第13話
極大魔法の黒き閃光と聖剣の絶対的な斬撃が放たれる寸前。
俺はベッドの端から振り返りざまに二人の額へ指を伸ばした。
「こらっ」
パチンと軽い音を立てて、二人の白い額を弾く。
物理的な衝撃と同時に、俺の指先から漏れた微かな魔力が部屋を満たし、世界を滅ぼすほどの魔法陣も、聖剣のオーラも、朝霧のように一瞬でかき消された。
「あうっ」
「うぅ……っ」
元魔王と剣聖が同時に額を押さえて涙目になる。
恐ろしい魔力はすっかり鳴りを潜め、ただの叱られた子供の顔になっていた。
「家の中で喧嘩はダメって言ったでしょ。ほら、静かにしないと起きちゃうだろ」
俺はよだれを垂らして爆睡する見知らぬ金髪の美少女を指さし、呆れ声で諭す。
そして、唖然として固まっている二人の手首を掴むと、問答無用でベッドの中へと引きずり込んだ。
「きゃっ」
「ちょっと、アルト……!」
勢いよくシーツの上に倒れ込んだ二人の隙間に、俺も潜り込む。
右腕にはサクリアの豊満な胸が押し当てられ、左側からはユエルのすべすべとした太ももが絡みついてきた。気絶したままのタチアナと、俺の腰に抱きつく美少女も合わせ、計四人の規格外たちが一つのベッドで完全に密着している。
「んんっ……アルトの匂い……落ち着くわ」
サクリアが抗うのをやめ、とろけるような熱い吐息を俺の耳元に吹きかけてきた。ユエルも顔を真っ赤にしながら、俺の胸板にすりすりと頬を擦りつける。
『ちょっと狭いけど、温かくてよく眠れそうだ』
極上の柔らかさと甘い香りに包まれ、俺はスローライフの至福を噛み締めながらゆっくりと目を閉じた。
だが、意識が微睡みに沈みかけたその瞬間。
「ふふ、アルト。毛布を持ってきたわよ」
バキィィィィン。
開かれたドアの向こう側で、予備の毛布を抱えたミサリアが立っていた。
ニコニコと完璧な笑顔を浮かべているが、その瞳の奥には一切の光がない。彼女の背後には王都を襲った悪魔すら逃げ出すほどのドス黒いオーラが渦巻き、笑顔のまま握りしめられた木製のドア枠が、木っ端微塵に粉砕されて……!




