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短いうえにやっつけ仕事で申し訳ありません…。
11.09.10<報告があり一部訂正。
Others side
和樹と雪蓮の会合から二日後の朝、連合軍各陣営に以下の報告がなされた。
『泗水関に敵勢の姿なし。董卓軍はこれを放棄した可能性大』
確かに関には立て篭もっている筈の敵軍が掲げる牙門旗が翻っていない。
これを好機と見た連合軍本陣で軍議が開かれた。
内容は誰が一番乗りを果たすか。
この中には公孫賛軍、および劉備軍は含まれていない。
初戦での失態が響いたのだ。
競争相手が減った事に諸侯は内心でほくそ笑んだ。
しかし、体面を繕う為なのか声を大にして一番乗りを名乗る訳にはいかず、結局は盟主たる袁紹、その親類である袁術、そして孫策と曹操が率いる軍が一番乗りの最有力候補となった。
高飛車、そして我が儘の袁紹が盟主として一番乗りを名乗り出たが、それは曹操によって牽制される。
曰く『敵軍が伏兵を敷いているかも知れないのに、無防備で入城するのは賢明ではない』
頭がアレだという彼女も流石に、それを理解するだけの頭はあったようだ。
無論、彼女を牽制した曹操も危険な一番乗りを名乗る気は更々なかった。
誰が泗水関一番乗りを果たすか、その軍議は平行線を保ったままであったが意外な人物が名乗りをあげた。
孫策である。
しかし、孫策は不本意ながら袁術の客将となっている。
当然のように、主人を差し置いて名乗り出るとは何事か、と袁術は怒鳴り散らした。
すると孫策は、それも一理ある、と呆気なく関の一番乗りを彼女に譲り渡し、軍議は終了した。
「…まさか、こうも簡単に上手くいくとは…」
「あら冥琳、私の腕前を疑ってたの〜?」
「お前の場合、勘だけ頼りにしていたのだろう?」
「ブ−ブ−、何よそれぇ?失礼しちゃう」
「…とにかく、これで韓甲のいう、忠告とやらの通りに出来たな」
「…周瑜よ。今更なのじゃが、軍師たるお主が、よく何処の馬の骨とも知らぬ奴の忠告を聞き入れたのう?」
孫策軍陣営で会話するのは孫策こと雪蓮、周瑜こと冥琳、そして黄蓋こと祭である
追記になるが三名とも大層立派なバストの持ち主で、とある副官ではないが是非とも何cm…否、出来るならばスリーサイズを教えてもらいたい!!
…んんっ!話がそれてしまい大変申し訳ない。
「私としても黄蓋殿の言う通り、素性の知れぬ相手の忠告を真に受けたくはなかったのですが…」
「策殿が頑なに、その者の肩を持った…という訳じゃな?」
「もうなによ〜?二人して私の勘を疑うわけ?」
「…雪蓮、軍師という者は“勘”には頼らないのよ」
「じゃあ私の勘が外れた事はあったかしら〜?」
そう言われると完全に否定する事は出来ず、彼女の長年の親友は溜息を吐いた。
「で、明命から報告はあったのか?」
「えぇ。再三の調べで敵勢は居なくなっている事が判明した、と」
「ふむ…なら泗水関は放棄された、と見て間違いないじゃろうのぅ」
「…そうでもないようです」
「…どういう事じゃ?」
ズレた眼鏡のブリッジを人差し指で上げた冥琳が説明を始める。
「関内に潜んでいる兵がいる、とか」
「人数は?」
「一名、だそうです」
「なんじゃと?」
その報告に三人は疑問に思った。
伏兵を敷くなら最低でも一個小隊が必要だ。
なのに、残っているのは一名だけ。
合点がいかなかったのだ。
「…意図が掴めんのぅ」
「えぇ。…それに何故、泗水関を放棄する事を敵方である我々にだけ伝えたのか…」
「それなら韓甲が教えてくれたわ」
「なんと言っていた?」
「“気まぐれ”だそうよ♪」
なんの解決にもなっていない答えに二人は脱力した。
「…でも、何か裏がありそうなのよねぇ」
「当然だろう。しかし…何故、袁術軍を先鋒に入城させる事を指定したのか…」
「もしかすると…袁術ちゃんからの独立を手伝ってくれる気だったりして♪」
「…それでは韓甲に益はないだろう」
冥琳は頭痛がしてきたのか頭を抱える。
「判らん事はいくら考えても判らん。…ほれ、その袁術軍が動き出したぞ」
悪趣味な銀色の鎧に牙門旗は袁を掲げる袁術軍が泗水関に向かい進軍を開始。
なんの抵抗も受ける事なく城門が開けられ、先頭を行く部隊がそれをくぐった瞬間、轟音が野に響き渡った。
それに混じるのは怒声に悲鳴。
轟音と共に城門が崩れ落ち、大小の瓦礫が袁術軍に降り注いだのだ。
「なっ何が起こったのじゃ!?」
「城門が…」
「これ、ね…韓甲が言ってたのは」
時を同じくして、泗水関内部。
片手に収まる程度の電子装置を掴み、戦闘服に身を包んだ黒狼隊の兵士が任務完了を確認すると、弾帯からトランシーバーを取り出す。
「…こちら一等軍曹、任務完了です」
<了解。こっちは虎牢関に到着した。パーティーの準備があるからな、早く戻れよ。OVER>
「了解。OUT」
作戦は予定通りに進んでいるな。…予定外の事も色々あったが。
通信を終えてトランシーバーを弾帯に戻す。
泗水関は抜かれて良かったのだ。
いや、むしろ抜かせる必要があったが正しい。
いつまでもジリ貧に消耗戦を続けていたら、連合軍は別の進撃ルートから洛陽を目指しかねん。
泗水関の城門にC4を仕掛けたのは…保険、が適切だろう。
少しばかりのお灸と、進軍を遅らせる為に必要だったのだ。
ただし、向こうの犠牲は最小限に抑え、あくまでも進軍を遅らせる。
…これが難しいのだ。
だが…まぁ上手くいったので問題は、それほどないか。
何せ、折角のパーティーに御招待するのだ。
セッティングは完璧にして、お客様方を出迎えなければならないからな。
瓦礫の撤去には、一日ほど掛かるだろう。
時間はたっぷりある。
これでも俺は来客を丁寧に出迎える方だと自負している。
お客様に御満足いただけるようなパーティーにしないとな…。
次話予告、ちょいとネタ爆発の回になるやも。
だがしかし…こうも、あの台詞が似合うとは…少佐のクセに。