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恋姫†無双-外史の傭兵達-  作者: ブレイズ
第一部:乱世と反董卓連合
2/145

01


原作キャラと遭遇。






「…将司。そっちは終わったか?」


「もうちょい…って、お前…何処まで掘るつもりだ?」


「限界まで」


「なんの限界!?…まぁ良いや。先に休んでるぞ」


そういって親友兼相棒兼副官は鍬を放り出して土手に腰掛けた。


それを一瞥すると、俺はまた作業に戻る。




この世界−外史とやらに送られて早いモンで一ヶ月ほどが経った。


俺達120人は山間部の林に倒れていたそうだ。


そうだ、というのは…後になってから伝え聞いただけで目が醒めた時は現在、駐留しているこの村で看護されていた。


…よくもまぁ得体の知れない集団を保護したと思う。



人が良いのか、それとも不用心なのか…。


いずれにせよ、俺達の状況を鑑みるにありがたい事だ。


ここが何処だか判らないのに行動するのは危険極まりない。



俺達の事は流れの傭兵団という事にしておいた。


旅の途中で食糧不足に陥り倒れてしまったという苦しい説明だったが俺達を看護してくれた村人達は疑う事を知らないのか納得。


期間は未定だが、その内、何か目的が見付かれば村を出て行こうと思っている。



しかし…あの時に出会った神とやらは、この世界を“外史”と言っていた。


そしてパラレルワールドとも。


眉唾モノであるが…納得せざるをえない。


なにせ…装備やらがそのままだったので試しに手持ちのGPSで確認してみた。


結果は…衛星からの情報が受信できない。


次いで無線機でも試してみたが…どのチャンネルを開いても、軍用回線どころかラジオのチャンネルも受信せず。


加えて、この村の衣食住。


電化製品が全く見当たらないのだ。


別段、珍しくもない。


紛争地域でも電化製品のない集落はあった。


だがそれでも…懐中電灯一個も見当たらないってのは異常だ。


そして村人達の格好は…昨今ではテレビの画面越しでしかお目に掛かれない麻で編まれたと思われる大陸風の衣装と名前は明らかに中国風だということ…しかも字まである。



まさか、と思っていると不意に鳴りだした見知らぬ携帯トランシーバー。


それの回線を開いて応答してみると…相手は、あの神だった。


その話によれば『俺達の知る三国志に似た世界』だそうだ。


三国志−中国の後漢末期から三国時代にかけて群雄割拠していた時代の興亡史の事だ。


神の話を鵜呑みにするなら俺達は1800年ほど昔に来てしまった事になる。


それを部下達に話したら…特に中国出身の奴らは、かなり大喜びしていたな。


曰く『あの関羽や張飛に会えるぜぇぇ!!』


…お前ら、状況が判ってんのかって話だ。



加えて神からの話によれば『史実とは“微妙”に食い違う所もあるが、それは外史だから(キリッ』


…何を真面目に言ってやがんのか。



ともあれ俺達は、この世界での新しい生活に順応している。


だが俺達は傭兵。


身を守る武器が無くては先が不安なのだが、それは大丈夫だとか。


あのトランシーバーを通じて欲しい物があったら通信しろとのこと。


サービスが良い。


だが、そんな事をしなくても別に危険ではないらしい。


何故か。


…妙に身体の調子が良い…いや良すぎる。


身体能力の向上は全員がそうらしい。


この外史とやらへ送る際に神が“少し”弄ったのだとか。


…何処が少しだ。


俺に至っては100kgはあるかという岩を片手で持ち上げられたし、村人に同行した狩猟では熊を素手で仕留められたぞ。


…力加減を間違えたら大変な事になるため、慣れるのに苦労したのは秘密だ。




そんな事があって冒頭に戻る訳だが俺達二人は現在、畑仕事をしている、厳密には耕しているのだが。


前世の経験で体力には自信があったが、こっちに来たら更に拍車が掛かっているため疲れる事がない。


先に鍬などが逝かれないか不安だ。


…最初は力加減が出来なくて二、三本をへし折ってしまったが。


傭兵が農作業なんてお笑い草だろうが、塹壕を掘るのに比べたら軽いモンだ。


「あ〜韓おじちゃんだ!」


「呂猛おじちゃんもいる〜!」


鍬を止め、声がした方向に視線を向けると男女五人の子供達がこっちに駆けてくる。


それに反応してか相棒も俺も苦笑しながら煙草を携帯灰皿に放り込む。


「オイオイ、おじちゃんは止めてくれ。まだ若いんだから」


「そうだぞ」


若い男には禁句の単語を口にした子供達をたしなめるが彼等はどこ吹く風で、遊んでくれ、とねだってくる。


どうする、と相棒が視線を向けてくる。


まぁ今日の分は一段落…どころか、かなり進んだから問題ないか。


足元にじゃれついてくる子供二人を抱え上げると歓声が上がる。


そのまま左右に一人ずつ肩車してやり、鍬と土手に置いておいた装備を掴むと村へ向けて歩き出した。



さっきの子供達が呼んだ名前には正直いって、まだ慣れていない。


この世界に順応するに当たって俺達が最初にしたのは名前を変えること。


まぁ中国出身の連中はさほど問題無かったが。


俺のこの世界での名前は、姓は(かん)、名は(こう)、字は狼牙(ろうが)とした。


別に名前に対して執着がある訳でもないし抵抗はなかった。


そして相棒である将司の名前は、姓は(りょ)、名は(もう)、字は百鬼(ひゃっき)


