イドラ No.4
僕の大胆な一言で隣の県まで行き、情報を集めてカミガワが泊まっている場所を突き止めた。
エリさんには来ない方が良いっていったけれどついてきた
古びた寺
とかに、仏教徒は泊まるという勝手な思い込みをしていた僕はその為の計画を必死に練っていたのだけれど
あっさりと打ち砕かれた。
「ここら辺で道に迷ったんですけどここに泊めて頂けませんか?」
そんな台詞を考えていた。
今、思うとそんな事を言って泊めてくれたか心配で、なんと軽率で浅はかな考えだったんだろう。
泊まっている場所は山中の宿。
しかもかなり値を張るような場所だ。
「そんな金があるなら仏教繁栄のために使えって事」
なんて記者が言っていたが僕も同感である。
「取り敢えず手続きしてくださいよ。」
僕は記者を促す。
「全部俺持ちかよって事」
「一部屋で良いです。」
「「えっ、、、?」」
二人が驚いている。
まぁ取り敢えず集合。
ハドルタイムだ。
「一人一部屋だと危険なんですよ。相手は通り魔かも知れませんから」
しかも通り魔、いや通り魔じゃないのかも知れない。
僕の考え、推理とは言い難い考え。
いくつかの条件が揃った相手を殺す。
その条件は、、、
「私も同じ部屋じゃないとだめ?」
「危険だからね。」
「女だよ?」
「命と恥を天秤にかけないで。ついてきたのは君なんだよ、、、僕が守るから」
命をもう見捨てない。
「わ、わたった、、、」
わたった?噛んだのかな?
まぁいいや、、、
人が人を殺す時。
例えば戦争。
罪も無い人々を殺す。
いや、人は生きながらに罪を犯しているだろう。
大罪を犯してない人々を殺す。
僕にはどんな気持ちなのか理解出来ない。
この世界の言語が一つなら戦争は減ると思う。
理解が必要なんだよ。
人は人の心を理解出来ないとよく言われるけど、理解することをやめたらいけない。
この犯人は理解することを止めたんだ。
「で?って事」
「はい?」
「次はどうするの?って事」
「あぁ。待ちます。夜になるまで。」
「へいへい。もう従いますよって事」
部屋に入った。
ご立派だなぁ。
僕はエリさんと二人山中を歩くことにした。
記者さんは今までの分を纏めるから残るそうだ。
結構、荒れた道が続く。
そんな行く理由はないんだけど、退屈しのぎをしないと二人とあの狭い部屋にいるのは正直しんどい。
「山を女子と歩くなんて、如何わしい事をするのね」
「下調べってやつだよ。しかも、僕には彼女がいる。君にそういう感情は抱かないよ。」
「その言葉、結構失礼よ。」
「ご、ごめん」
「許さないわ」
これは僕が核兵器を彼女に落としたのか、はたまた彼女の心が小さいのか、、、
「キスしたら許してあげる」
どうやら僕が核兵器を落としたらしい。
「何?どうしたの?記者にそうしろって言われたの?視聴率アップのため?」
ちょっと皮肉めに言ってみた。
もちろんそうじゃないって分かってる。
僕をからかったんだんだろう。
「違うわよ!私は、私は、、、あのタチカワなんて大っ嫌い!最低人間よ!」
僕は地雷を踏んでしまったらしい。
まぁ理由は単純。
僕と同じ。
人の死を金にする人間が嫌いなんだろう。
いや、彼女は父親の死だからかも知れない
「大丈夫、金にはさせない。」
「!?」
何故気持ちを理解したのかって事だろうかなぁ?
取り敢えず道は把握した。
「一度、宿に戻ろう。」
「ええ」
「でもね、ただじゃ帰らないよ」
本当は居づらいのが理由。
だけじゃない。
あの記者を罠に嵌めるため。
ついてきたら信じられた。
窓から確認する。
やはりね
「あれって隠しカメラだよね?」
「うん」
家政婦は見た。かのように覗き見する男女。
端から見れば不思議だろうなぁ
しかも片方芸能人。
まぁそんなのは今関係ない。
おかしいと思ったんだ。
わざわざ東京に戻らなくても、誰かに頼み、写真でも送ってもらえばいいんだよ。
情報化社会だもん。
なら理由は一つ。
僕が機材を壊したからまた取りに帰った。
「本当に最低ね。」
「あぁ。」
仕事?関係ないね。
家族がいるのならまだいいけど
独身貴族って事。らしい。
さてどうしようかな
うーん。
夕空を見て考える
「あんた!」
はっはぁそれもありかな、、、
エリさんが怒って走っていった。
僕も後ろから追いかけた
「あなたは僕をバカにしてるんですか?気付かない訳がないでしょう。」
ハンパなくバカにされてる気がする。
「これも仕事って事。」
「約束を破ってでもですか?」
「五月蝿いんだよ偽善者。って事」
「はい?」
「俺はお前みたいな誰かのために、何かをする人間の気が知れない。どうせ偽善者なんだろ?調子乗ってんじゃねーよ。って事」
「はは。そうかもしれません。」
「は?」
「でもね。偽善者の偽は人の為って書くんですよ。」
本当の由来は人間の作為らしいけど。
「全く気持ち悪い、気分を害するガキだ」
そう言って、旅館からでて行った。
僕は携帯を駆使して隠しカメラの全てを見つけた。
大人だからどうにかするだろう。
別に知ったことじゃない。
まぁ帰ってくるだろうし。
気にしない。
気にしないはずが夜になってしまった。
あの記者の携帯番号は聞いてない。
どこにいる?
「彼の番号は?」
「ごめん、知らないわ。」
選択肢。
1.彼を探す。
2.彼は大丈夫だと、見捨てる。
彼を探すにも二つある。
1.ここが安全だと彼女を置いていく
2.ここは危険だと彼女を連れていく
というかどちらも危険なんだけど。
まぁ僕といた方が安心だろう。
「彼を探しに行くよ。」
「えっ、、、いーじゃないあんな奴。」
「命は大切にしなきゃいけない。」
「別のホテル借りてるわよきっと」
「いや、きっと生きてたら僕らを撮影しているはずだよ。」
「そっか、、、わかったわ」
僕は知らなかった。
選択肢を誤った事に。
自分の過ちに。