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恋姫†無双-外史の傭兵達-  作者: ブレイズ
第十部:Operation Vigrid
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す、すっごく久し振りに投稿するんで……ドキドキします。

手術後(活報参照)のリハビリもやってるけど小説のリハビリもしないとなぁ……

「−−−……んっ……」


払暁にはまだまだ早い時間−−テントの中で目覚めたのは和樹だ。


半開きの眼のまま野戦用の簡易ベッドからムクリと起き上がる。


「…………」


厚手の靴下を履いた両脚を地面へ下ろして立ち上がるとシャツの裾から片手を突っ込んで腹を掻きながら空いている手で顎を擦ってみる。


−−手のひら全体にザラザラした感触がした。


「……剃るか…」


テント内がランプの灯りで照らされている中、ベッド下でいつの間にか丁寧に磨き上げられ光沢を放つ黒革の半長靴へ脚を突っ込み、靴紐を固く結ぶ。


立ち上がり寝起きでまだ本調子ではないノロノロとした挙動で歩けば彼の後に続いて影も同じく動いた。


水を張った洗面器まで歩み寄ると和樹は愛用のシェービングクリームのチューブを取ってキャップを外すと手のひらへ適量のクリームを捻り出した。


それを顎周りや頬−−兎に角、無精髭の感触がした箇所全体へ満遍無く塗りたくる。


やや時間を置き、髭が柔らかくなった頃を見計らいT字カミソリを取った。


その刃を洗面器の水へ浸した後、まずは頬へ宛行い−−ゆっくりと肌に沿って引いていく。


「−−韓甲。起きてるか?」


テントの外から華雄が和樹へ呼び掛けた。


彼は短く応とだけ返答する。


すると彼女が布扉を捲り上げ、テントの中へと入って来た。


「孫策からお前と呂猛に呼び出しが掛かった。…顔を見たい、と」


「…判った。相棒へは伝えたのか?」


「既にな」


「そうか…」


和樹が髭を剃る後ろ姿を華雄は見詰める。


その身支度がまるで彼女には−−死地へ向かう武人が自分の亡骸を無様な格好にしないようにするモノに見えて仕方なかった。


彼女が押し黙っているのが気不味かったのか和樹は髭を剃りながら華雄へ向かい声を掛ける。


「……お前とこうして二人っきりで話をするのも…随分と久しい気がする」


「…まぁ…そうだな。…この際だ…正直に白状しよう。……振られた手前、顔を合わせるのが少し、な…」


「…道理で、お前に避けられる訳だ。…執務室で仕事していても顔すら見ようとせんから……少し寂しかった。…アレは少々、堪えたぞ」


「…済まなかった…」


「謝るな。謝られると振った俺が辛い」


「うむ……」


それっきり会話は途切れ、テントの中に沈黙が落ちた。


時折、和樹がカミソリの刃に溜まった髭を洗面器で洗い流す微かな水音のみが響く。


「……これで良いか」


髭が剃り終わり、和樹はカミソリを洗うとそれを置き、タオルで顔を拭った。


それも置くと先程まで横になっていた簡易ベッドへ戻り、戦闘服の上着を着込む。


襟を正した後、弾帯を腰へ巻くと、垂れ下がるY字型サスペンダーをショルダーループのボタンを外し、中へ押し込んでから留める。


巻いた弾帯から下がっている二つのフックへ愛刀の佩環を通そうとすると−−


「…手伝おう」


「あぁ…」


−−傍らまで来た華雄が彼の愛刀を差し出した。


それを和樹は受け取ると二つのフックへそれぞれ愛刀の佩環を通して固定する。


粗方済んだ装具の取り付け具合を確かめていると、彼女が今度は和樹のコートを手に持って広げている。


