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恋姫†無双-外史の傭兵達-  作者: ブレイズ
第三部:徒然なる日々
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久しぶりの投稿……のクセして変な出来に自己嫌悪…orz





<−確認した。まずは迫撃砲と戦車による砲撃を加える。目標…敵前軍中央、敵の度肝を抜いてやれ>


その命令が各隊員の耳にトランシーバーを中継して届いた。


命令と共に戦車の砲塔が旋回し、その主砲が敵軍へ向けられる。


前軍と中軍のほぼ中間には1m程の土塁が築かれ、そこには砲兵小隊長の少尉が観測に必須のコリメーターを覗き込みつつ和樹へ返答している。


<一次攻撃始め。用意……>


「砲撃用意、半装填!!」


観測と射撃指揮を一括して担当する少尉が声を張り上げると、隊員達は8門のL16 81mm迫撃砲それぞれの砲口へ81mm榴弾を半分まで装填して待機する。


<……撃ェ!!>


「撃ェッ!!」


遂に開戦。


号令一下、隊員達が素早く砲弾を手から離すと、撃針で叩かれた榴弾が撃ち上げられた。


間髪入れず、前軍右翼側後方にいた戦車も発砲。


戦車砲弾が自軍の兵士の頭上を飛び越え、敵軍中央に寸分の狂いなく着弾した。


発砲したのは榴弾のようだ。


砲声の轟音が掻き消されるかのような悲鳴と怒号が敵軍から響く。


それを嘲笑うかの如く、戦車砲が再び火を噴いた。


「…3…2…弾着、今!!」


少尉の計算通り、着弾したのは敵軍中央。


「修正必要なし、破砕射撃だ!!ボカスカ撃ち込め!!」


『応ッ!!』


「派手なプレゼントだ、しっかり受け取りやがれ!!」


「クリスマスにゃあ早いけどな!!」


サンタクロースが届けるプレゼントにしては随分と物騒である。


ちなみに破砕射撃とは少尉が略称しているものであって、正確に言えば“攻撃準備破砕射撃”を指す。(これは阻止射撃と呼ばれるモノのひとつであり、第一線−つまりは最前線に集結中の戦闘準備が整っていない敵部隊へ加える先制攻撃の意味合いがある)


砲弾を目標物へ命中させるには、当然ながら闇雲に撃つのではなく正確な計算が必要だ。


目標と発砲地点の距離を測定し、一定の長さ、および角度から三角関数が相似比で割り出され、次に砲弾の初速−この場合は砲口初速:225m/s−が判っているため放物運動の法則を用い、着弾地点を弾き出す。