姓は、あの呂布にあやかったそうだが…字はなんだいったい。


加えて、この世界には真名と呼ばれる物がある。


これが、またやっかいで、親しい人間や信頼する人間にしか教えない特別な名前だとか。


しかも本人の許しを得ず勝手に呼んでしまうと斬り殺されても文句は言えないそうだ…。


…なんだってそんなモンがあるのか不思議でならない。


事前に教えてくれた神に感謝感謝。


その真名は俺達の本名である和樹と将司で決定した。




いまだ慣れない所もあるが、それでもなんとか俺達はやっている。



この村での俺達の役割は主に力仕事だ。


働き手となる筈の若い男が村には少ない。


…戦に駆り出されたからだそうだ。


同情はするがそれだけ。


俺達には関係ない。


だが…助けてもらった義理がある。


それは果たさなければならない。


そして力仕事には……。



突然、蒼穹に彩煙弾が一発上がった。


色は赤。


…定期便が来たか。


肩車をしていた子供達を下ろす。


「悪いが、遊ぶのは終わりだ」


「早く家に戻ってお母さんと一緒に居てやれ」


「うっうん判った!」


雰囲気で察したのだろう。


子供は案外、鋭いからな。


俺達の言葉に頷いた子供達が各々の家に戻って行く。


それを見遣りながら神との交信用とは別のトランシーバーを腰の弾帯から取り、チャンネルを開いた。


「定期便か?」


<えぇ。また来やがりましたよ、いつもの連中です>


「了解。第一小隊へ戦闘用意を通達しろ」


<了解しました、伝えます>


通信を終了し、トランシーバーを元の位置へ。


相棒は既に用意を済ませており、戦闘服の背中にAK-74を預け、腰には拳銃と日本刀を帯びている。


かくいう俺も同じだが、違うのは帯びている刀が二本というところ。


ガキの頃から古流剣術を習っておいて良かったな。


何処まで通用するかは別にして。


「さて行くか」


「応」


煙草を咥えて火を点けながら駆け出した。



この村での力仕事の部類に入る、お仕事をする為に。










「…いつも思うんだがよ」


「あん?」


「拍子抜けだ」


「まぁ賛同するが」


これなら一個小隊(この部隊での人数は約30名)を投入するまでもなかったな。


吸い終わった煙草を携帯灰皿に放り込みながら新しいそれを咥えて火を点ける。


死体に腰掛けつつだ。


今日の定期便は約100名。

結果は敵の全滅と。


戦場と言うのも憚れるが…戦場になったのは山間部にあるあの村から山を下り、開けた場所にある平野。


今回は、テストとして頭に黄色い頭巾を被った敵には実験台になってもらった。


実験とは白兵戦において何処まで通用するか。


アウトレンジからの攻撃ならいくらでも出来る。


だが…やたれめったらそれをやってしまうと後々になって面倒になる恐れがある。


だからこうして銃器に頼らず、飛び道具はロングボウ、主武装は各々が体得している武術に関わる武器にした。


小銃を持って来たのは保険の為だ。


まぁ結局の所、使わなかったが。



「隊長、生き残りが居ました」


「ん?」


視線を向けると何人かの生き残りが部下に対して懇願していた。


「たっ頼む見逃してくれ!!」


「もうこんな事はしねぇ!村に帰らせてくれ!!」


死体から立ち上がり、懇願している敵に近付いて行く。


「コイツらか…」


「あっアンタが隊長さんか!?」


「頼むから助けてくれ!助けてくれたら何だってする」


「なんだったら仕官の話をしてやっても良い!!」


ほぉう。


「そいつは魅力的だな」


「そうだろ!だから頼む見逃してくれ」


「ふぅむ…」


そうだな……。


「判った。見逃してやる」


「本当か!?良かった俺達だって好きで人を殺したり村を襲ったりしてる訳じゃねぇんだ!!」


「そりゃそうか。好きで人を殺す奴はいないからな」


「じゃあ…」


「早く行け」


「ありがてぇ!この恩は必ず!!」


必ず、ねぇ。


その台詞に微笑で答えると生き残った奴らの顔が綻んだ。









「嘘だ」


腰の刀を抜刀し一人の首をはねた。


「アッアァァア!!?」


「おっオイ助けてくれるんじゃ!?」


「悪いな。最近、物忘れが酷くて」


「テメェェェ!!」


「始末しろ」


言い捨てると、部下達が生き残った敵に刃を突き立て命を奪った。


「他に生き残りがいたら構わん、殺せ」


『はっ!!』


命令に頷く部下達を見遣りながら紫煙を吐き出した。


やれやれ…村人には見せられない光景だな。


普段は温厚な奴らが戦闘になったら文字通り人が変わる。


まぁそれが傭兵なんだが。


「ん…隊長、北より接近する集団を視認!!」


双眼鏡で彼方を見張っていた部下が声を張り上げた。


北に視線を向けると…砂塵が舞っている。


…かなりの数だな。


「戦闘用意。向こうに戦闘の意思が無ければ攻撃はするな」


部下達がロングボウに矢をつがえ俺の号令を待っている。


やがて件の集団が目に見える距離まで近付くと騎馬で先行していた人物が声を張り上げた。


旗は……“華”。


「私は董卓様に仕える都尉の華雄だ!武器を収めろ、こちらに戦闘の意思はない!!」


華雄…確か、董卓軍の武将で最期は陽人の戦いで戦死し、孫堅の手で梟首にされる。


今まで始末してきた敵は…おそらくは黄巾党。


ここまでは史実通りだな…。


ここまでは…。


華雄と名乗った人物は銀髪のセミロングにスラリとした身体。


そして胸は……膨らんでいる。


結論…女性。


『なにぃぃぃ、この美人がぁぁぁ!?』


…ウチの連中はホントによくハモるな…。




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