和樹は彼女へ背中を向けつつコートの袖へ腕を片方ずつ差し入れ、華雄が肩までコートを羽織らせた瞬間−−


「−−ッ………どうした?」


−−彼女が和樹を背後から抱き竦めた。


それを不審に思って彼が華雄へ声を掛けると彼女が身体を振るわせる微かな振動が伝わる。


「…なんで…も…ない……少し…少しだけ…このまま……」


否応、いずれの答えも返さず、和樹は沈黙し身動きもせず、華雄の要望通りにしてやる。


約一分後、和樹の肩と胸へ回されていた華雄の腕が離れ、拘束が解かれた。


「…いきなり済まなかった。……ほら…」


振り向くと華雄が彼へ野戦帽を差し出しつつ見上げている。


「あぁ…ありがとう」


和樹は彼女の双眸が潤み、充血している事に気付いたが−−敢えて気付かぬ振りをして野戦帽を受け取り、それを被り、位置を整えた。


これで一切の準備が整った。


ふと彼はテント内の一画−−ランプを置いている小さな机へ歩み寄り、簡易の報告書を文鎮代わりに置いた吸い殻が溜まっている灰皿の下から引き抜く。


仮眠をする寸前に中尉が持って来た兵士達への教導に関する最初にして最後の報告書だ。


受け取ったは良いが、彼は眼を通す事なく一服を済ませた後、仮眠に入ってしまったのだ。


「“付け焼き刃であるが銃火器の取り扱いに関しては及第点と言える。実戦で通用するかは不明瞭。されども意気軒昂なり"。……悪くはない、か」


サインを済ませ、その報告書を再び机上へ置いた後、彼は呟いた。


「…さて…いくか…」


立て掛けていたAK-74を取って、テントから出ようとした布扉を捲り上げた瞬間−−何を思ったか和樹はその行為を取り止め、華雄を振り向く。


「…なぁ華雄」


「どうした…?」


「どうせ顔を見るのも最後だ。最後くらい…俺の事を真名で呼んでくれんか?真名を教えておいて呼んでくれんのは残念ながらお前一人だけだ」


「…それが……お前の望みなのか…?」


「人間ってのは死を覚悟すると他人にとっては本当にどうでも良い事も気になるようでな。まぁ…俺の場合はそういう事らしい」


「…………」


口調こそ軽口−−だが双眸は真剣なまでに華雄を見詰めていた。


その望みを叶えようと彼女は頷いた。


頷いたは良いが、躊躇いがあるのか何度も何度も言い淀む。


ややあって−−−


「…かず…き…」


−−やっと言葉になったそれは確かに彼の真名だった。


紡がれた真名を聞いて和樹は感慨深く溜息を零し、瞑目した。


「…あぁ……やっと…キミの口から聞けた…素直に嬉しく思う…」


本来の和樹の癖が垣間見えた。


和樹は前世で親しくなった女性に対し“お前"という言葉は使わず“キミ"を使っていた。


この外史へ飛ばされて以来−−初めて使った事になる。


「…これで心置き無く…」


独り言を紡ぐと和樹は今度こそ躊躇いなくテントの外へ出た−−






ーー話は三日前に遡る。



「−−では概容について説明させて頂きます」


全滅をもっての作戦成功、と只事とは思えない前置きを述べた後、中尉は気負う事なく大天幕の机上へ広げられた地図の傍らに置かれていた長い笹で作られた指示棒を取る。


「我々、黒狼隊ならびに孫呉の歩兵によって特別編制する一個連隊は、この野営地から西へ……この近辺まで移動します。この作戦が裁可され次第、当方の施設小隊が予想される会敵地点へと飛び、簡易ながらも陣地を構築。陣地といってもC4で地面を爆破して穿った堀を塹壕として利用するだけですが。なお、塹壕は横三列に分けます。最前列の塹壕を第一塹壕、次を第二、第三と区分。ならびに第一塹壕の前には馬防柵代わりの有刺鉄線を巡らせ敵騎兵隊の突撃の威力を落とす算段となっております」


