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恋姫†無双-外史の傭兵達-  作者: ブレイズ
第十部:Operation Vigrid
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猛烈な弾雨を掻い潜り五胡の歩兵が阻止線を盾や戦死した友軍兵士を土台代わりにして飛び越え、鈴生りになって突っ込んで来る。


〈阻止線付近の敵を集中して吹き飛ばせ!!〉


〈航空支援を開始する!!WOLFはナパーム投下しろ!!各機は散開!!〉


戦車が榴弾を撃ち込み、殺到する敵を纏めて吹き飛ばしつつも火力の不足を感じたのか各戦車の車長達がハッチを開けて半身を外へ晒し、搭載しているNSV重機関銃の銃把を握り12.7mmの銃弾を撃ち込み始めた。


ヘリも満を持しての出撃となり、上空からミニガンやロケット、ナパーム弾を撒き散らして敵を漸減させる。


確かに敵の兵力は削っているーーだが襲い掛かって来るのは150万にも及ぶだろう大軍勢だ。


どれだけ火力で圧倒しようと、どれだけ突撃してくる敵の戦列を潰そうと新たな敵が突っ込んで来る。


「阻止線を越えた敵ーー300ほどが突っ込んで来る!!」


「白兵戦に備えぇぇぇぇっ!!」


機関銃が唸りを上げて弾幕を張る中、中尉の号令で兵士達が歩兵銃へ銃剣を着けた。


腰だめに構え、敵が塹壕や窪地へ突っ込んで来た瞬間、槍で刺突する要領で歩兵銃を素早く突き出す。


その後は敵味方入り乱れての乱戦となった。


歩兵銃を棍棒のように振り回して敵兵の頭をカチ割り、横から別の敵兵に組み付かれ地面を転がりながら互いに殴り合う。


地面へ引き倒された瞬間、敵の剣で腹を滅多刺しにされた兵士は最後の力を振り絞り、転がっていた拳大の石を引っ掴むとそれを敵兵の側頭部目掛けて叩き付けて頭蓋骨を砕く。


乱戦の中、和樹はスリングベルトを身体に通して小銃を背中へ預け、代わりに愛刀を抜いていた。


ここまで肉薄されては小銃を撃つと下手をすれば味方を誤射してしまう可能性すらある。


突っ込んで来た敵兵の槍を払い除け、無防備となった腹へ白刃を振るい両断する。


腸を撒き散らして倒れた敵兵に目もくれず彼は新たに肉薄してきた敵兵の顔面へ刺突を見舞い、刀を引き抜くとそのまま頚を刎ね飛ばした。


頚を刎ねられ、首なしとなった敵兵がヨロヨロと数歩動いたかと思うと次の瞬間には膝から崩れ落ち、無様な屍を晒した。


「ーー御無事ですか隊長!?」


「ーーまだ健在だ!!そっちはどうだ中尉!?」


「ーーこちらも健在!ですが兵が20ほど殺られました!!」


「ーー上等!!」


和樹と同じ事を考えたのか中尉も小銃を背中へ預け、サーベルを鞘から抜いて敵と斬り結んでいた。


横薙ぎに振るわれた槍の柄をサーベルの護拳で払うと手首を返し、そのまま露になっていた首の気管を斬り裂き、止めに鎧の継ぎ目へ刺突を繰り出して心臓を潰した。


「ーー自分の事は心配して下さらないので?」


「ーーお前はそう簡単に死なんから問題ない!」


折り畳みストックのAKS-74へ着剣し、着けた銃剣で敵兵の一人を刺殺した曹長が苦笑しながら和樹へ向けーー正確には彼の背後から斬り掛かろうとしていた敵兵の喉笛へスローイングナイフを投擲して仕留める。


「ーー確かに死んだら隊長を御守りできませんな」


そう嘯きつつ彼は新たなスローイングナイフを弾帯へ吊るした自作のナイフポーチから一本を引き抜き、肉薄してきた敵兵の槍による刺突を避けるとナイフで喉笛を切り裂き、横から近付いて来ていた敵兵へ投擲した。


