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恋姫†無双-外史の傭兵達-  作者: ブレイズ
第一部:乱世と反董卓連合
10/145

08


お気に入り件数が約一週間で126…恋姫人気って凄い。





「…“天の御遣い”?」


「せや。管輅っちゅう占師がな、そんな予言をしたんや」


「『流星は天の御遣いを乗せ、乱世を鎮静す』ねぇ…」


「…眉唾な予言だな」


「その予言は大陸中に広まっている。まぁ私も信じていないが…」


「ウチもや。…この、そうがんきょうってのは凄いなぁ…」


「あぁ。…まるで手に取るようだ…」


「…そろそろ返してくれ」


もう10分近くは見てるぞ。


霞と華雄が残りの守備軍部隊4万を率いて泗水関に到着。


これで一応の準備は整った為、俺達は城壁の上で他愛ない世間話をしていた。


しかし…天の御遣いか…。


「…なぁ、劉備軍の中にある丸に十字の牙門旗は誰のだ?」


「何処や?」


無言で隣に立って双眼鏡で敵軍を眺めている霞のそれを掴む。


双眼鏡を件の地点へ向けると、ついでにピントも合わせてやる。


「おっ見えてきた。…あぁ、アレが話してた“天の御遣い”っちゅう奴の部隊や」


「…そのようだな」


華雄は使い方に慣れたのか自由に双眼鏡を操っている。


「へぇ…アレがねぇ」


「そうや…って返さんかい!!」


「…となると…あの少年か…」


「返せぇぇウチのやぁぁ!!」


「…俺のだぞ」


「知らんわ!!」


「少佐、大尉、お楽しみ中に失礼します」


「お楽しみ中ではないが…まぁ良い」


俺の双眼鏡を奪おうとピョンピョン跳ねている霞に望み通り、それを預けると彼女は新しい玩具を買って貰った子供のように嬉々と再び双眼鏡を使い始めた。


それを横目にデザートパターン迷彩の戦闘服に身を包んだ部下に向き直ると敬礼された為に返礼する。


「どうした?」


顔を近付け小声で話す。


「曹長より連絡がありました。『敵攻勢は明日に行われる可能性大。迎撃準備を急がれたし』」


「…やはりか。曹長は何処に潜り込んだ?」


「劉備軍だそうです。敵兵と鉢合わせた際に奪取した鎧がそれのだったようで」


「…了解。定時連絡の際に曹長へ伝言を」


「はっ!」


「『劉備の人となりを出来る限り調べよ』以上だ」


「了解しました、伝えます!」


敬礼して去って行く部下を見送ると、煙草を取り出して火を点ける。


「なぁなぁ将司」


「なんだ?」


「将司と和樹って…天の御遣いなんちゃう?」


「…何故、そう思うんだ?」


「見た事も無い武器に恰好やろ、傭兵なんて言うには礼儀正しいし」


…いつ真名を交換したんだか。


というか後者は関係ないだろ。


「…天の御遣いってのが何なのかは知らねぇが、俺達はただの傭兵さ」


「…そう。金を貰って人間を殺す最低の人種だ」


「ハハッ違いねぇや」


会話に割り込み二人で笑い始めた。


「…なんで自分を卑下するんや?」


「あん?」


「だってそうやろ?」


卑下、か。


そんな風に言われたのは傭兵になって以来、初めての事だ。


「ん−、だってなぁ」


「事実だから仕方ない」


「…そうかもしれんけど」


霞は納得がいかないのか苦虫を噛み潰したような表情をする。


…一体、何匹のそれを噛み潰したのか是非とも聞いてみたい。


「そっそれで、その大剣はなんだ?」


意外にも空気が読めたのか、華雄が城壁に立て掛けられている二本の武器を指差した。


彼女の言う大剣とは、正確には大太刀と呼ばれる刀剣。


トランシーバーを通じて神に頼んだ物だ。


長さは五尺(約150cm)で重さは…ざっと18kgだろう。


「随分と長いな…」


「まぁ…乱戦になったら効果はある」


「…ちゅうか、そんなの持ってたかいな?」


「「持ってた」」


「…さよか」


…むぅ…何故こうもハモるんだ?









「董卓軍の敵将華雄に告げる!貴様は臆病者か!?武人ならば関の外へ出ろ!!」


現在時刻は1135時。


曹長からの報告通り、敵軍の攻勢が始まるかと思いきや、いきなりの舌戦。


…というよりも誹謗中傷か。


泗水関の城壁下に現れたのは昨日、目撃した黒髪ロングの少女…おそらくは関羽。


部隊も連れて来ているが…500といったところか。


「どうした腰抜け華雄!貴様の武とはこの程度の挑発で萎える物なのか!?手にした斧は飾りか!?」


城壁下で機銃の如く罵声を浴びせ続ける少女の大声にせせら笑いながら、俺と相棒は壁に背中を預けつつ煙草を吹かしている。


「こんな挑発に引っ掛かる奴なんているか?」


「さぁな。いたら是非とも御尊顔を拝見してぇや」


笑い合いながら紫煙を吐き出した。


…にしても泗水関で守備軍に対しての罵声ねぇ…そんな事あっただろうか?