指示棒で会敵が予想される地点を示しながら中尉は駒を取り、そこへ駒を置く。


「この地点は丁度、なだらかな坂となっている模様なのでそれを利用した野戦陣地となります」


つまる所、階段のような形で塹壕を構築する訳だ。


一段目に塹壕を作り、二段目と三段目にも同じく塹壕を掘るといった具合である。


これで塹壕同士に高低差が生じ、誤射の可能性が少なからず減退する。


「…質問があるのだけど…発言しても良いかしら?」


「どうぞ」


食い入るように地図を見詰めつつ中尉の説明を聞く諸将の中で声を挙げたのは華琳だ。


説明の途中で発言されたのを特に気を悪くする事なく中尉は許可する。


「…和樹は迎撃と足止めを行う、と言ったけれど……五胡軍を退却…もっと言えば全滅か撤退させる事は可能かしら?」


「難しい、とだけ申し上げておきます。相手は300万の大軍。一気呵成に攻め込まれれば……我々の処理能力を軽く越えてしまいます」


「我々が使用しているAK-74は一分間に600から650発の銃弾を撃ち出せます−−が必中を期する為には引き付けなければならない。緊急で招集した火器の練度の低い兵達ならば尚更」


「AK-74とGew98の有効射程距離は互いに500m。その距離ならば……既に敵騎兵隊による突撃が始まっている頃合いだ」


馬の速さは品種や騎乗する兵士の装備によって変わって来るが概ねで常歩で分速100m。速歩で分速200m。駈歩で分速300〜500m。襲歩で分速500〜1000m。


そして騎兵隊による突撃手順(無論、これも各個の軍によって違うが)は概ねこの通りだ。


1km地点 停止。隊列変換。突撃態勢へ。


600m 常歩〜速歩。ゆっくり歩き出しながら速度を上げる。隣接する騎兵と間隔を詰める。


400m 駈歩。速度が上がった所で突撃号令。


300m 襲歩。バトルクライを叫びながら突撃開始。


余談だが練度の高い突撃では横一列が隙間なく並ぶび騎兵同士の鐙や足が当たりカチャカチャと音が鳴るとか。


それほどまで互いに間隔を詰めた密集隊形で突撃するのである。


「−−確かに一個の集団となって向かって来てくれるのは有り難い事です。集中砲火を浴びせられます」


「ただし……その余裕があるのは我々のような者だけ。練度の低い兵達ならば小便を漏らすほど怖れて戦意喪失するでしょう。下手をすれば逃亡の可能性すらある」


「−−たった一瞬の躊躇が銃爪を引く指を鈍らせたら……敵が雪崩を打って塹壕まで突入して来る。そうなれば多数に無勢」


畳み掛けるように和樹達が諸将達へ声を掛ければ彼女達は唸りつつ視線を足下へ向けた。


「……迫撃砲と戦車…あれらや空からの一方的な攻撃は?」


意見を述べたのは冥琳だ。


眼鏡のブリッジを指で押し上げつつ彼女が問い掛けるとそれに将司が応じる。


「まぁ…一定の効果は望めるでしょう。……が、いつの時代も戦場で最後の決を担うのは我々、歩兵です。骨幹である歩兵部隊が死に体になれば……戦線は瓦解し突破される。だからこそ死に物狂いで戦わなければならない…」





(ーー確かに俺だって自衛隊じゃ新教の班長やったり、レンジャーとかの教官・助教やったけどさぁ…)


