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恋姫†無双-外史の傭兵達-  作者: ブレイズ
第八部:日常という有り触れた日々
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クッソォ……長く書けんぞ……どうしたと言うんだ…。







〜Other side〜





「−−−フッ!!」


曹魏の本拠地である許昌。


その城の中庭で剣を振るう人影。


深夜にも関わらず、鍛練をしているのは−−飛燕だ。


上着を脱いだ上半身には汗が浮かび、手に持つ剣を振るう度、それが雫となって飛び散る。


険しい表情のまま彼は一心不乱に剣を振るう。


もし観客がいるならば剣舞の如き、この鍛練を恍惚と見物するだろう。


だが−−彼にとっては、そんな評価はどうでも良い。


敵と戦い、それを殺す。


その技術を僅かでも向上させる為に飛燕は剣を振るう。


「−−−フッ!!」


正面へ鋭い刺突を見舞い−−動きが止まった。


「…フゥ…フゥ…」


荒くなった呼吸を整え、剣を鞘へ納めようとした時−−


「−−熱心だな」


−−唐突に部外者の声が彼の耳朶を打った。


「……妙才将軍…」


中庭に面している通路の欄干へ凭れ掛かりつつ自分を見ている秋蘭の姿を認めた彼は会釈をする。


水色の寝間着のまま彼女は中庭に降りて来ると、飛燕の下へ歩み寄る。


「……帰還してからそれほど経っておらんのだぞ。もう少し身体を労れ」


「…御心配なさらずとも自分は平気です」


「…そうか。…水だ、飲むと良い」


「……頂きます」


何処から取り出したのか秋蘭は彼に竹筒を差し出した。


それを受け取った飛燕は栓を抜き、竹筒を傾ける。


「…少し痩せたな」


「−−ふぅ……それは将軍もでしょう」


「…激戦と強行軍の後だ、仕方ないさ」


指摘されないと−−もしかすると指摘されても気付かない程度ではあるが、彼等の肉体は微かに痩せていた。


戦闘というモノは異常なほどエネルギーを必要とするのだ。


日々、過酷な訓練をし、戦闘を行う人間が総じて痩せているのはその為である。


「−−…ふぅ……」


「…一息つけたか?」


「はっ…ありがとうございます。ところで−−…いえ、なんでもありません」


「なんだ?途中で止められると気になる」


「…野暮だと思っただけです。お気になされぬよう」


竹筒へ栓をした飛燕は何故、彼女がこれを用意周到に持っていたのかが疑問になったが−−おそらく自分を見兼ねてだろうと短絡的だが結論付けた。


飛燕は手拭いで汗を拭きつつ秋蘭の横を通り過ぎると中庭に置かれている長椅子へ腰掛ける。


「……座っても良いか?」


「どうぞ−−…というより、これは自分の所有物ではありません」


「ふふっ…確かにな」


冗談と皮肉を交えながらも彼は秋蘭が同席する事を許した。


それを聞いた彼女は長椅子へ近付き、飛燕の横へ腰掛ける。


「……酷い戦だったな…」


「…………」


「…前軍の損害…まだ気に病んでいるのか?」


「……マトモな神経で気に病まぬ人間がいるのなら、是非とも御目に掛かってみたい」


「…………」


地面へ視線を落とす彼を秋蘭は横目に見遣る。


「……お前が気に病んだとて死んだ者達は帰って来んぞ」


「判っております。…自身の到らなさを歯痒く思っているのです」


「……そうか。…だが…いつまでも、そんな雰囲気をされては周囲の士気が落ちる」


「えぇ。…ですから、今宵までです」


「…今宵まで?」


「はっ。…夜明けには普段の張燕に戻っていられるよう努力します」


「…そうか……判った」


夜の静寂が満ちる空間には互いの微かな呼吸しか聞こえない。


「…そういえば…礼がまだだったな」


「…礼?」


「うむ。敵将−−呂猛の手に掛かりそうだった時、私を助けてくれた。礼を言う」


「……あぁ…あの時ですか」


頚を目掛け、振るわれた大太刀から彼女を救ったのは飛燕が放った一矢。


手傷を負わす事こそ叶わなかったが、それはコートの袖を直撃し、衝撃で将司は得物を落としている。


「礼を申される必要はありません。自分は当然の事をしたまでです」


「いや…それでも礼を言いたい。素直に受け取ってくれ」


「……判りました」


不承不承と頷いた飛燕を視界に収めた秋蘭は含み笑いを零す。


「……なにか?」


「ふふっ…いや、済まん。なんでもないよ」


「はぁ……」


何故、彼女は笑ったのか−−飛燕はそれを疑問に思ったモノの……別段、意味はないだろうと結論を弾き出す。


「……あぁ、そうだ」


「どうかなさいましたか?」


「良い機会だ。私の真名を預かってくれ」


「−−−は?」


「…不思議そうな顔をせんでくれ。命を救われたのだ。当然だろう」


言葉通り、当然の表情をする秋蘭に対し、飛燕は鳩が豆鉄砲を食ったような表情だ。


「私の感謝の印だ。預かって欲しい」


「…しかし…自分には真名が−−」


「無いのは承知の上だ。それにお前にも親しい者にしか呼ばせぬ名があるではないか」


「……………」


「どうだ?」


「……では、今後は自分を飛燕とお呼び下さい」


「判った。私の真名は秋蘭だ」


「…秋蘭様」


「うむ」


秋蘭は白魚の如き右手を隣へ差し出した。


それを見て飛燕は逡巡したが−−意を決し、自身も右手を差し出す。


節榑立った手と細くしなやかな手が空中で固く握られた。


「…改めてになるが、これからも宜しく頼むぞ……飛燕」


「…こちらこそ宜しくお願い申し上げます…秋蘭様」






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