これらを観測班は計算し、着弾に適切な方位と仰角を射撃指揮所へ伝えるのが一般的な砲兵部隊なのだが…この部隊においては前述の通り、小隊長がそれらの役目を担っている。


もっとも全小隊員が同様の事を出来る教養はある。


しかし、いくら計算が完璧であったとしても、最初−つまりは試射で目標へ命中というのは難しい。


遠距離からの精密射撃をする場合は様々な要因−気温、高度差(標高差)、湿度、コリオリ等々の現象を考慮しなければならない。


これらの計算に長けているのは狙撃兵なのだが、いずれにせよ職人技である事に違いはない。



なにがあったか判らないのは敵軍−山越だ。


突然、軍勢の中で起きる爆発に死傷者の数々。


混乱が起きるのも無理はない。


着弾した榴弾が炸裂し、大小の砲弾の破片と衝撃で飛び散る石礫が兵士に襲い掛かり、身体を直撃、あるいは切り裂いている。



<……撃ち方止め>


「撃ち方止め、撃ち方止め!!」


唐突な和樹からの命令に間髪入れず反応した少尉が土塁の上より砲兵小隊へ指示を飛ばす。


それと呼応して戦車からの砲撃も沈黙し、戦場には発砲音の余韻と敵軍からの叫び声、怒号が残る。


<二次攻撃用意。砲兵小隊は偵察班よりの指示に従え。以後は砲撃の優先順位を偵察班とする。戦車は待機。ヘリは暖気運転開始、指示を待て>


各指揮官から無線を通して、了解が彼に伝えられると少尉はチャンネルを変更し、偵察班のそれへ合わせる。


「砲兵:黄少尉より偵察班へ応答を求む」


<…こちら偵察。こっからでもドでかい花火が見えました。流石です>


「どうも。…これよりそちらの要請に応える。指示を願う」


<了解。…目標はポイントαの敵陣。座標を伝える−−>


偵察班から伝えられる目標物−敵陣の座標を素早く少尉はメモに走り書きしつつ命中に適切な方位と仰角を計算する。


「−了解。待避せよ」


<ご心配なく。既に待避してますんで遠慮なくどうぞ>


「判った。目標変更、座標ポイントα!!方位060、仰角57!!」


「60の57−−了解!!」


「半装填しろ!!」


指揮下の各要員が照準器を覗いて射撃諸元を確認しつつ指示を出し、L16 81mm 迫撃砲の仰角と方位を変更すると射手は砲弾を手に取って砲口へ差し込んだまま発砲の命令まで待機する。