心中でボヤきつつ彼ーー前田一曹は鋭い視線を緊張の面持ちを浮かべる眼前の者へ向けた。


「ーー番号00132、銃!!」


「ーーじ、銃っ!!ま、まるまるひとさんにっ!!銃!!」


「ーー次っ!!」


背後に山と並べられたGew98の1挺ずつを指揮下となった孫呉の兵士達へ授与するのは骨が折れるモノだ、と前田一曹は心中で付け足した。


「ーー番号00133、銃!!」


「ーー銃っ!!まるまるひとさんさんっ!!銃っ!!」


「ーー次ぃ!!」


Gew98ーー歩兵銃を片手で無造作に掴みつつ眼前へ突き出す。それを相手は両手でしっかり握把を掴みら授与する者から奪うが如く勢い良く取る。


前田一曹だけでなく他の黒狼隊の面々も歩兵銃の授与を呉兵に対して実施していた。


他の場所では戦闘服、半長靴、銃剣や背嚢、携帯円匙の類いといった装具一式を授与させている。


(いくらなんでも……三日足らずで戦闘出来るようにするって無茶じゃね?)


前田一曹が属していた陸上自衛隊では新隊員教育の期間を前期と後期に分けて行っている。前期教育は自衛官として必須の基本教練や体力錬成、小銃の分解結合、野戦での基本行動等。後期教育は各職種に分かれての特技課程。概ね、こういった具合で教育を施し、各部隊(中隊)へ配置となるまでに半年間を要する。


(国家存亡の危機の事態でも最短で2週間は必要だぜ。ヘタクソに真後ろからケツ撃たれたら洒落になんねぇ)


尚もボヤく前田一曹だが、次に歩兵銃の授与を受けるため前へ進み出た青年を見て動きが止まる。


「……お前は確か……」


「はっ!!調練で班長の分隊にいたモノです!!」


「あぁ……そういや……」


こいつ腕立てでへばってたなぁ、と前田1曹は思い出したーーが残念ながら名前は思い出せなかった。


手が止まっていた事に気付き、彼は背後に控えていた小隊の部下から歩兵を受け取り、刻印されている番号を確認する。


「班長と共に戦う事が出来て光栄ですっ!!」


ーー感極まった台詞が呉兵の口から吐かれた瞬間、一曹の動きが止まる。


似た台詞を思い出したのだ。


(アレは……)


それは彼が三等陸曹になったばかりーー陸曹教育隊での初級陸曹課程が終わり中隊へ配置となった翌年、前田一曹は新隊員教育隊の班長を命ぜられたのだ。


高等工科学校を卒業した彼は、それと時を同じくして陸曹教育隊へ入校。つまりは二十歳になるかどうかの年齢で三等陸曹の襟章を付けた訳だ。


着隊日に教育隊の門戸を叩いて来た新隊員達は自分とほぼ歳は変わらないーー下手をすると自分よりも年上の者もいた。


そんな彼等を若造で、しかも三曹に成り立ての自分が一端の自衛官となる為の教育・指導が出来るのかーー彼は散々と新隊員教育課程の期間中、悩み続けた。

それは胃痛が起こる程までにである。


体力不十分で懸垂が全く出来ない者、小銃の分解結合が中々覚えられない者、反抗意思があり命令を聞かない者ーー彼が受け持った班(分隊)は問題児が多かったのだ。


それをプラスへ持って行く為、前田一曹は自身の教育方針を掲げた。


“言葉は要らない、結果を示せ”


その教育方針を班員達が外出している時に彼はコピー用紙へ書き綴って班の居室に張り付けた。


“これはアイツらに宛てた言葉以上に俺自身へ宛てた言葉だ”


そう言い聞かせ、彼は翌週からの教育へ臨んだ。


陸曹は陸士の模範となれーーそう彼は陸曹教育隊で叩き込まれ、それを実践したのだ。


新隊員達が彼の教育方針が書かれたコピー用紙を見て何を思ったかは分からないーーだが翌週の訓練では態度や訓練に臨む姿勢が変わっていたのは確かだ。


そしてーー新隊員教育課程の約三ヶ月間は終わり、巣立ち。


雲ひとつない良く晴れた日だったと覚えている。


彼が受け持った新隊員達は前田一曹が当時属していた普通科連隊の駐屯地ではなく、全員が別々の駐屯地へ送られ後期の特技課程を受ける事となった。


『ーーあと少しで班の指揮を解くが班長としてお前達に言いたい事がある!!』


巣立ちの直前、彼は班員達を整列させて訓示を行った。


『良くこの三ヶ月間、俺の指揮下で動いてくれた!お前達も辛かったろうが、俺や班付、教育隊長、区隊付も辛かった!罵詈雑言はお前達を叱咤激励するモノだった!決して憎かった訳じゃない!』


