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恋姫†無双-外史の傭兵達-  作者: ブレイズ
第八部:日常という有り触れた日々
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超久々に投稿してみます………が、ブランクのお陰でかなり雑な出来です(涙)






「−−……治ったつもりでも身体は正直だな……」


「旦那様、大丈夫ですか?」


「大事ない−−と言いたいが……少し疲れた」


「そこの茶屋で休憩しましょう。先に行って席を取って来ます」


「あぁ…」


リハビリ代わりの散歩で疲れてしまい、使用人へその旨を告げると徐盛は茶屋の軒先に駆け出して行く。


「……ふぅ……」


溜息を吐き出し、疲労で重い身体を両足で支えつつ、進行先にある茶屋へ向かい歩き出す。


向こうの世界で言うオープンカフェに近い造りの茶屋の軒先へ近付き、使用人の姿を探すと−−


「−−だっ…旦那様……!!」


−−居た−−


「−−和樹、ヤッホー♪」


−−約一名、この場に不釣り合いな御仁が座る席の前で固まって動けない様子で。


道理で客が少ない筈−−というか視界に入った店員も緊張の為か顔を強張らせているぞ。


「和樹達も休憩かしら?」


「…えぇ……少々、疲れましたので…」


「まだ体力が戻ってない証拠ね……早く座った方が良いわ」


「……では御言葉に甘えて−−」


伯符殿へそう言いつつ腰の帯から愛刀を鞘ごと抜き−−誰も座っていない卓の席へ腰掛けた。


「ちょっそれはないんじゃない!!?」


「……はい?」


「空気読めるなら普通は同席するでしょう!!?」


「……徐盛。それが普通なのか?」


「いや…僕に聞かれても……」


「……忘れてた……和樹が朴念仁だってこと…」


「…早々に失礼な事を仰る」


俺は何か悪い事でもしたのか?


