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恋姫†無双-外史の傭兵達-  作者: ブレイズ
第二部:契約へ
19/145

17



イェーーイ、ご都合主義が満載だぁぁぁ!!



…投稿が遅くなり申し訳ありません。





長江を渡った俺達は、行軍の末に大きい街へと到着した。


人数内訳は俺を含めた黒狼隊121名、華雄隊103名。


落伍者が出なかったのは僥倖と言うべきか、それとも流石か…。


…まぁ良い。


街へ入る際は軽く変装…というよりは外套やコートを着て戦闘服を隠し、警備兵を騙して入ったのだ。


流れの傭兵集団という触れ込みの為、警戒されると思ったが…案外すんなり。


…この世界、傭兵ってはあちこちに居るモノなのか?



馬達を預けると、それなりに並んでいる部下達に向き直る。


「現刻より明朝0400まで自由行動とする。集合は0500だ。点呼を取り次第、この街を出発する」


「なお、目立った行動や軽率な行動は慎むように。…つまり…面倒を起こすんじゃねぇぞ」


「ゴホン…各自、短い時間だが行軍の疲れを癒してほしい。では…解散」


一斉に敬礼した部下達に返礼した後、彼等は我先に駆け出した。


『ウォォ、酒ェェェ!!!』


『娼館&女ァァァ!!!』


土煙を舞い上げながら走り去って行く部下達の姿が見えなくなると、煙草を取り出して火を点けた。


「なっなぁ…大丈夫なのか?」


いつの間に近くに来たのか華雄が問い掛けてくる。


彼女の部下達も既に自由行動に入ったらしく視界に入る人数は疎らだ。


「あぁ。大丈夫大丈夫。顔はアレな連中ばっかだけど人並みの自制心とかは持ち合わせているからな」


「面倒事は起こさないだろ」


「違う!!」


何がどう違うのか判らないが、華雄は言葉を荒げた。


「ここは揚州の建業だぞ!?そして我々は…認めたくないが敗残兵の集まりだ。そんな事がバレたら大変な事になるだろうが!!」


…ならば声を大にして叫ばないでほしい。


しかし……


「…別にバレても大丈夫なんじゃねぇか?」


「…確かに」


「はぁ!?」


「考えてもみろ。俺達は先の戦で孫呉には恩を売っておいたんだ」


「というか…単にお前が孫呉領内に来るのが嫌なだけなんじゃないか?」


「グッ…」


図星かよ。


「安心しろ。建業は首都じゃねぇからな」


「…なにを言ってるんだ?」


この時期は、まだ建業に首都は置かれていない筈だろうと思っていたのだが…華雄の表情を察するに、どうやら予想を裏切られたらしい。


「…まさか」


「建業には孫策の居城があるんだぞ!?」


指差された方角を見ると…確かに、洛陽城まではいかないがデカい城があった。


…ご丁寧に孫の旗まで翻っている。


予想が外れてしまった…。


「…どうする?」


「…まぁ大丈夫だろう。流石に孫策も城下に出てくるなんて事は有り得ないだろうしな」


「…確かに」


「うむ」


君主が城下に来るなんてそうそうある訳がない。


コートの下にある背負った小銃のスリングベルトを担ぎ直す。


「俺達も行くか」


