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恋姫†無双-外史の傭兵達-  作者: ブレイズ
第二部:契約へ
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16



え〜ちょいと生々しい表現…というか露骨なそれがあります。


女性の方…ごめんなさい!

そして華雄の年齢についてもイメージを崩してしまったら…ごめんなさい!!

…まぁ妥当かなぁ、と思いまして。


初の将司視点。…彼がちゃんとした(?)医者に見える…かも。









洛陽を脱出してから約一ヶ月が経過した。



あれから月殿達を保護した劉備は徐州の州牧に任じられ、平原から徐州へと向かったらしい。


それなりの地位と権力を手に入れたのだから、保護された二人は大丈夫だろう。


恋殿達は……金子を食い潰していないか心配だ。




まぁ…そんな事はどうでも良い。


…いやどうでも良くはないと思うが、どうでも良いんだ。




現在の俺達の状況だが……







道に迷っている。








「…なんてふざけやがった地図なんだ…」


「仕方ないだろう…。正確さや縮尺を望むことが間違いだ」


悪態つく相棒をたしなめるが、彼は舌打ちをした後、煙草を咥えて火を点けた。


途中の村で…といっても一週間ほど前の事だが、その村で俺達は賊の退治を依頼されたのだ。


結果は言わずもがな。


報酬の金と共に地図を貰ったのだが……これがかなりの粗悪品。


無いよりはマシ、と思って地図の通り行軍していたが…やはり粗悪品の地図に頼るのは間違いだった。



まぁ…遭難している訳じゃなし、まだまだ大丈夫だろう。



とはいうモノの…流石に、この恰好は酷い。


一週間近く、身なりを整えていないお陰で、無精髭は生えている、夜ごと歩哨に立つから目の下には隈が出来てしまっている。


頭髪に至っては…この世界に来てから髪を切る暇が無かったため既に肩辺りまで伸びている。


…ここまで伸ばした経験は無い為、ある意味では貴重な恰好になるやも。


…俺の髪は何故か逆立っているのだが、どうやらここまで伸ばすと普通に髪は寝るらしい。



「…なぁ和樹、今さ俺と同じこと考えてなかったか?」


「例えば?」


「俺達の恰好」


「正解、流石は相棒」


「…ったく、こんな恰好してたら駐留する村とかに入った途端、拝まれるぜ」


「違いない」


何を言いたいのか判ってしまい苦笑が零れてしまう。


「「“どうか命ばかりは”ってな」」


『ギャハハハ!!』


部下達には聞こえていたようで、爆笑が起こった。


「そりゃねぇでしょう」


「まったくだ。俺達は紳士の集まりだぜ」


お前達、一度その顔を見てみろ。


まぁ…顔はアレだが、悪い奴等ではないからな。



「…しかし…今、どの辺りだ?」


「…気候が湿潤になってきた。北方は抜けたろうな」


「となると…長江が近いか」


「あぁ……んっ、長江…江北…」


「…江東の小覇王の領土が近いぜ」


なんてこった…。


あの美女とは何故か縁があるらしい…認めたくないが。



「…孫策か…」


「おい、何を考えてんだ?」


何やら呟いた相棒に問い掛けると、彼は肩を竦めてみせる。


「いんや。…ただ、孫策に関する逸話を思い出しただけさ」


「…どんなのだ」


「…江東を治めた孫策は26歳で亡くなったが、その時の遺言は“第一に考えるべきは呉の民を護ること”らしい」


「天下に興味は無かった?」


「…どうだろうな。流石に判らねぇよ」


だろうな。


「お前は二回会ったんだろ?彼女が何を考えてるか判ったか?」


尋ねられて思案する。


…どうもこうも…。


「…判らなかった」


「珍しいな」


相棒は驚くが、それに俺は彼がしたように肩を竦める。


「判ったのは、彼女が俺の苦手な人間のカテゴリに入るって事だけだ」


「苦手…あぁそういう人間ね。…考えが読めない、というより何を考えているか判らない、か」


「あぁ」


俺としては苦手な人間だ。


相手の考えが読めない、判らない、となると戦場では自殺に等しい事になる。


なにせ作戦というのは相手が何を考えているのかを逆手に取って考察し、実行に移すモノなのだから。


「なぁ華雄。お前、孫堅と戦った事があるんだろ?」


「………」


「…華雄?」


相棒が隣で馬に揺られている華雄に問い掛けるが反応がない。


「華雄?」


「………」


「華雄!!」


「ッなっなんだ!?」


相棒が声を大にして呼び掛けると、やっと反応したが彼女の表情は青白い。


というよりも身体もふらついていて覚束ない。


これは……


「…華雄。立ちくらみとか身体が怠いってのは無いか?」


「なんだ突然?」


「良いから答えろ」


「……ある」


「…ハァ…」


相棒が溜息を吐き出した。


彼は衛生兵−もっと正確に言えば軍医になる為、彼女の身体に何が起こっているか判断できたのだろう。


将司が俺に目配せすると、俺は腕時計を見る。