少なくともここ数ヶ月は他人から恨まれる事をしていないぞ。


「むぅ〜……なら、私がそっちに行くわよ」


膨れっ面をした彼女は自身の卓へ置かれた湯呑を持つと席を立ち……俺が座る卓へ移動して来た。


「…清々しいほど席はたくさん空いているでしょうに…」


「こんな美女と相席できるんだからもっと嬉しそうにすれば良いのに」


「…あの………僕、少し席を外しましょうか?」


「いや是非−−」


「是非そうしてちょうだい♪」


「−−ここに居て……は?」


「では失礼します!!半刻ほど経ったら戻りますので!!どうぞごゆっくりぃぃぃい−−!!!!」


一気に捲し立てた使用人の少年は脱兎も真っ青な勢いで店を出て行ってしまい店内(?)には俺と伯符殿−−…いつの間にか客は俺達だけになっていた。


「………」


「♪♪」


無言の俺に対し、眼前に腰掛ける彼女は見事なまでの笑顔を浮かべている。


「なにか頼んだら?」


「……注文を」


「はい、ただいまぁぁぁぁ!!!」


軽く挙手し注文を頼もうとすると店員が“素晴らしい動き”で肉迫して来た。


「…茶を一杯頼みたい」


「はい!!お茶ですね!!?ご注文は以上で宜しいでしょうか!!?」


「あぁ…取り敢えずは…」


「畏まりました!!ただちにお持ち致しまぁぁぁす!!!」


……これは…間違いなく彼女による弊害だろう。


「あっ、注文追加♪お酒頂戴、樽でね♪」


「はいぃぃぃ−−−っ!!!」


「…………」


……もう何も言うまい……。










〜徐盛side〜




「………ふぅ……」


乱れた青い素襖の襟を整えた少年は溜息を零すと腰に差した黒漆塗の大脇差の柄を軽く一撫でし、歩き始めた。


「……旦那様にはあぁ言ったけど……どうしよう…」


そう呟いた少年は時間を潰すのに適当なモノはないかと大通りに立ち並ぶ商店を見る。


「……御飯、食べようかな−−−……ん…?」


大通りの喧騒に紛れる小さな−−本当に微かな“異音”。


「……裏路地……」


それが聞こえた方向へ視線を向けた徐盛の眼に飛び込んできた“別世界への入口”。


「…………」


一般人なら、足を踏み入れようとはしない。


万が一、足を踏み入れようモノなら−−まず“こちら”へは戻ってはこれないだろう。



「−−−−」


手を伸ばした先にあった大脇差が微かな鍔鳴りを響かせる。


「…………行くしかないよね……」


−−先程、聞こえた“異音”は悲鳴に近かった。


履いた草履が砂利と擦れる音を響かせ、彼は一歩を踏み出した。









「−−−へへへっ、ガキのクセに良い服着てンじゃねぇか」


「−−−なぁアニキ、ひん剥いたらオレにヤらせてくれねぇ?」


「あ?テメェ、こんなガキにも欲情すンのかヨ?」


袋小路に追い詰められ、震える少女を下卑た目付きで舐めるように見回す二人の男。


「こっこの下郎!!!わ、妾を誰だと思っておる!!?」


「知らねぇし知りたいとも思わねぇヨ」


「安心しな。死ぬ前に良い思いさせてやっからさ……」


「ぴぃ……!!」


男達が取り出した錆び付き、刃毀れした短剣を見て少女が小さな悲鳴をあげる。


「たっ助けてたも……七乃…!!」


「助けなンて来ねぇヨ。ここに迷い込んだのが運の尽きだと思いな」


「へへっ……」


舌舐めずりしつつジリジリと歩み寄る男達の手が少女へ伸ばされる。


「まずは、その綺麗な服を貰うか−−ッ!!?」


微かな風切り音と共に伸ばされた男の手へ斬戟−−とも呼べないそれが放たれる。


それを放ったのは少女の手に握られた一振りの懐剣。


「ちっ近寄るでない!!」


「−−このガキ!!!」


「−−−!!!?」


懐剣で斬りつけられた男が怒りのままに少女の頬を平手で打った。


少女の小さな身体は衝撃に耐えられず吹き飛び、握っていた筈の懐剣は金属音を奏でつつ地面を転がる。


「−−調子に乗りやがって……オイ、最初は俺にヤらせろ」


「へへへっ……アニキも溜まってたんだろ?」


倒れた少女を下卑た目付きのまま見下ろす二人の手が無抵抗の身体へ伸ばされる。


唐突にアニキと呼ばれた男の頭へ小石が当てられた。


「痛ッ!?……なんだぁ?」


振り向けば−−背後に立っていたのはそれなりに身形の良い少年。


「……最近のガキは礼儀を知らねぇンだな。オイ」


「あぁ。おっ…良い物、持ってんじゃねぇか」


男の眼に留まったのは少年の腰にある大脇差。


素人目にも高級な物だと判る逸品だ。


身動ぎしない少年に警戒心も抱かず歩み寄る男の手が少年の腰へ伸ばされる。


ふと少年の唇が微かに動く。


「−−−−ろ」


「あ?−−−−−へ…?」


男が大脇差を取ろうと身を屈めた瞬間−−少年の手が素早く動き、男の首筋から血が吹き出す。


「あっ!?あがっ……!!?」


男は突然の出血を止める為、首筋を両手で押さえるモノの指の間からは血が溢れて来る。


脚から力が抜け、両膝を地面へ付いてしまう。


少年の腰には黒漆塗の鞘しか残っておらず、抜き放たれた大脇差は手の内にあった。


少年はクルリと柄を逆手へ持ち直し−−無抵抗の男の胸へ突き刺す。


「−−ぐっ!!?」


肉が固まらない内に引き抜けば−−完全に力が抜けた男の身体が地面へ倒れ伏した。


「−−…その()から離れろと言ったんだ…」


「テメェ!!!」


残った男が怒りを露に手入れが行き届いていない刃毀れした短剣を握り、少年へ襲い掛かる。