「そうだな、集合まで20時間はある。まず飯にでもするか」


「あぁ。…ところで、その腕輪はなんだ?」


「「腕時計」」


「なんだそれは…って置いて行くな!!」










一軒の飯屋の席に座りメニューを読んでいると店員が駆け寄って来た。


「いらっしゃいませ、何にしますか?」


「私はラーメン、大盛りだ」


「…俺はチャーシュー麺の大盛り」


「俺もコイツと同じで麺は大盛りのチャーシュー多め」


華雄、相棒、俺の順番で注文すると店員が礼をして厨房に戻って行った。


「…もう突っ込まねぇぞ」


「…俺も、だ」


「何がだ?」


「「なんでラーメンやら麻婆豆腐やら青椒肉絲があるなんて事をだ」」


ずっと不思議だったが…相棒の言う通り、もう突っ込まないぞ。


確かに中華だが…時代は違うだろうに…。


「お待たせしました〜」


「「早ッ!?」」


「美味い、早い、安いが売りなので」


…何処の牛丼チェーン店だ。


箸を取って食べ始めると相棒が問い掛けてくる。


「ズルル…これからどうする?」


「…さぁて建業…ズルル…出発したら…ハフ…今度は西にでも行くか」


「見聞でも広めるつもりか?」


「まさか。戦乱ある所に傭兵あり。俺達の能力を出し惜しみせず戦える場所を探すだけだ」


「ズズッ…。本音は?」


「…本音…って、チャーシューを返せ!」


「俺とお前の仲だろ。何年、付き合ってると思ってるんだ?」


おそらく20年以上は付き合ってるだろうな。


…だが、それとこれとは話が違う。


相棒の口へと運ばれて行く俺のチャーシューを箸で摘むと、向こうも負けじとそれを引っ張る。


「…相棒、俺とお前の仲だろ…!?」


「なら…大人しくチャーシューを返せ、アホたれ…!!」


「このチャーシューは俺に食ってもらいたいんだってよ…!!」


綱引きの如く、自分の陣地へ(口の中へ)チャーシューを引っ張り合っている姿は、部下達には見せられないだろう。


「…メンマをやるから我慢しろ…!!」


「…ふん、タケノコなんぞ食って腹が膨れるか…食うなら肉だ肉…!!」


何を寝ぼけた事をぬかしやがる…!!


「お前…肉ばっかり食ってたら太って戦闘服が着れなくなるぞ…!!」


「安心しろ…体脂肪率は4%以下だからよ…!!」


「俺も同じだボケ…!!御託は良いからさっさと寄越せ…!!」


なんて往生際の悪い奴なんだ。


「…お前達、恥ずかしくないのか…?」


「「ない!!」」


「そっそうか…」


当然だろうに。


食卓とは戦場。ノロマに飯なし。


先に箸をつけ、それを食した者が勝者なのだ。


「…よぉ相棒」


「なんだ、いやしんぼ野郎」


「このままじゃ埒があかねぇ。ここは公平に…ジャンケンで」


「…乗った」


本来なら腕相撲が妥当なのだろうが、ヘタに力を加えてしまうとこの円卓がへし折れてしまう。


いったんチャーシューを小皿に置いて、相棒を睨み付けると向こうもこちらを睨み、微動だにしない。


ここからは真剣勝負だ。


「どちらが勝っても遺恨なし…」


「ただ全力を…尽くすのみ…」


よし……行くぞ。


「「最初はグ−!!ジャンケン…」」


これだ!!