そう訓示するが班員達はそれに返事をする余裕はない。


ーーなにせ全員が泣いていたからだ。


『返事はしろ、と教えただろう?……良いか、お前達は同期だ。同期は助け合え。バラバラになっても電話して俺や班長達の悪口して盛り上がれ。同期は大切にしろよ。それだけは絶対に忘れるな。以上が俺が班長として最後にする教育だ』


『はいっ!!』


涙声の返事が大きく木霊した。それを聞いて彼は姿勢を正し、班長として最後の命令を下す。


『ーー今後は各員ともここで学んだ事を忘れる事なく、一端の自衛官として精勤するように求める!!以上をもって新隊員教育隊 三区隊二班の指揮を解く!!分かれ!!』


『班長に対しーー敬礼っ!!』


一子乱れぬ挙手敬礼を受け、彼も最高の敬礼を一人一人の顔を見て答礼する。


皆、着隊した頃とは比べものにならないほど成長した。それを見て、彼は腕を下ろす。


『ーー直れっ!!』


『お疲れさんっ!!』


『お疲れ様でしたっ!!』


本当に最後となる班での終礼が終わり、班員達はとうとう声を上げて泣き出す。中には互いに抱き合ったまま泣いている班員までいた。


『頑張ったな佐藤。加藤、お前はもう少し腕立て頑張れな?体力検定が大変だからよーーおい、松田。お前、でっかい図体して泣きすぎだ』


今までの態度とは違い、班員達の苦労を労いつつ頭を撫でてやれば泣き声は一層大きくなった。


『ま、前田班長…!!』


『班長じゃねぇって。前田三曹だからな?』


笑顔で訂正を促すと涙声の班員が突如、流れ出る涙を拭いもせずまま姿勢を正した。


『じ、自分は前田班長の班員で嬉しかったです!!三ヶ月間、ありがとうございました!!』


『ありがとうございました!!』


『あっありがとうございました…!!』


次々と大声で叫ばれる感謝の言葉に前田一曹は呆気に取られたという。


(礼を言うのは俺だよ……良く付き合ってくれたな)


ーーそういうのは照れ臭くて彼は乱暴に“元”班員達を抱き寄せて頭を撫で回すだけだったとか。




(ーーつーか…新教の班長終わって…次はレンジャー行ったんだよな俺……良く良く考えたら怒涛の一年だった……)


色々と濃密すぎる過去の事を思い出し、前田一曹は溜息を吐いた。


改めて歩兵銃の銃番号を確認する。


「ーー俺は歩兵小隊で小隊軍曹ってのをやってる。仕事は小隊長の補佐。そして部隊長の身の回りの世話もしてる。半長靴磨きとかな」


「は、はい」


「下士官の仕事ってのは下の兵隊を良く掌握して、命令に服従させることだ。言っておくが俺はお前達に一端の働きを望んじゃいない。というか無理だろう」


うそぶくと若い呉兵の顔が曇る。やっと教官達と同じ戦場で共に戦えるモノと思っていたからだ。


「ーーだから馬鹿でも判る命令を下してやる」


「……?」


「言葉は要らない、結果を示せ。そして俺を見ろ、俺に着いて来い。以上だ……返事は?」


「了解しました!!」


その返答を聞いて前田一曹は歩兵銃を呉兵の眼前へ突き出した。


「ーー番号00134、銃!!!」


突き出された歩兵銃を掴んだ呉兵は、それを一曹から奪い返すように勢い良く引っ張った。


「銃っ!!番号00134、銃っ!!」

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