だが、三国志演義だと泗水関の戦いで華雄は関羽に………


「「…あぁぁぁあ!!?」」


今になって思い出した。


ずっと気になっていたのに今更になってだ。


「オイ、彼女に注意はしたか!?」


「って和樹がやったんじゃ!?」


結論、この点に関しては何の対策も打っていない。


…なんてこったよ。


「とにかく華雄を探さねぇと!!」


「あぁ……いや見付けたぞ」


「何処に!?」


「もう部隊を率いて打って出てる」


「冷静に考察するなぁぁ!!」


そうは言うがな相棒、お前も知ってるだろう。


戦場で死に易いのは激情に駆られる奴だって事は。


…まさに彼女がそれだな。


「和樹、将司!ここにおったんか!!」


向こうから霞が城壁の通路を駆けてくる。


「えらいこっちゃ!華雄が挑発に乗せられてもうた!!」


「皆まで言わなくても、ここから見える」


「冷静になりすぎや!!あぁもう、猪はこれやから!!」


頭を掻きむしる霞を落ち着かせる為に肩を叩いてやる。


「…少し落ち着け。将が慌てると兵にも動揺が走るぞ」


「わ−っとる!せやけど、こんなの予定に無いで!?」


「「……」」


二人揃って彼女の眼を真っ正面から見る事は出来なかった。


「…和樹…どうも動きがおかしいぜ」


「あぁ…。…関羽はどうやら誘導役みたいだな」


「なんやて!?」


「見てみろ。逃げる関羽隊を追撃する形で華雄隊は動いてるが…劉備軍の様子は?」


「…ホンマや。突撃しとる華雄達を劉備軍が避けてるようにしか見えへんけど…」


「…今の華雄隊は餌を見付けた動物同然だ。単純なモンだが、あぁなると人間ってのは目標以外は見えなくなる」


一見、突撃してくる華雄隊から逃げる為に関羽隊が退いているようにしか見えない。


だが、それが極端だ。


彼女は気付いていないだろうが…このままだと包囲殲滅されてしまう。


しかし…何処に誘導してるんだ?


「…相棒」


将司が声を上げた。


「やっと判った。昨日、劉備達が孫呉に協力を求めて、孫策が提案に乗ったのはこれが理由だ」


関羽が進む先にある陣を視認すると俺にも納得がいった。


「…袁術軍か」


「あぁ。孫策は現在、袁術の客将になってる。それなら袁術の支配下から抜けての孫呉独立は悲願の筈だ」


「体良く、袁術軍に華雄をなすりつけて兵力を少しでも削ぐ為か…」


「…あぁ…独立の為にな」


まったく…よく考え付くモンだ。


「どないするんや二人とも!?」


「…助けるしかないだろうな」


「あぁ。華雄は将だ。そんな彼女が戦死なんぞされたら、こっちの士気、戦意は否応なく下がっちまう」


「…霞、お前は関の防衛を。俺達が行く」


「大丈夫なんか!?」


「さぁな。心配なら祈っててくれ」


肩を竦めつつ、階段を降り城門に向かって歩き始めた。


既に部下達の準備は整っているらしい。


「第一、第二小隊は総員騎乗!残りは関の防衛に当たれ!!」


『はっ!!』


「銃は出来るだけ使うな。弾数は気にしなくても良いが、後々になって面倒になる可能性がある」


この世界に来た当初に射撃訓練をやったのだが何故かは知らないが、いくら撃っても弾切れにならず弾倉には全弾装填されたままだったのだ。


気になって神に連絡した所、サービスで弾丸は無限になっているらしい。


…リロードやマグチェンジをしないので楽ではあるんだがな。


「隊長、副長、どうぞ」


…部下に差し出されたのは…何故か黒いトレンチコート、それもロングタイプだ。…膝裏まであるんじゃないか?


「…これどうした?」


「洛陽に腕の良い服屋が居ましてね、隊長達に似合うだろうと思って作ってもらったんっすよ」


「…生地は?」


「流石に防弾繊維じゃねぇですが、それでも丈夫だそうっすよ」


手に取ってみると…生地は薄いのに、いくら引っ張っても破れる気配がない。

それなりに力は込めているのだが…。


まぁ良いか。


「礼を言う伍長」


「どうも、伍長」


礼を言った後、コートに袖を通すが、愛刀を抜く為に前は留めずそのままにする。


相棒も俺と同様にしたようだ。


…指揮官標示の代わりかってんだ。


まぁ…それもどうでも良い事か。


息を吸い込む。


「さぁ行くぞ野郎共!最高の兵隊で最高の戦いをしてやろう!!」


『応ッ!!』


隣で相棒が彼の愛馬に跨がりながら声を張り上げた。


「総員騎乗、これより突撃し華雄隊の援護に回る、その後は華雄将軍を保護し泗水関に戻れ!!」


『了解!!』


俺も愛馬となった黒馗に跨がり声を張り上げる。


「旗を掲げろ!門を開けよ!!」


騎乗した二人の部下がそれぞれ旗を掲げた。


ひとつは韓の牙門旗。これは董卓軍側が手配してくれた物だ。


もうひとつは神に頼み送って貰った、黒狼隊が“BLACK WOLF”と名乗っていた頃の旗。


翻える黒地に韓の牙門旗と白地に黒い狼が描かれた旗が乱世の風に踊った心持ちがした。




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