「撃ェッ!!」


『撃ェ!!』


迫撃砲の後方にいる8人の各分隊長が少尉の命令と同時に指示を下す。


その瞬間、射手の手から離れた砲弾が砲身内部へ滑り落ち、雷菅が撃針で叩かれ、81mm砲弾が独特の風切り音と共に撃ち上げられた。


図面上の目標物までの直線距離は約700m。


L16 81mm 迫撃砲の有効射程は100m〜5650m。


余裕だと思うだろうが、迫撃砲は精密射撃には向かないのが欠点である。


精々、至近弾が関の山だ。


「…弾着…今!!」


計算した着弾までの時間通り、山肌の一画から天へと突き上がる砂煙と爆煙が巻き起こった。


<−命中せず!!方位そのまま、上へ10に修正!!>


試射では命中弾どころか至近弾ともいかなかったようだ。


偵察班から送られた修正値を元に計算し直して、改めた射撃諸元を少尉は再び声を張り上げて小隊へ伝えると発砲命令を下した。


「撃ェッ!!」


『撃ェッ!!』


今度こそ当てる、と彼は自ら弾き出した射撃諸元を信じ、目標へ双眼鏡を向けつつ着弾までのカウントを始める。


「3…2…弾着、今!!」


彼が覗き込む双眼鏡に映ったのは8本の砂煙や爆煙。


<−至近弾、効果認む!!繰り返す、効果を認む!!引き続き、砲撃を!!>


「了解。諸元そのまま!ボカスカ撃ち込め、野郎共!!」


「応さ!!」


「間断なく撃ち上げろ!!援軍を壊滅させるんだ!!」


砲弾を撃ち上げると、直ぐさま射手が砲弾を装填し再び撃ち上げるが続く。


砲兵小隊による主戦場の敵軍への砲撃は最初のそれだけで良い。


あれは混乱を生じさせ、士気と戦意を削ぐのが目的のそれだ。


主戦場への本格的な攻勢は戦車とヘリ、友軍弓兵部隊による遠距離射撃、そして戦の決は和樹達を始めとした前軍の突撃。


これが彼等が目論む、この戦のシナリオである。




「……まさか、これだけ離れているのに一方的な攻撃を加えられるとは……」


敵軍が陣地を築いているという山へ砲弾が次々と命中している光景を本陣から目の当たりにし、総大将の蓮華は誰に言うでもなく呟いた。


「…和樹さんや少尉さんも攻撃は可能だと仰ってましたが…実際に見ると圧倒されますねぇ…」


「…あぁ」


「そうですか?」


「いや…お主達にとっては普通かもしれぬが…なぁ?」


「蓮華様ぁ、そこで私に振らないで下さいよぉ…」


本陣にいるのは蓮華と軍師である穏、そして連絡係の黒狼隊隊員の兵長だ。


彼は、いつ通信が入っても良いようトランシーバーのチャンネルを常に開いている為、嵐の如き部隊内の通信が耳に飛び込んでいる。


<前軍右翼より少佐へ。いつ頃、突撃しますか?>


<しばらく待て>


<あ〜左翼より隊長へ。姉御が早く突撃させろと煩いん−−あっいや姉御、なんでもないです!!>


<敵軍右翼が僅かに前進!!>


<隊長より達する。前軍における黒狼隊各員は敵軍への射撃用意と指揮下の兵を纏め、俺の号令を待て。戦車、いつでも前進できるよう準備。ヘリも同じく待機せよ>


矢継ぎ早の通信の応酬を聞いた兵長が戦場の様子を固唾を呑んで見守る蓮華へ向き直る。


「孫権殿。敵前軍の右翼が動き出したようです」


「なっ本当か!?」


「…何かしらの策がある、という訳ではないようですねぇ。痺れを切らしたか、敵将の独断、といった所でしょうか」


「いずれにせよ、前軍は対応を始めていますので御安心を」


そんなやり取りをしていると本陣へ駆け込んで来る兵士の姿が。


「中軍よりの伝令です!!敵前軍右翼が動きましてございます!!!」


「あっそっそうか判った。下がって良い」


「はっ!!!」


必要な事を報告した伝令兵は来た道を走り去って行く。


その後ろ姿を見ている二人は−−なんともいえない表情をしていた。


「…あの者には悪いかも知れんが…」


「…もう知ってるんですよねぇ…」


トランシーバーの性能の良さを改めて思い知った彼女達は、少しだけ兵長を見詰めると再び戦場へ眼を移す。


<一曹より和樹さんへ。そろそろ始めませんか?>


<メッセージを聞いたようだな、一曹?>


<あははは♪……冗談ですよね?>


<…………>


<えっちょっ!!?>


<少佐より大尉。および左翼の誰かは華雄へ伝えろ。暴れるぞ、前へ出ろ>


<こちら大尉。あいよ〜、一丁やりますか>


<了解、伝えます>


<ちょっ和樹さ−−ん!!?>