「オラァァァッ!!!」


大振りの一撃を身体を僅かに横へずらす事で避けた少年はガラ空きになっている男の脚を払い、転ばせる。


「っ−−!!こンの!!!」


獲物を確認しようと転んだ男が身体を捻るが、眼に飛び込んで来たのは−−


「−−−ふっ!!」


「−−ウギッ…ガッ…ブッ…!!」


自身の喉へ突き刺さる刀身の煌めきだった。


逆手に持った大脇差の刀身を回していけば−−男は口から血の泡を零し、やがて身体を数回、痙攣させた後、動かなくなった。


「…はぁはぁ……ふぅ…」


息を吐き出した少年−−徐盛は喉から大脇差を引き抜くと懐紙を取り出し、血で汚れた刀身を拭い、鞘へ納める。


視界の端に映った立派な拵えの懐剣−−倒れている少女のそれを拾い上げた徐盛は歩み寄ると少女の身体を軽く揺さぶる。


「−−もし?大丈夫ですか?もし?」


「−−…ふみゅ…?」


揺さぶれば少女の眼が薄く見開かれ、その双眸が徐盛へ向けられる。


「…お主…は…?」


その問いに徐盛は答えず、代わりに懐紙を少女へ差し出した。


「血が出てますよ」


「ふぇ!?ど、どこじゃ!!?」


その言葉に狼狽する少女を尻目に徐盛は懐紙を自身の唇へ寄せ、軽く唾液を含ませると、それを少女の唇の端へ持って行く。



「なっ、なにをするのじゃ!!?」


「動かないで!」


有無を言わさぬ徐盛の語気に少女は唇を閉ざした。


口内が切れ、唇の端から流れ出た血を拭うと今度は鼻血を拭い去り−−徐盛は懐から取り出した手拭いを引き裂いて、その片割れを少女へ手渡す。


「鼻を押さえて下さい。歩けますか?」


「う、うむ−−…ふぇ…?」


少女は手渡された手拭いで鼻を押さえつつ立ち上がろうとするが−−何度やっても尻餅をついてしまう。


−−腰が抜けているようだ。


それに気付いた徐盛は少女へ手を差し出す。


「お手をどうぞ」


「……………」


掌に胼胝が出来た自身より一回りほど大きいそれへ少女は怖ず怖ずと手を乗せた。


すると腕が引っ張り上げられ、少女の身体が持ち上がる。


間髪入れず、徐盛は掴んだ細い腕を自分の肩へ回し、右腕を少女の腰へ添えて歩き出す。


「…何処へ…?」


「とにかく人目のある場所へ……ここは危ないですから……」


「……うむ…」


−−安心したのか少女の口から微かな嗚咽が響いた。










「−−ここまで来れば大丈夫です」


大通りへ出た瞬間、徐盛は肩を貸している頭ひとつ分ほど背の低い少女を見下ろしつつ安心させるように笑顔を見せる。


「もう歩けますか?」


「う、うむ…大丈夫なのじゃ…」


それを聞いた徐盛はゆっくりと支えていた手を離す。


−−少女の脚はしっかりと地面を踏んでいた。


「今後は気を付けて下さいね?」


「……判った…」


「…ところで…失礼ですが何故、あんな場所に?」


「それは−−−」


あのような状況に至った経緯を話そうとした時−−少女の腹が可愛らしく鳴った。


「……………」


「……………」


「……………」


「……………」


−−途端、無言になる二人。


互いの間を周囲の喧騒が支配する中−−徐盛は自身の頬を軽く指先で掻く。


「……お腹、空きましたか?」


少女は−−−顔を真っ赤にしながら一度だけ軽く頷いた。










「−−何処に行っちゃったんでしょうねぇ……」


大通りを歩きつつ周囲へ隈無く眼を配り、自分が捜索している人物がいないか確認する女性。


「……お嬢様ったら眼を離すと直ぐに何処かへ……」


心配気に女性は独り言を口にしつつも捜索を続ける。


「あぁ…でも迷子になって涙しているお嬢様を想像するだけで……ハァハァ……」


心配なのかと思いきや、今度は瞳を輝かせ“妄想”に耽り出した。


もう“色々と危ない趣味”を持つ女性である事はほぼ確定だ。


「−−誰が“色々と危ない趣味”を持っているんですか〜?」


−−貴女です貴女。っていうか地の文にツッコミを入れるんじゃありません。


色々とヤバいでしょう。それと指を差さない。


「−−別に良いじゃないですか〜。私、久しぶりの登場なんですよぉ〜?」


−−それとこれとは関係ありません。


ほらほら捜索に戻る。


「−−つ−ん。そんなに突っ慳貪な態度、取らなくても良いじゃありませんか」


−−地の文にツッコミ入れる貴女に言われたくありません。


私、地の文。貴女、登場人物。Do you understand?


「−−あ〜〜判りました判りました。……そんなんだから彼女さんに“冷たい”って言われるんですよ〜?」


−−待てコラ!何故、ここでそんな話を出す!!?


「−−本当の話じゃないですか〜。破局しても知りませんよ〜?」


−−テメェに“大きなお世話”って有り難い言葉を教えてやるヨ。それと俺は“ベッドの上では”情熱的だ!!


「−−…ハアァァア…」


−−え…なに?なんでそんなに盛大な溜息を?


「−−自分の胸に聞いてみたらどうですか〜?…さて、お話に戻るとしますか」


−−ちょっ、えぇっ!!話を脱線させたのアンタだよね!!?えっ、強引に戻すの!!?ってか、どうやって戻すのよ!!?


「−−頑張って下さ〜い♪」


−−こンの……!!


くっ………やりゃ良いんだろ、やりゃあ!!




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