「ーーとは言え、ナイフも残り僅かですが」


先程、仕留めた敵兵の喉笛に突き刺さったスローイングナイフを引き抜き、曹長はそれを逆手に持ち新たな敵兵へ襲い掛かる。


流石だな、と中尉は曹長の戦技に感心していると別の敵兵が三名襲い掛かって来た。


数に物を言わせ、複数で仕留めようと敵は考えたのだろう。


一人をサーベルで袈裟懸けに斬り伏せた瞬間、二人目が槍を横薙ぎに振るって来た。


護拳で弾いた後、反撃しようと考えサーベルを構えたーーその瞬間、残った敵兵が槍の柄で中尉の膝裏を叩く。


ガクンと身体のバランスを崩してしまう。


しくったーーそう思った刹那、彼の視界に映ったのは敵の槍の穂先。


無理矢理、避けようと反射的に上半身を剃らすーー避けたが突然、視界の左側の三分の一ほどが部屋の電気を消したかのように暗くなる。


目をやられたーーそう直感的に察した瞬間、これまでにない程の殺意を感じ猿叫にも似た怒号をあげつつ眼前の敵兵へサーベルを突き刺すと地面に押し倒した。


そして敵に覆い被さると顔面を掴み、両手の親指を敵兵の両目へ突っ込む。


「ーーガァァァァァァッ!!!?」


「野郎!!死ね、死ねクソ野郎っ!!!」


ズブズブと親指を眼窩へ押し込んで両目を潰しながら鷲掴みにした頭を何度も何度も地面へと叩き付けた。


「ーー中尉!!」


異変に気付いた和樹が敵兵を掃討しつつ中尉へ駆け寄り、既に息絶えた敵兵から彼を放すと容態を確認する。


「ーー救急包帯使うぞ!!鉄帽脱げ!!」


肩を貸して窪地に滑り込むと和樹は中尉の弾帯に装具されたエイドキットから救急包帯を取り出した。


包装を破り、中尉が鉄帽を脱いだのを確認し包帯の布を頭部へ回して結ぶ。


「目の具合は?」


「診た感じだが眼球まで傷が届いてそうだ。おそらく潰れてる。痛みは?」


「不思議とありませんが目が熱く感じます……銃を取って下さい」


顔面の左半分ほどを包帯で隠した中尉の背中からスリングベルトを外し、和樹が小銃を手渡す。


「片目さえあれば、まだ戦えます…!」


「上等だ。曹長、中尉の側に付いていろ!!」


「ーー了解!」


窪地の近くで戦っていた曹長が敵兵の頭を銃床でカチ割りながら返答した。


「ーー戦車、砲兵、ヘリ!!前線の敵へ斉射!!復唱いらん、直ちに!!」


和樹が携帯無線機に向けて吠えた数秒後、戦車が阻止線付近の敵軍へ向けて砲撃を開始する。


それに続いて迫撃砲の砲弾が撃ち込まれ、ついでヘリがロケット弾やミニガンによる掃射を始める。


密集し群がる前線の敵を支援で漸減しつつ中尉が指揮下の中隊に向けて吠えた。


「第一中隊!集まれ!!押し返すぞ!!」


激戦で数を減らした中隊の兵士達が各地で応と返答する。


今だ敵と交戦している兵士を除き、疎らだが30名ほどが集結したのを見て和樹が再び携帯無線機に向かい吠える。


「撃ち方待て!!」


〈了解、最終弾発射!!〉


「最終弾発射を了解!戦車ならびにヘリも攻撃待て!全中隊、着剣!!号令と同時に突撃を敢行する!!」


〈了解!!〉


ーー遂に和樹の口から全中隊への突撃命令が下達された。


命令を受け、後方の塹壕から敵軍へ射撃を続行していた各中隊が機関銃の破砕射撃のみを残して歩兵に銃剣を着けさせる。


「ーー斉射の後、突入するぞ!!後の事は考えるな!!眼前の敵のみを殺りまくれ!!」


和樹が檄を飛ばす中、迫撃砲や戦車、そしてヘリが砲弾とロケット弾、銃撃、ナパーム弾による攻撃を加え、だめ押し気味に敵の数を減らす。


「ーーぇっ!!」


各中隊が和樹の号令とほぼ同時に敵軍へ向かい発砲すれば密集していた敵がバタバタと倒れる。


敵の戦列が崩れたのを見た和樹が愛刀の切っ先を天へ向け、息を吸い込む。


「ーー突撃にぃ………ッ」


ーーそして愛刀を鋭く一閃し、切っ先を敵軍へ向けた刹那、彼は吠えた。


「ーー前へぇぇぇッ!!」


和樹が全隊の先頭へ立ち、敵中に吶喊する。


それに遅れを取るまいと各中隊の指揮官達が突っ込めと叫び、兵士を鼓舞しつつ突撃を始めた。


鯨波のような閧を上げ、銃剣先を揃えた兵士達が彼等の後に続く。


浮き足立った敵軍の先頭へ斬り込んだ和樹が愛刀で敵兵を斬殺し、続いて片目を失った中尉もサーベルを振り翳して敵に襲い掛かる。


歩兵達が銃剣先を一斉に突き出し、自らの眼前に立った敵兵を刺殺すると次の敵へ銃剣を突き刺し、小銃を振り回して敵に打撃や斬打撃を加える。


ここが自らの死地と覚悟した死兵達だ。


ここから後には退けない。退けば家族が虐殺され、陵辱される。だからこそ後退は出来ない、前線の放棄など出来ない。


ーーコイツらなんぞに親父やお袋を殺されてたまるかーー


ーーここを通したら俺の嫁がーー


ーー倅と娘を奪われてたまるかーー


自らの命を擲ってでも護り抜きたい大切な存在があるからこそ死兵となる。


そうなった兵士は強い。


例え、手足がもぎ取られ這いつくばっても敵の喉元へ食らい付く死兵となるのだ。


「ーー怯むな突っ込めぇぇぇッ!!」


声を張り上げ、兵士達を叱咤しながら和樹が眼前の敵兵を剣ごと愛刀で一刀の下に斬り伏せた。


逆袈裟に斬り上げ、自分へ突き出された槍の穂先を斬り飛ばし、懐に入り込むと愛刀を真横に一閃して首を刎ね落とす。


勢いは我方にある。


だが所詮は数の暴力でいずれは押し戻され鏖殺されるのが関の山ーー和樹がそう思った時だ。


ーー突然、遥か後方から戦場の怒号に紛れ、別の閧の声が和樹の耳朶を打った。


いつの間にか敵に包囲されたのかーーと彼が冷や汗を流した時、和樹の携帯無線機に繋がっているイヤホンから短い雑音が流れる。


〈ーーヘリ01から連隊長!!我方陣地の後方から戦域へ接近する軍勢を視認………旗は曹、劉、孫ーー援軍だ!!援軍が来ました!!兵力はつかみで100万はくだりません!!〉




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