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恋姫†無双-外史の傭兵達-  作者: ブレイズ
第八部:日常という有り触れた日々
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最初に言っておきます………ゴメンなさいm(__)m


そして……キャラ崩壊あり。





〜other side〜



「……えっと…野菜、調味料、肉、米…こんなものだな…」


建業の大通りに軒を連ねる商店の数々。


その軒先に愛馬を繋ぎ、鞍へ買い集めた食材が入った袋を括り付けているのは孫呉将軍である華雄だ。


「…ふぅ…私も従卒か使用人を傭った方が良いのかも知れんな」


独り言を呟いた彼女が気になったのか愛馬が首を華雄へ向ける。


それを見て彼女は苦笑しつつ愛馬の首を跳ねるように軽く手で叩いた。


「いや、なんでもない。さぁ帰るぞ」


嘶いた愛馬の鞍へ颯爽と飛び乗った華雄は軽く腹を蹴った。


ゆっくりとした足取りで進み始める愛馬の揺れに身を任せていた彼女の眼に見慣れた格好をした集団の姿が飛び込んで来た。


−−黒狼隊の隊員達だ。


おそらく警邏の途中なのだろう。


労おうと彼女が進行方向を変え、分隊で編制された警邏隊へ近付いて行こうとした瞬間、その彼等が一斉に片手で片耳を押さえる仕草を取った。


それも彼女にとっては見慣れた光景だ。


あれは通信が入った時に見せる独特の行動である。


さして気にも留めなかった華雄だが−−いきなり彼等の表情が変わった事に気付いた。


最初は心底の驚きを見せ、次いで声を上げて笑い出したのだ。


「−−ええ〜!?マジすか!?」


「−−そりゃ凄ぇ!!盛坊の奴“大人の階段”を二、三段ぐれぇ飛ばして昇りましたね!!」


そんな会話が聞こえ、彼女は疑問に思った。


何故、徐盛の事で笑うのだろうと。


あの子は中々、見処があり、将来を楽しみにしているのに何故、と。


「−−あっ、でも隊長の命令って線もあるんじゃないですかね?」


「−−少佐の?」


今度は徐盛の主人である和樹の話題に変わった。


華雄は彼等が一体、なんの話をしているのか気になってしまうが−−それは直ぐに判明した。


「−−流石に隊長も女二人連れ込んで乱交するなんて事は−−」


「−−ッ!!?」


聞き捨てならない単語が聞こえ、彼女は愛馬の腹を蹴って拍車を掛ける。


−−まずは事情を聞かねばなるまい−−


と、彼女は出来るだけ冷静でいるように努める。


−−そうだ…勘繰られぬよう笑顔で…−−


尋問も最初は笑顔と朗らかな口調から始めるのが基本だ。


彼女の考え方は間違っていない。


「−−でもさぁ…隊長、かなり溜まってると思うんだよねぇ。ちょっと、はっちゃけたい気分なのかもよ」


「−−いやいや流石に……あ〜でもなぁ…」


「−−俺はありだと思うけ…ど………」


「…ん、どしたよ?」


隊員の一人が気付いたのか華雄へ視線を向ける。


それに釣られ、全員が彼女の存在に気付き、視線を向け−−固まった。


「−−すすすすっすままま…んんっ!!…済まんが、もう少し…詳しく聞かせてくれないか…?」


−−“笑顔”と呼ぶには、引き攣り過ぎの彼女の“笑顔”を見て。


それを見た彼等は−−心底、華雄の前から逃げたくなった。


現在となっては鬼神の如き戦い振りで大陸全土に名が知られる存在となった黒狼隊の精兵達が、一瞬でも心の底から逃亡を考えてしまった。


そんな事を考えさせる“笑顔”を見せられてしまっては、いかなる逆境にも屈しない彼等であっても口を割らざるを得ない。


「−−…そうか…なるほど…」


馬上で両腕を組む華雄へ通信の内容を掻い摘まんで説明した隊員達の背には滝のような冷や汗が流れている。


数回、頷いた華雄は今度こそ“朗らかな笑顔”を隊員達へ見せた。


「−−済まなかったな。任務に戻ってくれ」


「「「いえ、とんでもありません!!失礼しま−−」」」


「−−あぁ、待ってくれ」


さっさと逃げようと彼等は迅速な行動へ移ろうとしたが、突然の待ったが掛かる。


「−−韓甲だが……何処に居る?」


「おそらく屋敷だと思われます!!」


「そうか……判った。もう良いぞ」


「「「はっ、失礼します」」」


きっちり最敬礼をすると彼等は逃げ出した。


華雄へ一瞥もくれる事なく逃げ出した。


それはもう見事な挙動で逃げ出した。


一応、和樹へ忠告と謝罪を込めた通信を入れようと考えたが−−それは出来なかった。それだけは出来なかった。


理由は簡単だ。口を割ったのが誰かがバレてしまうからである。


だからこそ出来なかった。


彼等に出来る事は限られていた。


さっさと危険地帯から逃げ出す事と部隊長の安否を気遣う事だけである。


「−−ふっふふ……ふふふっ…ふはははは!!!」


双眸から感情の色が消え失せた華雄の哄笑が聞こえた瞬間、彼等は一気に駆け出した。


心の中で和樹の無事を切実に願いながら−−










〜和樹side〜




「−−韓甲ォォォォッ!!!」


「うおっ!?」


−−横薙ぎに振るわれた戦斧の強烈な斬戟を真後ろへ飛び退いて躱す。


……ってか、なんなんだ一体?


何故に華雄の奴は、あれほど殺気を滾らせているのだ?