一連の通信を聞いた兵長は僅かにほくそ笑む。


噂に聞いた“アレ”が始まるのだ。


「隊長と副長、そして華雄の姉御が動くようです」


「和樹達が?…いよいよ始まるか」


「…あ〜いや、突撃という訳ではありませんよ?」


「……はい?」


「突撃ではない?…では、なんだというのだ?」


二人の疑問に答えるべく彼はゆっくりと口を開いた−−−









<あ〜なんか軍歌でも唄いたい気分だぜ。歩兵…まぁ俺達、騎乗してんだけど>


「…どうでも良い。とにかく、さっさと終わらせて、さっさと帰るぞ」


<あっれ〜?もしかして少佐殿、恥ずかしいのでありますか〜?>


「…あぁ。なにか文句でも?」


通信を交わしながら前軍中央と右翼から、それぞれの愛馬に跨がり進み出るのは和樹と将司だ。


それにやや遅れ、左翼から華雄が進み出てくる。


<しっかし…引っ掛かるかねぇ…?>


「判らん。だが、挑発に引っ掛かるか否かに関係なく、作戦方針は変わらない事だけ覚えてろ」


<はい了解。…で、誰が口上を?>


「…俺は嫌だぞ」


<え〜!?お前の嫌味と皮肉が満載の口上なら絶対、引っ掛かるぜ!!?>


「…お前も大概だな」


軽口をトランシーバー越しに叩き合う二人と左翼の華雄が前軍の前−敵軍の目と鼻の先に到達した瞬間、彼等はそれぞれの武器を抜き、それらを肩に預ける。


和樹と将司は背中に吊った鞘から大太刀を、華雄は戦斧である金剛爆斧をだ。


敵軍はいまだ突然の砲撃による混乱の渦中にあるのか、攻撃命令が出されず、将兵は右往左往としている。


「−で、正味の話だが…誰が一騎討ちの口上をする?」


<是非とも少佐殿にお願いしたいであります♪>


彼等が前へ進み出たのは一騎討ちをするため。


本格的な戦闘に入る前に駄目押しながら戦意と士気を上げる為である。


それをブリーフィングで聞いた一曹は和樹へ一騎討ちに必要な口上の詳細を書いたメモを渡した訳だ。


ちなみに彼は時代劇や大河ドラマの類いが大好きで仕方ないらしい。


「だから俺は嫌だと言ってるだろう…」


<いやいや……って、こんな事してたら敵に狙い撃ちされるぜ。さっさと言え−−>


「−山越の将へ告げる!!貴様等が手に持つ剣は飾りか!!?この臆病者め!!我こそはと思わん者は居らんのか!!?」


<……あ〜問題なくなったな>


「…あぁ」


どうやら華雄は打ち合わせにあった通りに事を運ばない二人に業を煮やし、自ら一騎討ちの口上を行う事にしたようだ。


…実際の所は自分がやりたいだけの可能性大だが。


「我が名は孫策軍将軍:華雄!!我こそと思わん者は、この首取って手柄とせよ!!誰ぞ居らぬか!!?」


拡声器も使わないでよくも、ここまで声を張れる、と二人は感心してしまう。


<…ってか、華雄の奴、客将じゃなかったのか?>


「あぁ。知らなかったのか?」


<全然。ん?…じゃあ俺達の立場って、どうなるんだ?>


「…微妙だな。仕官したが、孫呉とは一定の距離を保ってる。正規の武将という訳ではないが、客将という訳でもない」


<ホント微妙だな。まぁ傭兵部隊だし、そ−ゆ−のは慣れてっから良いか>


声高と自己紹介をした華雄とは違い、孫呉において和樹達の立ち位置は微妙なモノがある。


仕官はした。しかし正規の武将としては組み入れられていない、というのが現状である。


傭兵だから仕方ない、というのもあるが、後々に面倒な事に発展しそうな雰囲気だ。


余談だが、和樹の階級である“少佐”。


隊員達は、そう呼称しているが、正確には和樹の階級は“少佐”ではない。


正しく明記すれば“特務少佐”。


これは以前に彼が参戦した某国の紛争で任官した階級だが、ひとつ問題が発生した。


和樹が国軍の軍人ではない、ということだ。


それを解消するため、“特務少佐”という階級に就いた訳だが、権限は少佐と同様だった為、指揮や部隊編制等に問題は無かった。


つまり、それと同じ弊害とも呼べるそれが未だ彼等に付きまとっているという事だ。



挑発とも言える一騎討ちの口上に触発され、騎乗した一人の武将が敵軍から進み出てきた。


「名高い華雄将軍か!!しかし風の噂では董卓軍は連合に敗北したと聞く!!先代の孫堅に敗北し、娘の孫策に膝を折るとはな!!どうやら貴様には武人の矜持がないと見受ける!!!ならば貴様の腕も高が知れるというもの!!!」