互いの手が突き出され、勝敗が決ま−−


「大変だぁぁぁぁ!!」


決まらなかった。


突然、店の外から絶叫とも悲鳴ともつかない声が響き、それが原因でジャンケンがうやむやになってしまう。


「どうしたんだ!?」


「向こうの爺さんと婆さんが!!」


「落ち着けって!!」


「黄巾党の残党が二人を人質にしやがったんだ!!」


おいおい……そんな事で勝負の決着に水を差しやがったのか。


「…半分にしようぜ」


「…そうだな」


妥協案を持ち掛けられ、承諾すると小皿に置いたチャーシューを箸で半分に切り、それを食べる。


残ったラーメンを一気に食い終わらせて、円卓に代金を置く。


「「さぁて…行くか」」


「ちょっ待てぇぇ!!」


店を出て、宿を見つけようと歩み始めた瞬間、華雄に腕を掴まれた。


「「なに?」」


「いやいや、助けなくて良いのか!?」


「冗談キツいぜ。なんの報酬も無ぇのに人助けなんて…」


「俺もゴメンだ」


「見損なった…見損なったぞ!!もう良い、こうなったら私ひとりでも行く!!」


俺達に言い捨て、華雄が走り去って行く。


「…アイツ、忘れてるんじゃないか?」


「だろうよ」


目立つ真似をわざわざしやがる馬鹿が何処に……ここにさっきまで居たか。


「…どうする?」


「不本意だが…行くしかないだろう。アイツだけだと目立って後々、面倒な事になりかねん」


「…ハァ…」


ひどく面倒臭そうに相棒が溜息を吐き出すと煙草を咥えて火を点けた。


「しかし…テンションが上がらねぇ…」


「なら理由でも作れ」


「そうだなぁ…。“御老人に手を挙げるなんて不届き千万!!”ってのは?」


「…悪くはないが、な」


まぁ…俺も老人に暴力を振るう輩は好かん。


人生の先達として敬わなければならないし、労らければならない。


「んじゃま…ちょいと教育しますか」


「ヤバくなったら逃げるぞ」


「あいよ」










「華雄?…なんでここに?」


「なっ、そっ孫策!!?」


「なによ…私がここに居たら悪いの?」


「いやそういう訳では」


「テメェら、なに喋ってやがる!!」


「「………」」


なんだってこんな事に…。


人だかりが出来ている場所に着いて状況を確認すると、老人夫婦が黄色の頭巾を被った三人組の男達に捕まっていた。


婆さんの方は羽交い締めにされているが…爺さんは怪我をしているのか血を流し倒れていた。


華雄も現場にいたが……予想外の人物までもが。


薄紅色の長髪の美女…孫策だ…。


「…マズいな」


相棒が不意に呟いた。


「どっちがだ?」


「爺さんだ。出血が酷い…マズいな」


確かに…かなりの血を流している。


「…助けたとして間に合うか?」


「…微妙だな。ヘタすると何らかの後遺症が残るかもだ」


仕方ない…乗り掛かった船だ。


喧騒から少し離れるとトランシーバーの回線を開く。


「周波数内の各員へ。少し狙撃を頼みたい。場所は…江東飯店っていう店の近くに出来ている人だかりだ」


<こちら軍曹、近くにいます。狙撃地点に到達するまで約一分ほど>


「了解、不本意だが助ける事にする。…悪いな」


<いえ>


交信が途切れ、押さえていたイヤホンから手を離す。


「ひと芝居するのか?」


「あぁ。クソ野郎共の息の根が止まったら、老人夫婦を確保しろ」


「応」


人だかりに戻ると見物人達を押し退けて、現場の中心に入る。


「韓甲に呂猛!やはり来てくれたのだな!!」


「韓甲!?」


まず華雄を視線で黙らせると、次いで孫策へこちらに合わせろとアイコンタクトすると彼女が僅かに頷いた。


「お前さん達、大人しく御老人夫婦を解放してくれんかね?」


「ハァ、何を言ってやがんだ!!」


「俺達を安全にここから逃がしてくれるんなら話は別だけどよ!!」


今も昔も犯罪者の言い分は変わらないのか…。


「さっさとおじいちゃんとおばあちゃんを離しなさい。そうすれば逃がしてあげるわ」


「はっ、そんな事したら俺達を殺すつもりなんだろうが!!」


当然だろうが。


というか…何をドヤ顔で言い放ってやがる。


…孫策の雰囲気に気付かないなら…コイツらは馬鹿としか言いようがない。


<位置につきました>


耳に付けたイヤホンに狙撃兵の声が飛び込んできた。


対処法は…まぁ大丈夫だろう。


「まぁ…とにかく、このままでは交渉が進まないので…そうですねぇ…」


頭を掻く為に右手を挙げた瞬間、婆さんに剣を突き付けていた犯人の手首が剣もろとも吹き飛んだ。


「アァァァアァ!!?」


「なっどうした!?」


「俺の腕、腕がぁぁぁ!!?」


手首を失い、苦痛と混乱で悲鳴をあげる男の頭が吹き飛ばされ、壁一面にペンキをぶち撒けたように血が飛び散った。


間をおかず、何があったか判らぬまま突っ立っていた残った二人の頭にもひとつずつ穴が穿たれ、後頭部が吹き飛んだ。


「ご苦労さん」


狙撃兵を労うと、倒れている爺さんの下へ向かう。


