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恋姫†無双-外史の傭兵達-  作者: ブレイズ
第十部:Operation Vigrid
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いつの間にかPV700万を突破してました! 温かい応援とご感想にも感謝申し上げると共に、残り僅かとなったこの外史の行く末にもう少しだけお付き合い下さいますようお願い申し上げます。

二日目の早朝ーー地平線から太陽が顔を出した時、それは始まった。


〈ーー外哨長、外哨長!!こちら第一外哨!敵を視認!!数は……目測で10万と推定!!〉


〈ーーこちら外哨長、了解!!〉


〈ーー第二外哨より外哨長!!新たな敵を視認!!推定兵力10万の後方にーー多すぎて分からないが大兵力の敵軍を視認した!!〉


〈ーー外哨長、了解!ーー本隊より通達、ただちに原隊復帰せよ、とのこと!〉


通信が飛び交う中、急いで掻き込んだ糧食を咀嚼しつつ和樹が双眼鏡を手に敵情を観察する。


「……敵主力、と見て間違いない…か?」


「アレが全部、敵ってか?流石に初めて見るぜ…地平線まで敵だらけだ」


将司も傍らに立って弾帯から双眼鏡を取り出して敵軍の陣容を確認するが、地平線まで敵が地面を覆い隠している様を見れば、双眼鏡の必要すらないように思えてしまう。


「ーー前に押し出してる10万は騎兵……先駆けか、威力偵察か……」


「どっちにしろ、あの兵力だ。相手にするのがアホらしく思えて来ちまったよ」


「いっそ降伏してみるか?おそらく派手に歓迎してくれるぞ?」


「じょーだん。あんな、おっかねぇオッサン達に降伏して捕虜になるくれぇなら自爆して敵の何人か道連れにしてやるよ」


「くくっ…違いない」


互いに微かな笑みを溢しつつ和樹が携帯無線機を引っ掴んだ。


「ーー全隊、突撃破砕射撃用意。迫撃砲も突撃阻止線に合わせ射撃用意。尚、照準は有刺鉄線のちょい先に合わせろ」


〈ーー第一中隊、了解〉


〈ーー第二中隊、了解〉


〈ーー砲兵、了解〉


命令が達せられ、各指揮官が掌握下の兵士達へ弾薬の装填と射撃用意を命令した。

迫撃砲も隊員が砲弾をODに塗られた木製の弾薬箱から取り出し、半装填と撃ち方始めの命令を待っている。


「あの障害にした有刺鉄線……有効だと思うか?」


「判らん、判らんが……出来る事はやった。後は殺れる所まで殺り抜くだけだ」


和樹と将司が短い会話を終えるか否かの瞬間ーー敵の先駆けである10万の騎兵の内、約1万が一斉に閧を上げ、一個の集団となって、ゆっくりと進み始める。


〈ーー敵軍に動きあり!!来ます!!〉


「ーー射撃用意!!」


最前列の塹壕に籠る第二中隊の中隊長から通信が入り、和樹が声を張り上げ、携帯無線機や周囲に向けて吠えた。


「ーー射撃用意!!」


「ーー射撃よーい!!」


まるで波のように射撃用意の命令が口頭で逓伝され、幾多の銃口が前へ突き出された。


「兎にも角にも…俺達に食い付いてくれて感謝する、かねぇ?」


「昨日まで不敗とも言える軍団だったんだ。一方的に殺られるなんぞ信じられんだろうし、なにより面子が立たんだろうからな」


ーーあっという間に彼我の距離が狭まり、敵の騎兵隊が一層大きく閧の声を上げ、馬を脚を襲歩にした。


「ーー突撃破砕射撃!!撃ち方始めっ!!」


突撃の始まりを見計らい和樹が射撃命令を下した。


「ーー撃ち方始めっ!!」


「ーー撃ち方始めっ!!」


各中隊、各塹壕から敵の突撃を阻止する為、無数とも言える銃弾が撃ち出される。


歩兵銃を持つ小銃手は、一発撃つごとに遊底を動かして排莢と次弾装填を行いーー弾が切れたら弾薬盒から挿弾子を取り出し、それへ詰めた5発の弾薬を内部の弾倉に押し込む。


機関銃は射手、給弾手と副射手を兼ねた二名が協力しつつ射撃を実施し、絶え間なく弾幕を張り続けていた。


挿弾帯の送り方が下手だったら弾詰まりの原因となる為、副射手は挿弾帯を両手で保持しながら弾薬を送りつつ射手が弾を撃ち切った瞬間、新しい挿弾帯を薬室へ送り込む事や熱くなった銃身を急いで予備の銃身へ交換する等、小銃手に比べれば遥かに仕事が多い。


