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第11話

極大魔法の圧倒的な魔力と、神話級の聖剣から放たれる凍てつくような殺気。

ダイニングに吹き荒れる二つの嵐の中心で、俺は小さくため息をついた。


気絶したタチアナを背負い直すと、俺は空いた両手を無造作に伸ばす。


「ひゃっ」

「なっ……」


俺は魔法を練り上げるサクリアの腰と、剣を構えるユエルの首根っこを、まとめてヒョイと持ち上げた。

まるで駄々をこねる二人の子供を同時に抱え上げるような、妙に手慣れた動作だ。背中のタチアナを含め、大人三人分の重さがのしかかっているはずだが、日々の過酷な畑仕事に比べれば羽のように軽い。


「なんだ、二人ともそんなにピリピリして。もしかして最近寝不足なの」


俺が純度百パーセントの善意で小首を傾げると、両脇に抱えられた最強の二人がビクッと肩を跳ねさせる。


「ベッド狭くなるけど、仕方ないなあ。みんなで一緒に寝ようか」


お昼寝の時間だと諭すような、極めて穏やかなトーン。

その強烈すぎる爆弾発言と、密着した身体から伝わる俺の体温に、サクリアの指先から極大魔法がしゅるしゅると霧散していく。


ガランッ、とユエルの手から聖剣が床に滑り落ちた。


「み、みんなで一緒に……」

「ね、寝る……アルトのベッドで……っ」


先ほどまでの殺意はどこへやら。

最強の妻と恋人は、至近距離から浴びた破壊力に耐えきれず、気絶しているタチアナと全く同じように顔を真っ赤にして完全にフリーズしてしまった。


「ふふ、アルトもすっかりお父さんみたいね。毛布、余分に出しておくわね」


ミサリアがキッチンからふわりと笑いかけ、見送ってくれる。

俺は三人分の重みを全く感じないまま、やれやれと足取りも軽く廊下を歩き出した。


『いろいろあったけど、これでようやく静かで平穏なお昼寝タイムだ』


そう信じて疑わなかった。

だが、自室のドアノブを回し、部屋に足を踏み入れた瞬間。

俺の腕の中で硬直していたサクリアとユエルが、さらに別の意味で完全にフリーズすることになる。


なぜなら、俺のベッドのど真ん中では――。

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