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恋姫†無双-外史の傭兵達-  作者: ブレイズ
第十部:Operation Vigrid
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久々の投稿だ−−!!!


遂に最終局面に…やっと…やっとだ…長かった……この戦争(物語)にも終わりが見えてきた……。



−other side−




−−赤壁で大敗を喫した曹操軍は撤退を開始。


連合軍の追撃を躱しつつ敗残兵を纏め上げ、本国からの増援を吸収した曹操軍は荊州の新野城へ立て籠った。


その数、約45万名。


かつての威容を誇った大軍勢の姿とは思えない程、兵力は激減し、士気と戦意は落ち込んでいる。



一方の劉備・孫策連合軍の兵力は合計して約28万名。


依然として兵力差には開きがあるものの赤壁での緒戦時に比べれば遥かにマシだ。


連合軍は新野城の南10km地点で野営を設け、最後の確認作業を行っている。







「−−決戦は野戦となる可能性が高いですね」


連合軍の本営で行われている軍議に参加している幕僚達を代表して朱里が戦闘の予想を述べた。


「野戦?有利な状況を捨ててまで?」


「はい。我々は新野城に入城した事がありますが…40万を越える軍勢を収容するだけの規模ではありません」


「…となると……城の近隣でって事になるのかしら?」


「おそらくは。万が一の場合、その方が退却も迅速でしょうし」


「それから籠城へ持ち込む、という手もあるな」


彼女達の話を聞きながら蜀側の代表の一人である一刀は地図を載せた長机の向こうで屯す孫呉の代表達−−その彼女達の背後に控えている和樹へそっと視線を送った。


両腕を組み、被った野戦帽の庇が目元を隠してしまっており表情が見えない。


形容し難い威圧を感じるのは慣れて来たが−−それでも時折、和樹から向けられる鋭い双眸で身を竦めてしまう。


出来る事なら、叶うならば、この場では自分を見ないで欲しいと一刀が願っていた途端−−


「−−?」


−−注視されている視線に気付いた彼は野戦帽の奥から鋭い双眸と視線を発生源である一刀へ向けた。


慌てて一刀が視線を外すが−−和樹は無言で見詰めて来る。


自分を刺すような視線を感じ、彼の背中に冷や汗が流れ落ちた。


「………」


やがて興味を失ったのか、それとも面倒臭くなったのか和樹は彼から視線を外す。


それを感じた一刀は−−内心で深々と安堵の溜息を吐いた。


和樹の視線をモロに浴びた彼は、前田さん達って凄いなぁ…、と素直に感じてしまう。


「−−では、軍議はここまでという事で宜しいかな?」


冥琳の発言を聞いた一刀は、やっと重苦しい雰囲気から抜け出せる事に全力で賛同したかったが−−



「−−申し上げます!!斥候からの報告であります!!」


−−天幕の外から響いた報告の口上で、一刀の願いは虚しく霧散した。


それは−−曹操軍の出陣。










「−−現状の全兵力を以ての出撃ですな。…前軍に夏侯の牙門旗が二つある」



馬上から敵軍の展開状況を双眼鏡を用いて確認した和樹は隣で騎乗する雪蓮へその旨を告げた。


曹操軍は籠城を捨て、野戦での総力戦の構えだ。


「和樹、こっちに勝ち目は?」


「我々の火力で圧倒すれば勝機は十二分に。然れど敵も馬鹿ではない。なにかしらの算段は考えている筈です。…歩兵に分厚い盾でも装備され突撃された場合…小銃弾では充分な効果を得られないかも知れません」


「戦車とかは?」


「無論、砲撃を加え、ナパームも投下致しますが……進撃を遅滞させるだけでしょう」


「玉砕覚悟。死に物狂いで遮二無二に突っ込んで来るって訳か…」


「えぇ…間違いなく。戦死した将兵の屍を乗り越え、踏み越え…最後の一兵まで戦う。野戦を挑むのは、その意思の発露ではないかと」


考察を終えた和樹は双眼鏡を弾帯のポーチへ仕舞い、改めて愛馬の手綱を握ると陣形の展開を始めた曹操軍へ視線を遣る。


「まさに決戦、ね…」


「えぇ」


「……ねぇ和樹」


「…なんでしょう?」


雪蓮に声を掛けられたが、和樹は彼女へ視線を向けず返事だけをする。


「あの話、考えてくれた?」


「…赤壁後にされた、私を驃騎将軍へ任ずる、という話ですか?」


「うん。あと将司は車騎将軍にね。…何処かの太守にするのも良いかもだけど」


「…………」


「…もう貴方達なしでは孫呉は語れなくなったわ。それだけの戦功を立てて来たのだから当然の処遇よ……むしろ遅かったくらい」


「………」


「…返事…聞かせてくれる?」


期待を込めた視線と声が和樹へ向けられる。


それに彼は表情と声音を変えず−−


「申し訳ありませんが、お断り致します」


−−それを拒絶した。


それを聞いた彼女は悲しげに顔を歪ませ−−表情を隠すため俯く。


「…理由…聞いても良い?」


「我々は傭兵、それが理由です」


「…貴方は故郷を捨てて傭兵になり…私達に雇われるまで転戦して来たのよね?」


「えぇ」


「帰る場所とか帰りを待ってくれる人が欲しいとかは…考えた事ないの?」


「残念ながら」


「そう……」


申し出を断る和樹には何の表情も浮かんでいない。


それを横目に見た雪蓮は眼を伏せる。


「…契約は覚えていらっしゃいますね?」


「…えぇ。“孫呉が黒狼隊を傭うのは、組織的戦闘の継続が不可能になった時まで。そして天下が平定されるまで"。…ちゃんと覚えているわ」


「結構。…この戦に勝てば、その契約は果たされたとみなして大丈夫でしょう」


「え…?」


突然の言葉を聞いて顔を伏せていた雪蓮が弾かれたように和樹を見る。


「勝利を以て孫呉を抜けさせて頂きます」


「ま、待って!!勝手に決めないでよ!!」


「何故?」


「な、何故って…」


いきなりの申し出で彼女の頭は状況整理に追い付いていない。


畳み掛けるように和樹が言葉を告げる。


「赤壁後に駐屯地の撤収も完了しております。まぁ格納庫だけは爆破でしたが。…徐盛には置き手紙を。それなりの金品を残しましたので当分は大丈夫でしょう−−」


「−−そんな事じゃないわ!!」


思わず激昂した雪蓮に周囲の将兵の視線が向けられる。


「…伯符殿、開戦前です。士気を下げるような事は……」


「させてるのは和樹でしょう!!?どうしてそんなこと言うのよ!!」


「…とにかく落ち着いて頂きたい」


「そんなこと言って良く冷静で居られるわね…!!ほんっと…羨ましいわ…!!」


「……それは誉め言葉で?」


「そんな訳ないでしょう!!……っ……はぁ……」


いきなりの事で混乱した雪蓮だが、まずは落ち着こうと思い至り、顔面を手で覆いつつ深呼吸をした。


「……戦後にもう一度、話し合いましょう。……戦力が抜けられると再編が面倒だから……」


彼女の本心は悲鳴を上げている。


本当はこんな事を言いたいのではない、と。


「……了解しました。自分は部隊の指揮へ戻ります」


「…判ったわ」


「では失礼します」


右手を額に翳す挙手敬礼を済ませると和樹は黒馗の腹を軽く蹴り、前へ進み出る。


彼の姿が遠くなったのを見届けた雪蓮は−−


「……バカ」


−−ポツリと悪態を吐き出した。



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