第31話 対ピンチ
マリーが此方に視線を送る。
この状況で何か出来るのは俺だけだ。
魔力を外に押し出す。熱く、殺意を込めて。
手の平から炎が吹き出してきた。すかさず縄を掴んで焼き切った。
「ナイスです!柴又さん!!」
「今助ける!!」
1番手前にいたミザリーの縄を焼き切った。
続いてソウの縄も解こうとする。
が、中々焼き切れない。その様子を見ていたミザリーも背中から剣を抜いた。しかし、まるで刃が通らない。
「何やってんだよ……!早くしないと追手が来んだろが!!」
「今やってますって!!」
だが、切れることはなかった。俺とミザリーの時は簡単に切れたのに。
「まるで時間が止まっている様ですわ……!」
「――お、いい線いってるぜ。」
遠く出口の方向から知らない声が響いてくる。帰ってきた盗賊だろうか。
縄を諦めて戦闘態勢に入る。
奥の影が大きくなってくる。人数は1人、丸腰だ。そのまま歩き、光が当たる位置に立った。
――遠い位置にいると思っていたが、それは間違いであった。小さいモノが近くにある。それは小学生程の年齢の少女だった。
コロがそれを見て小さく声を零す。
「団長、帰ってきたんだ。」
「…………は。何言ってんだお前?」
ソウが真っ先に疑問を零した。当然だろう、俺もここの団長はソウの父親だと思っていた。
少女は構わずこちらに向かってくる。それを見たコロは逃げ出してしまった。
「お前ら、ウチの団員じゃあねぇよな。いや答えなくてもいい、顔が誰かにバレた以上、幹部以外どんな団員も生かすわけにはいかないからな。」
少女は何処かに仕込んでいた鎖鎌を取り出した。遠心力は鎌の殺傷力を大きく増幅させる。
敵はここを束ねている人物だ。俺だけでやれるのだろうか。
強化魔法を目一杯かける。まだ魔力の消費に慣れきっていなかったためか、少し精度が落ちている。
「テメェ、仮にもここでは騎士なんだろ?名乗れよ。」
ソウは縄にかける握力を強めながら言った。然し表情は怒りや驚きではない。まるで何かに怯えているようだった。
少女は鎖鎌を止めると、目を細めて笑った。
「希望の騎士団団長、カレラ・テレサ・シーポだ。短い時間になるけど宜しく。」
ソウが目を大きく見開き、何かを確信した。バイヨンもどこか挙動不審に見える。
「へぇ……テレサねぇ。それはそうと、お前の親父はどこ行ったんだ?1回挨拶しときたいんだが。そんな汚ぇ口調の女を育て上げた野郎が気になってな。」
カレラが少し間を置く。何かを考えているようだ。
マリーが小声で俺を呼んだ。手を軽く揺さぶっている。持っているものは水が入った瓶だ。
先程カレラは、ミザリーの小言に『惜しい』と言った。恩寵か魔法で縄に細工をしたのだろう。発動したタイミング的に恐らく条件は視界に入れること。恐らくこれは聖水だ、この状況を解決する糸口になってくれるかもしれない。
バレない様に行動を開始する。ソウにも会話を引き伸ばして貰おうと目配せをしたが、伝わっていないようだ。
「僕の父は今忙しいんだ。お前らの相手なんかしてられないんだよ。」
「んなわけあるかよ。今は超緊急事態だぜ?」
静寂が空間を包む。カレラの表情から笑みの要素が消えると、再び鎖鎌を加速させた。
「何イラついてんだよ?」
「別にイラついてなんかいない。どうせ死ぬヤツと話していてもつまらないと思っただけだ。」
「最後に教えてくれよ。もうすぐ死者になる奴への情けくらいかけて欲しいもんだがな。」
カレラは一切表情を変えない。ダメだ、殺られる。
ソウはそんな様子を気にも留めず、話を続けた。
「お前らの基地の1階で魔道士フィンの日記を見つけたんだ。途中までしか読んでねぇが、マメに書いた最新の日を付箋で見やすくしていた。昨日もちゃんと書いたみてぇだな。」
カレラは動くことなく話を聞いている。然し、たまに目が動く。動揺しているのだろうか。
俺は徐々に位置をずらし続け、聖水を回収した。
「で、その隣にも古びた日記があった。分厚いフィンの日記に比べて随分薄かったがな。情報収集が目的だったから読まなかったが、その持ち主はケイマン・ウィリアム・シーポ。俺の知っている限りじゃ、そいつはフィン以上に真面目なやつだ。日記は毎日書く習慣がある。」
「……既にここには居ないと言いたいのか?」
今度はソウが沈黙する。自分の推測に対する回答が欲しいのだろう。
ソウの足を縛っていた縄に聖水をかけて、剣で切断した。それがバレないように巻きついたままにしておこうと思ったが、何故か縄が燃えて尽きた。バレてはいない。
カレラが口を開く。
「別にお前達にとって面白い内容ではないから話さなかっただけだ。確かに突然前団長は消えた。耄碌したジジイみたいにな。その娘である私が引き継いだのは自然な流れだ。」
今度は分かる。空気が重くなり、ソウの表情はマイナスの感情を表現している。明らかに怒っている。
しかし一瞬で表情は落ち着きを取り戻し、どこか余裕がある様に思えた。
「確かに貴族もその子族、特に長男がその地位を継ぐのが一般的だ。」
「別に今はそこが重要だとは思えないな。」
「大事さ。俺がこの盗賊団を丸ごと貰ってやるって話だからな。」
「は?」
ソウを縛っていた縄を焼き切ることに成功した。合図を出すと、ソウはゆっくりと立ち上がった。
槍の石突を地面に叩きつける。
「俺の名前はソウ・グリフィン・シーポ。ケイマン・ウィリアム・シーポの息子だ。」
ル、ルールルルルールールルルールルルルルルル……ハッ!
神「こんにちは!神の部屋へようこそ……。今日も今日とて誰かの紹介をしていくぜ!今日はコイツだ!」
名前 ソウ・グリフィン・シーポ
年齢 24歳
誕生日 9月25日
趣味 登山、雑学
特技 毒や腐ってる食べ物が分かる
身長/体重 190cm/100kg(どうみても柴又よりちょっとデカイくらいだよな……)
弱点 押しに弱い
また来週〜!




