第16話
巨大な星喰い竜が太陽の光を遮りギルドハウスの窓際が真っ暗な影に覆われた。
「あーあ、でっかい鳥のせいで朝日が陰っちゃったな」
俺は呑気にため息をつき震えるサクリアの肩を抱き寄せた。
「ほらサクリア、コーヒー冷めちゃうからこっちにおいで」
絶望で固まる元魔王をダイニングチェアに座らせる。
そこへ寝巻き姿のユエルが目をこすりながら起きてきた。
「ふわぁ……よく寝たぁ。あれ、外になんかいる」
窓の外を覆い尽くす宇宙サイズの化け物を見た瞬間ユエルの目に剣聖としての鋭い光が宿る。
「あ、ちょうどいいところに朝の素振り用の的が飛んでる!」
ガラッ。
ユエルは嬉々として窓を開け放つと無呼吸のまま成層圏という名の真空の宇宙空間へパジャマ姿で飛び出していった。
音のない真空の世界で神話級の大怪獣バトルが幕を開ける。
星を砕く衝撃波が窓ガラスを揺らす中俺はサクリアの目を優しく手で覆った。
「見なくていいよ。ユエルも朝から元気だねえ」
俺は手探りでトーストにたっぷりとイチゴジャムを塗りサクリアの口元へ運ぶ。
甘いものを食べれば恐怖も少しは紛れるだろう。
『ただ甘いものを食べた後はしっかり歯磨きさせないとな。虫歯の治療跡に食べカスが詰まるような隙間ができたりすると休日の朝から歯医者に連れて行くハメになって本当に大変なんだ』
スローライフを送る保護者としての切実な悩みを抱きつつ俺がサクリアの口元を拭ってやったその時。
ギルドハウスの床下から生えている世界樹の幹が突如として激しく脈動し眩い光と共に――!