…まぁ…そんな詮索は後にせんとならんな。


素早く縁側まで後退すると置いていた二本の太刀を手に取った。


「うぉぉぉぉぉ!!!!」


「ちょっおまっ−−畜生!!!」


“ちょっと待て、お前”と言いたかったのに呂律が上手く回らなかった。


が、そんな事を気にする暇は直ぐに無くなってしまう。


再び横薙ぎに振るわれた戦斧の刀線刃筋が向かう先は無論、俺だ。


だが、避けると−−縁側の軒を支えている柱が御陀仏になってしまう。


受けるしかないが−−鞘から抜く暇はない。


仕方なしに納刀したまま鞘で斬戟を受け止める。


「−−チィッ!!」


「−−今、舌打ちしたな!!絶対したろ!?」


「煩ぁい!!こんの痴れ者が!!成敗してくれる!!!」


鉄拵の鞘で良かったと安堵する一方で、こうも思った。


−−これって俺ヤバいんじゃないか、と。


こちとら病み上がりで体調は万全ではない。


それなのに−−華雄の奴は間違いなく俺の命を狙って来ている。


「…悪いが手加減は出来んぞ…!!」


手早く愛刀を帯へ差し込み、鞘から二本の白刃を抜き払った。


「……ん?流石に城下で刃傷沙汰はマズいんじゃ−−」


「−−問答…無用だぁぁぁぁ!!!」


「あぁもう面倒臭ぇ!!!」


縦横無尽に振るわれる斬戟。


それらを躱し、流し、時に受け止めて対応する。


「一応、聞いておくが…!!お前、俺に恨みでもあったか…!?」


鍔迫り合いへ持ち込んだ時、互いの顔を間近で見合わせつつ問い掛ける。


…ってか、コイツ…こんなに力強かったか…?


「恨み?それは−−貴様の胸に聞けぇぇぇ!!!」


「ホントに問答無用だな!?この猪が!!!」


「そう誉めるな!!」


「誉めてねぇぇぇ!!!」


全く会話が噛み合っていない。


こんなに面倒臭い立ち合いは初めてだ。


膂力で押し戻され、間合いを取っての対峙となった−−が、華雄は再び間合いを詰めて来る。


「−−喰らえぇぇぇぇ!!!」


「−−少しは容赦って言葉を覚えろ!!俺、病み上がりなんだぞ!!?」


「そんなこと知るかぁぁぁぁ!!!」


「言うと思ったよ、この猪が!!」


軽口を叩いているが……実際の所、一杯一杯だ。


流石に息が上がって来ている。


あと何合ほど体力が持つか判らない。


一刻も早く勝負を決めなければ危ない−−主に俺の命が。


戦場で死ぬなら良いが、こんな訳が判らん事で死ぬのはゴメン−−


「−−…グッ…!?」


−−…ヤバい…目眩が…。


これ以上はマズい…短期で勝負を決めなければ……!!


「−−…存外、持ったな。流石は韓狼牙、流石は黒狼隊部隊長と言えば良いか…」


「…阿呆…抜かすな猪女…!なに…まだまだ…まだ股座が熱り立つぐらい体力は余ってるぞ…!!」


「ふん…結構な事だ…だが−−」


華雄が戦斧を構え、顔を俺へ向けつつ身体を捻る。


「−−もう終わりだ。最期は全力の一撃で仕留めてやろう」


…膂力と戦斧の重量に合わせ、遠心力も加えるつもりか。


…確かに全力の一撃だろう。


純粋な破壊力で考えれば…おそらく華雄は恋殿と張り合える。


ならば俺は−−その一撃を利用するしかない。


「……来い、華雄。相手をしてやる」


「…抜かせ。相手を“してやる”のは私の方だ。−−参るぞ!!」


「応ッ!!」


突貫してくる華雄が戦斧を振りかぶった。


…まだ…まだだ…奴のリーチを利用する……もっと引き付ける……


「ウオォォォォォッ!!!!」


−−今ッ!!


氣を脚へ込め、爆発的な瞬発力を付けると同時に前へ出る。


華雄が用いるハルバートの如き長柄の得物−−金剛爆斧と言ったか−−は、そのリーチの長さが長所であると共に短所となりえる。


あれはどう考えても一対多を目的に作られた武器だ。


では、一対一ならばどうなる−−特に懐へ入られた場合は?


身を屈ませ、横薙ぎを回避し、一気に懐へ潜り込む。


「−−ふっ、読んでいたぞ!!」


「…だろう−−なっ!!」


−−無論、そんな事は奴も承知している。


華雄は柄を掴んでいた片手を離し、殴り掛かって来た。


その動作が行われるのを確認した刹那−−愛刀一本を手放す。


空いた片手で繰り出された腕を掴み、背負い投げの要領で−−奴を放り投げた。


華雄は得物を掴んだまま地面へ仰向けに倒れた。


そのまま奴の上へ馬乗りになり、首筋へ刃を当てる。


「−−殺ったぞ」


「−−クッ………ん…?」


息が上がり、汗が流れるが気にしていられない。


まずは……事情聴取だ。


「…ハァハァ…テメェ…ハァ…乱心したか…?」


「あ…あ…あ…あぁっ…!!!」


「“あ”?言いてぇ事ははっきり言いやが……ん?」


…妙だな…なにやら…掌に“柔らかい感触”が…。


……馬乗りになっているのは良い。


だが−−俺は地面に手を付いていたか?


確認の為、少し強く触ってみる。


「ふあっ!!」


…艶っぽい華雄の鼻声。


そっと……手を見てみる。


「……………」


……無言になるしかなかった。


俺はよりにもよって−−華雄の胸へ手を置いていた。


「なっ−−なにさらしとんじゃぁぁぁぁぁ!!!!」


「−−−−ッ!!」


−−平手で張り飛ばされ……意識を失った。






そして、こんなオチ。


あれぇ……和樹って…あんなキャラだっけ…?




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