…夕暮れには早いが…まぁ良い。



「停止。今日は此処で夜営する、準備に掛かれ!」


『応ッ!!』


騎乗していた部下達が一斉に馬から降りて、それぞれが夜営の準備を始める。


森を行軍していたが、ちょうど開けた場所に着いていて良かった。


「まだ時間はあるだろう!私なら大丈夫だ!!」


「うるせぇ。さっさと降りろ馬鹿」


「馬鹿だと!?」


「武人が体調管理も出来ないなら馬鹿だ」


「グッ…」


渋々と華雄が馬から降りたのを確認し、俺も黒馗から降りると彼女の馬と愛馬の手綱を取って近くの手頃な木に結び付けた。








将司side




「さて、と…」


医療バッグを地面に下ろして、シートに座らせた華雄に向き直ると彼女が身体を震わせた。


「まっまた何かするつもりなのか!?」


「…オイオイ…俺をどんな風に見てるんだ?俺は…まぁ一応は医者だからな、患者の状態によって処置は変えるぜ」


「そっそうか…」


「…内科は苦手なんだけどよ…」


職業柄なのか、戦場で処置するのが普通になっている為、外傷の治療は慣れたモノだが、内科−主に病気については経験が少ない。


…まぁ…マラリアや赤痢とかの治療をやった事はあるが。


取りあえず、新しいカルテ用紙を取り出して患者の名前をローマ字で書く。


「いくつか質問するから答えろ」


「うっうむ」


「まず年齢は?」


「…23だ」


「へぇ…俺達と近いな。まぁ良い。次は、っと…食欲は?」


「普通…だな」


「身体に異常は?」


「怠いのと…立ち上がっただけで立ちくらみがする」


ふむ…。


「んじゃ次は…月のものは来てるか?」


「なぁ!?」


「良いから答えろ」


恥ずかしいのは判るが…というか恥じらいがあったのか。


「うぅ…来てる…」


「何日目だ?」


「……2日目だな」


「痛みは?」


「…それほどは」


「血の量は普段より多かったか?」


「……うむ…」


項目を埋めて、診断結果を最後に書いた。ちなみにクセなのかいまだ項目だけはドイツ語表記にしてしまっている。


「……まぁ当然か」


「なっなんだったんだ!?」


俺の態度に不審を抱いたのか華雄が慌てて問い掛けてくる。


「なんて事はねぇよ。ただの貧血だ」


「ひんけつ?」


「この場合は出血性の貧血だな。…まぁ判り易く言えば…血が足りないんだ」


一口に貧血と言っても多種多様な原因があるんだが…まぁ割愛しよう。


とにかく彼女の場合は、生理−月経における排泄された血液が多くて症状が現れたのだろう。


ペンライトを取り出して、華雄の目の下瞼を診察する。


それの光に驚いていたが、無視して診察すると、やはりといえば良いか…。


「見てみろ」


フェイスペイントに使うコンパクトを開き、それの鏡で彼女の顔を映してやる。


「これは…銅鏡か?それにしては鮮明…」


「どうでも良い…というか、あの話を聞いてただろうが」


「…そういえばそうか」


俺達があのガキ−天の御遣いと同類に当たる、という事を思い出したのか彼女は黙った。


…もっと驚いても良いと思うのだがな。


「…正常なら、こんな風になってる」


自分の下瞼をめくって裏側を見せる。


おそらく、そこはピンク色になっているだろう。


「…桃色だな」


「そう。だけど、お前の場合は…」


「んっ…なっ白いぞ!?」


「そう。貧血になると大体の場合はそんな事になる。目安に覚えとけ」


そう伝えてコンパクトを返してもらい、それをポケットに捩込むと、医療バッグを漁る。



ん〜…鉄分が欠乏しているからサプリメントを処方しても良いが…この時代の人間に合うかどうかだな…。


現代の薬品は止めておいて……っと。


「…コイツだな。これを煎じて飲め。少しは症状が軽くなる」


「…ヨモギ?」


「おっよく判ったな…って見た事はあるか」


ヨモギは漢方ではポピュラーな物だ。


若い芽や、育ち始めの若い株は、干した後に煎じて飲むと、健胃、腹痛、下痢、貧血、冷え性などに効果がある。


今回は正にそれ。


「洛陽に良い漢方屋があってな。少しばかり生薬や薬草を調達したんだよ」


「ほぅ…ただ切るだけではないのだな?」


「…もう一回、切って縫合してやろうか?」


貧血のそれとは明らかに違う表情で華雄は激しく頭を振った。


…先の戦で従軍していた医者が少なかった為に俺も負傷者の治療に駆り出されたので、どうやら俺はただ切ったり縫合するだけしか脳が無い医者と認識されているようだ。


まったく…酷い誤解だ。


「少し多めに処方しといてやる。煎じる道具が無いなら相棒か飯炊き連中に言ってくれ。何か貸してくれるだろうからよ」


「…あぁ済まない…」


乾燥させたヨモギを紙袋に入れて差し出すと彼女は礼を言った。


…ハァ…やっぱ俺は内科の診療は向いてねぇらしい。





どれほど強くても人間は人間なので避けては通れない道があるというか…。


まぁ華雄も普通の女性って事を表したかっただけです。



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