「ーー分隊長、弾が無くなりそうです!!」


「ーー了解!!弾!!誰か弾持って来い!!弾運びいないか!!」


新しい弾薬の補給を求める声が各塹壕から響き始めると後方の弾薬・燃料の集積場所から弾薬運びを任された兵士達が持てるだけの弾薬箱を持ってーー中には首や肩に挿弾帯を掛けてーー各塹壕への連絡通路を駆け出す。


騎兵は歩兵に比べれば的になりやすい。


大半の騎兵が突撃阻止線として構築した有刺鉄線の柵へ辿り着く事なくバタバタと撃ち倒されて行った。


「撃て撃て撃ちまくれ!!とにかく前に向けて撃ちまくれ!!」


思わず耳を塞ぎたくなるほどの銃声の嵐の中、中隊長や各指揮官達が兵士達へ檄を飛ばす。


少しでも火線を緩めれば敵が雪崩を打って突入を敢行してくる。

弾薬の補給、機関銃の銃身交換を欠かさず実施しなければ、想定よりも速く戦線が瓦解してしまう。


こちらも必死の迎撃戦を展開しているが、それは敵の五胡軍も同様だ。


五胡軍は300万を超える大軍。

それを維持するだけの兵糧や軍馬に与える為の飼い葉や飼料などの消耗品は保有している上、余剰分もある。

だが、その消耗品も進軍が一日でも遅滞したらどうなるだろう。


確かに五胡軍は圧倒的な兵力と進軍の速度で中原の奥深くまで駒を進めた。

しかし芋蔓のように伸び切った兵站線は占領下で小規模ながらも反攻に転じる蜀や魏の敗残した将兵によって襲撃されている。


日々、最前線に届けられる物資も微量ながらも少なくなっていた。


加えて五胡軍にとって想定外だったのは頑強な迎撃戦を展開する和樹達の存在である。


昨日、偵察の為に先行させていた8000の騎兵隊の内、約2000が戦死し退却した。


最初、それを聞いた五胡の各族長は信じられなかっただろう。


それまで常勝と呼ぶに相応しかった軍が敗退したのだ。


何らかの間違いと思い、今日は早朝から騎兵10万による波状攻撃による突撃を敢行ーーするものの戦端が開かれてから一時間が経過。


一万毎の波状攻撃を加えたが、既に第四波までーーつまり4万の騎兵が最前列の塹壕へ到達さえ出来ずに戦死している。


この結果を見て各族長達はこの戦線を放棄の上、迂回して進撃を再開しようと考えた。


だが、ついでそれは出来ないと悟ったのだ。


もし立ち塞がっている敵を放棄して迂回し進撃したとしよう。進撃を続ければ間違いなく中原の三国と雌雄を決する為の戦闘になる。


激戦の最中に、放棄した眼前の敵が背後から攻撃して来たらーー挟み撃ちになり全滅すら可能性として出てくる。


最終的に三国を滅ぼし、中原を占領するという目的は変わらない。

だがその前にーー兵力に余裕がある内に眼前の敵を倒さなければ後々の戦闘に影響が出る、と五胡の上層部は考えた。





〈ーー敵が退きました!!〉


「第五波までは持ったか……相棒、弾薬の再配分を急がせろ。直ぐに攻撃を仕掛けて来る筈だ」


「了解」


敵の第五波までの波状攻撃は退けられたが立て続けに攻撃を加えられては消費した分の弾薬の補給が間に合わない。


弾薬の補給が下達され、命令を受けた兵士達が慌ただしく塹壕を駆け回り始める。


「ーー騎兵が体の良い的でしかない、と敵も薄々とは気付いてるだろうな……」


「歩兵の大軍が突撃して来るのも時間の問題ってか?」


将司の問い掛けに和樹が銜えたタバコへ火を点けつつ無言で首肯した。


「死に物狂いで突っ込まれ、阻止線の有刺鉄線を乗り越えられたら塹壕まで100m弱。そこまで来られると敵前の塹壕を奪取されるのは確定だ」


「数に物を言わせて来るだろうなぁーー見ろよ、お前が不吉なこと言うから……」


双眼鏡を覗き込みつつ将司が相方へ敵を見ろと暗に言って来る。


その姿を見て、和樹が再び双眼鏡を構えて接眼レンズへ眼を近付ければーー


「ーー嫌な事は言うモンじゃないな……というかアレは俺の所為なのか?」


ーー五胡軍の騎兵が軍馬から降り、歩兵となった姿が視線の先にあった。


その数ーー約30万。

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