたぁぁぁ!!!』
催促一同の一糸乱れぬジャンピング土下座が眩しい。
「はははっジョークだぜ、ジョーク」
「あぁ。冗談だ」
『嘘だッ!!!』
どうやら“冗談”だったようで、二人は苦笑いしつつ、それぞれの愛銃を懐へ戻して元居た席に胡座をかいた。
「ムゥ〜〜……」
「華雄様、どうかしたんですか?」
そんな宴の雰囲気なぞ知らぬ様子で膨れっ面をするのは猛将にして良将と称される華雄将軍。
それに気付いた徐哉が彼女へ近付き尋ねるモノの華雄は何が不満なのか膨れっ面を直さない。
「…きゃんこ−が…」
「?…旦那様がどうか?」
「…きゃまってくりぇにゃい…」
どうやらスレンダーな銀髪美女は和樹と手合わせ出来ない事に、甚くご立腹らしい。
「なら、旦那様にもう一度、頼まれては…?」
「ふんっ。ど−せ、“忙しいんだ”とか言わりぇて終わりなのりゃ…。い−のりゃいーのりゃ、ひろりれぇ、かっれににょんでりゅもん…」
「あまり呑まれては身体に毒−−あぁっ、そんな一気に!!!」
「んっ…んっ…んっ…ぷはぁ!!」
景気よく徳利をラッパ飲みで空にした彼女の身体がぐらつき始めた。
「だっ大丈夫です−−わぷっ!!?」
『−−ッ!!?』
「う〜〜♪」
はたして酒にこのような作用があるのか、と考えてしまう状況が完成した。
顔がアルコールの摂取で真っ赤に紅潮した華雄が徐哉を抱きすくめてしまったのだ。
それに反応して、騒いでいた隊員達の視線が一気に徐哉へと注がれる。
その視線に込められているのは一抹の羨望と−−
「コロスコロスコロコロコロコロロロロ…!!」
「餓鬼のくせに餓鬼のくせに…餓鬼のくせにぃぃぃぃ!!」
「滅殺銃殺撲殺絞殺…殺殺殺殺殺殺殺殺!!!」
それ以上の殺意が視線に込められているのは明白だろう。
大人気ない、とはこのことだ。
「う〜♪じょしゃいはきゃわいいにゃ〜♪おにぇしゃんがにゃでにゃでしてやりゅのりゃ〜♪」
「ヴーヴー!!!」
七三に分けた徐哉の頭を華雄は激しくかつ優しく撫で回す。
徐哉の顔が彼女とは違う意味で真っ赤になっているのはお分かりになるだろう。
この乱痴気騒ぎ(という名の新年会)が毎年恒例になるとは……この時、誰も予想していなかった。
ネタ
“某・伝説的極道な人物”
→龍が如くの桐生さん。
“『嘘だッ!!』“
→ひぐらしの鉈女です。
去年は暗いニュース−−、宮城在住のブレイズとしては震災が一番大変でしたし、友人もひとり、津波で亡くなり、激動の一年でした。
でも今年こそは明るいニュースが飛び回る一年である事を願ってやみません。
そして……今年中には本作を完結させたい…!!