「貴様!!我が武勇を愚弄するか!!!」


「前へ進み出たは良いが、女に一騎討ちを任せ、高みの見物をしている、そこの者共も貴様と同様に腕前は大した事ないのであろう!!?」


どうやら進み出た敵将は彼女よりも舌が良く回るらしい。


その堂々とも言える態度に敵軍は息の根を吹き返してきた。


「一騎討ち、大いに結構!!されども女に任せるというのは感心せぬ!!股座に付いているモノはお飾りか!!?」


口上にしては下品だが、将兵の戦意を高めるには充分だったらしく、敵軍からは笑い声が響き始めた。


<あ〜御指名みたいだぜ?どうするんだ?>


「…指名料は高いって事を思い知らせれば良いだけだろ」


<…始まったよ。出るのか?>


「あぁ」


トランシーバーのチャンネルを切ると和樹は愛馬の腹を蹴り、前へ進み出る。


「華雄将軍!!その者は私に任せて頂きたい!!貴女ほどの武人が出る程の者ではないと思うが、如何か!!?」


「フッ…仕方ないな。応ッ!!ならば貴殿に任せるとしよう!!!」


僅かに微笑んだ華雄は、和樹へそう返すと愛馬の手綱を操り、素直に引き下がった。


「出てきおったか!!尊名を頂きたいが如何か!!?」


「我が名は韓狼牙!!先程、そちらへ攻撃を加えた部隊の長である!!」


「ッ!?…摩訶不思議な爆発か!!?」


「如何にも」


「手の届かぬ距離から一方的な攻撃しか出来ぬと見える!!やはり、腕も知れるというもの!!」


「…ハァ…疲れる。…御託は良い。さっさと掛かって来い。さっさと逝かせてやる」


「きっ貴様ぁぁ!!!」


いかにも、やる気のない彼の態度に敵将が逆上してしまうのも無理はない。


もっとも“殺る気”は充分にあるのだが。


敵将が槍を構え、馬の腹を蹴り、常歩から速歩へ、そして駈歩から襲歩へと一気に駆け出した。


和樹も黒馗の腹を蹴り、一気に敵将目掛け駆け出し、肩へ預けた大太刀を握る手に力を込める。


そして、互いの距離が縮まり、ついに携えた武器の攻撃範囲に入った途端、敵将の槍が突き出された。


「冥土の土産に良く聞け!!我が名は−−−」


名乗ろうとした敵将の口上が途切れたかと思うと、宙に愛馬の首と共に彼のそれと槍の穂先が舞っていた。


飛んだ敵将の首を上手く大太刀の切っ先に突き刺すと手綱を操って愛馬を旋回させ、友軍の前線へ辿り着いた瞬間、それを空へ高々と突き上げる


「敵将、韓狼牙が討ち取った!!」


その宣言に沸き立つのは友軍将兵だ。


槍、剣、弓を天へ突き上げ、雄叫びを上げる将兵を一瞥した彼は、突き刺した敵将の首を地面へ投げ捨て、大太刀を肩に再び預ける。


<見てましたよ隊長!!マジでカッコ良かった!!>


<左翼、二等軍曹より少佐へ。これからの戦闘では毎回、お願いします>


<二等軍曹に一票。毎回、お願いしま〜す♪>


<こちらも賛成です>


「誰がやるか。これっきりだ馬鹿野郎共」


溜め息と共に声帯振動型マイクを押さえつつ呟く和樹は、次いで指揮をするため更に通達する。


「これより総攻撃を開始する。戦車、ヘリ、待たせて済まん。進撃開始だ」


<戦車長、了解!!蹴散らしてやりまさぁ!!>


<01も同じく。攻撃目標は敵前軍。ある程度の損害を与えた後は敵軍全体へ攻撃を加える。02、我に続け>


<了解、01に続く。殺っちまいましょう>


「各員へ。戦車の進路を空けるように指揮下の兵へ伝えよ。弓兵の一斉射の後、突撃する。備えろ」


次々と了解の返答が彼のイヤホンへ飛び込んでくる。


不意に、後方から轟くヘリのローター音と戦車のエンジン音が大きくなってきた。


準備は整った。


それを確認した和樹は位置に戻った将司と華雄を見遣った後、指揮下部隊へ矢を放つよう命ずる。


瞬間、空の青を塗り潰すように飛翔する矢の驟雨が敵軍へ降り注いだ。


続けて射るよう命令していると、前軍中央に並み居る兵士達を掻き分けて戦車が顔を出す。


<こちら戦車長、位置につきました>


「了解。各員へ通達する。突撃の際、我が隊と華雄隊の騎兵以外は馬から降りるよう伝えろ。混乱を避けたい」


<了解。まぁ砲声聞いたら敵のタマも縮み上がると思いますがね>


「同感だ」


迫撃砲による陣地への砲撃は続行しており、爆音が原因で敵軍将兵の士気と戦意は下がる一方だ。


加えて先程の一騎討ちの結果を鑑みれば、それらは地を這う虫の如くになっているだろう。


機は熟した。


そう判断した和樹は肩に預けた大太刀の位置を少し直し、士気と戦意が満ちた友軍へ指示を下す。


「−−突撃!!!」








<軍歌でも唄いたい気分だぜ。歩兵……まぁ騎乗してんだけど>


“歩兵の本領”です。




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