相棒は医療バッグを地面に下ろし、俯せになっていた爺さんを仰向けに寝かせる。


口元に手をやり、しばらくすると舌打ちが一発。


呼吸が無いようだ。


相棒は着ていたコートを脱ぐと、それを丸めて後頭部に差し込む、顎を上げさせる。


再び口元に手をやると、今度は安心したように息を吐いた。


呼吸が戻ったらしい。


「爺さん、大丈夫か?」


何度も呼び掛けながら肩を軽く叩くと、微かに反応があった。


「聞こえるか?俺は医者だ。少し痛いかも知れねぇが我慢してくれ」


「……あ…」


「よし…始めるぞ」


相棒がバッグを漁り、ゴム手袋と処置に必要な器具を取り出して準備を始める。


「おじいちゃん!!」


「…しぇれ…ちゃん…」


「頑張って!!おばあちゃんも近くにいるからね!!」


そう呼び掛けた孫策と近付いてきた婆さんが爺さんの手を握り締める。


「…傷を診るぞ。少し痛むが…我慢してくれ。…見世物じゃねぇんだぞ、さっさと散りやがれ!!」


相棒の怒鳴り声に群衆がたじろくが、散っていく人数は疎らだ。


「見世物じゃねぇってのによ…。申し訳ないが、爺さんが暴れたら押さえてくれ」


「えぇ!!」


「わっ判りました!!」


返答に満足したのか相棒が処置に入る。


胸に出来た切創を診る為、彼が傷口を広げる。


「…グァ…!!?」


「我慢してくれ、麻酔を打つ暇が無いモンでね。…静脈、動脈に損傷なし。傷の深さもそれほど無い…爺さん、骨に当たっていて良かったな」


出血の割には、傷の程度はそれほどではないらしい。


「…輸血は出来ねぇな血液型が…。…相棒、生食を出してくれ」


相棒の言う生食とは生理食塩水の事だ。


体液とほぼ同じ濃度にされており、輸血を拒まれたり、あるいは輸血する血が無い場合に血液の代用にする事がある。


ちなみに血を流す事が日常茶飯事の戦場でも重宝される事があるのだ。


バッグから生理食塩水の入った合成樹脂製パックを取り出して相棒に手渡すと、次いで点滴用の針とゴム管を取り出す。


「悪い、手が離せねぇんだ…やり方は判るよな?」


「あぁ」


既に傷口の縫合に入った相棒に代わって、パックに繋がってにいるチューブに点滴針を差し込み、ゴム管を爺さんの腕に縛る。


軽く腕を叩くと血管が浮き出てくる。


そこに針をゆっくりと刺して、テープで固定した後、生理食塩水が落ちていくように俺の肩辺りまでそれを持ち上げた。


「…グゥ……!!」


「ほら、頑張れ。婆さんも居るんだ、しっかり男気を見せて惚れ直させてやれ」


軽口を叩きながらも相棒が縫合を続けていき、鋏で糸を切り処置が終わった。


「仕上げに、化膿止めを打って、止血帯を巻いてっと…」


…あぁ、それもやるのか。


腐っても軍医と言うべきか…。


本当に処置が終わって気付くと…爺さんは気絶していた。


…やはり老体に苦痛は響いたか。


「ありがとうございます、ありがとうございます!!なんと御礼をすれば良いか…」


「いや気にしないで下さい」


相棒が肌に密着したゴム手袋を外し、手早く医療器具を片付けながら婆さんへ返すと俺に視線を向ける。


意図に気付き、蚊帳の外にいた華雄の立っている場所を確認し、二人揃って立ち上がった。


「「では…失礼!!」」


装備を手に持ち、脱兎の如く逃げ出すが…そうは問屋が卸さないらしい。


華雄を捕まえた瞬間、四方八方からゾロゾロと兵士が現れたのだ。


「策殿、大丈夫だったか!?」


「祭、大丈夫よ」


銀髪の妖艶な女性が孫策に駆け寄って行く。


…泗水関で見た顔だ。


包囲網が形成され、兵士達が俺達に槍や剣を向けてくる。


「…伯符殿、これは何の真似か?」


「う〜ん、私の大切な民を助けてくれた御礼をしたくて」


「そんなモノいりません」


「そう言わないで」


「いりません」


というより早く逃がしてほしい。


「…なら、しょうがないわね。あんまり昔の事にはこだわりたく無いけど…」


そう思っているなら、満面の微笑を引っ込めてもらいたい。


「携えた武器を捨てなさい。…安心して、何もしないから」


事実上の投降勧告か…。


<隊長、どうします?>


「…従おう。各員に連絡。万が一、兵士が来ても抵抗はするな、と」


<…はっ!>


交信が途切れると周りにいる兵士や孫策が怪訝な表情をする。


「…誰と話していたの?」


「まぁ…それはどうでも良いので」


コートを脱ぎ、それを地面に落とすと、腰から刀を二本、そして弾帯を外して、ゆっくりと見せ付けるように地面に下ろす。


ついで背中から小銃を取り、それも地面に下ろして両手を挙げる。


相棒も俺と同じく投降のポーズを取り、華雄も既に手にしていた戦斧を地面に捨てていた。


「…何か、良いプランでもあるのか?」


「考え中」


「…ハァ…」


取り敢えず、知らない仲ではないのだから話してみるとするか。




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